場面展開シフトチェンジ。

 ボクが初等部に入学できる年齢、大体6歳になる前には起こった。


 『父なる神』がおおっているはずの空から、『種』が落ちてきたのだ。


 きらきらと光り輝きながら、空から垂直に落下してきた『種』達は地面に激突して――



――世界が崩壊した。



 『種』達は人間より遥かに巨大で、落下の直後、ぶつかった地表に巨大な穴がく。隕石が数個、一気に落ちてきたようなものだ。


 一晩経たぬうちに『種』は発芽し、天を貫かんばかりに高く伸び、天を覆い尽くさんばかりに枝をめいいっぱい伸ばした『巨大樹木』とった。


 その影響を受けて生態系がすっかり変わってしまい、魔獣が凶暴化して


 まずは落下の衝撃の揺れ、次に空いた穴、最後に凶暴化した魔獣と魔獣のような姿になった人々。


 それらが、世界を崩壊させた。


 かくいうボクの家族も、種の落下に巻き込まれる。アウルム住んでる国のほぼど真ん中に『種』が落ちたからだ。


 王都は国の中央より大分北側にずれた位置にあったので直撃は免れたけど、ウルスス公爵領のルース村ボクのところは中央に近い。


 『種』の落下の衝撃に巻き込まれたボクの村は、跡形も無くなっていた。


 大事な幼馴染の姿を探すも、見つからない。どうしてって気持ちでいっぱいだった。でも、見つからないのは当然だ。そこは誰一人も姿がない、完全な更地になっていたのだから。


 なぜ、ボクだけ生き残ったのだろう。どうせなら、あの子と一緒に死にたかった。


 村だった場所に座り込み泣きじゃくるボクは、偶然この周辺に来ていたという人に保護された。その人は王都に住んでいるらしく、そのままボクは王都に連れていかれる。


 王都は比較的平和だった。

 何故なら、宮廷魔術師達の作った強固な結界と『大聖女カーディナル』の硬い護りの結界に覆われていたから。


 種の直撃は免れたけれど、落下の衝撃は凄まじく崩壊した建物がたくさんあった。


 それから数日後。

 どうにか生き残ったボクは『種』の影響か、すっかり姿が変わってしまった。それが世界を変えた一番の要因、亜人種化の始まりだ。


 変化は徐々に起きて、気が付いたらボクの身体は獣と人間を混ぜたようないびつな姿になっていた。

 どうやら、ボクの身体に混ざっていた『熊の魔獣の血』が身体に変化を起こし、ボクは『熊型の獣人』になったらしい。


 ボクを保護してくれた人は驚いた様子を見せず、戸惑うボクに「安心なさい。一先ひとまず魔術で姿を整えて差し上げます」と言ってボクに簡単な魔術式をかけてくれ、ほとぼりが冷めるまではその人が住んでいるらしい小屋から出ないように言った。


 保護してくれた人は忙しい身らしく、あまり小屋に帰ってくることはなかったけれど、たっぷりの食事と本があったから、平気だった。


 ふと、本の山の中に星や空に関連する本を見つける。手に取ると、ハードカバーのその本はずっしりと重い。表紙は真っ黒で、だけれど所々に星を散らしたような煌めきが散っていた。まるで星空の様な見た目だ。


 それが幼馴染の髪のようで、ひどく懐かしくて涙が零れた。


「会いたいな……ステラ」


可愛い、ボクの幼馴染の女の子。


 また会いたいと、星に願いをかけてみる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る