弱覚醒回ウェイクアップ。

 気付けば、白い空間に居た。


 さっきまで、確か僕は星を見に山へ行っていたはずなんだけど。


 ……どこだろう。


 周囲を見回しても白いばかりで、そもそも身体を動かせているのかも分からなかった。


 全く、見覚えがない。多分。


 ふわふわと宙に浮いている感じが、ものすごくファンタジーな感じだ。


『よかった。目が覚めたみたい』


 周囲の様子を観察していると、誰かが姿を現した。


 あなたは……?


 目の前の人物は年寄りのような純白の髪と、白銀の目をした小さな女性だ。


『わたくしの名……』


 透き通った声で呟き、うつむく。風もないのに、純白の髪がふわふわと静かになびいていた。

 彫刻のように、とても顔の整った顔立ちで、その上滑らかな白い肌も相まって、まるで陶器人形ビスクドールのようだ。


『わたくしは、”癒しの神”……と呼ばれています』


 鈴を転がす様な声は、なんだか直接頭に響くような感じで、ますます現実味よりも夢の中にいるような感覚を与える。


 癒しの……神?


 声に対しておうむ返しをすると、そうだと言いたげにゆったりと頷いた。そして、


『あなたは今、死にかけています』


そう、感情を感じさせない顔のまま告げられた。


 ……死にかけ?


『そうです。せっかく生まれ変わったというのに』


 表情は全く変わらなかったけれど、その声は酷く悲しそうだった。


 それよりも……僕が生まれ変わったってこと、知ってるの?


 ふと湧いた疑問を、頭に強く思い浮かべる。

 口が動かないので、目の前に居る“癒しの神”とは、思った言葉を念じてどうにか意思疎通をしている感じだ。


『はい。わたくしが呼びましたから』


 きみ……あなたが、呼んだ?


『あなたの様な「希望の星ステラ」がこの世界には必要だった、と言うことです』


 “癒しの神”はゆっくりと僕に近付き、頬に触れた。

 触られた感覚はあったけれど、暖かさも冷たさも感じない手だ。そっと、慈しむように撫でられる。


 だけど。僕が一体、何の役に立てるというのだろうか。


『あなたは、死んでいない』


 頬を撫でていた手が、額に触れる。


『だから、もう一度……


途端に、白銀に輝く魔力が身体に注がれる。


『わたくしの力を、少しだけ貸してあげます』


“癒しの神”は告げる。


『……再び目を覚ました時に出会った人達を、大切にしてくださいね』


×


「——……」


 目が覚めると、見知らぬ天井があった。

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