第82話 お仕事の説明

 こんな手は使いたくは無いが、やむをない。

 がやがやがや。「もえ~~~」「お姉様、今宵こよいはわたくしとお夕食を」


 「夏のボーナスが半分に成りそうでしょうよ」

 がや。「まっ、何と卑劣ひれつな男でしょう」「僕っは正義っ」


 「無くなっちゃうかもな」

 がや。ざわざわざわ。さすがにボーナス全部とは引き合わないとさとったでしょうよ。


 「折角せっかくだから座り直してくれる。刑事君達は窓際まどぎわの方から座るでしょうよ。鑑識さん達はこっちの壁側から座るでしょうよ」

 ざわざわざわ。ばたばた。「押さないで下さいましな」「詰めないと座れないし」


 うそつけ、何で全員鑑識さんなんだよ。

 明乃あけのちゃん、どんなつたえ方したのよ。


 「本当にカットするよ。今の俺には出来るでしょうよ。刑事君15人、鑑識さん25人と聞いてるよ。準備をしてたのは、警務けいむ課の人、会計課の人」

 「私、警務けいむ課です」「私は会計課です」


 「私は」「免許センターの受付はいいの」「署長しょちょう」「好きにしろ」

 あっさりお許しが出たね。


 「事務仕事をたのみたいから一緒に聞くでしょうよ。署長しょちょう、手伝ってもらいますよ」

 「ここの最高位だろ、ちち警部補けいぶほ何故なぜオブザーバーのわし等に聞く」

 「椅子いすを持って来て、適当に座ってくれるかな」だだだだだ。走って行った。


 大会議室から椅子いすを持って来て、適当に座ってくれとは言ったが。

 「どうしてここに座るのかな」「適当に座れと言われました」「そうだけど」


 俺達が座ってたところに来て、会計課、りくちゃん、警務けいむ課、まもちゃん、受付にいた子、俺と座る事になったでしょうよ。

 「私達の机と椅子はあとで用意します。ねぇ~」「「ねぇ~」」友達かいっ。



 俺、プロジェクタの真ん前でしょうよ。

 レーザーポインターも用意されてるでしょうよ。

 「ごたごたしけど、広域捜査本部のお仕事を説明するでしょうよ」

 俺は立たないと、スクリーンに頭の影しか映らないでしょうよ。


 プレゼン資料作っといてよかった。

 しかし立つとパソコン操作が出来ないでしょうよ。まもちゃんに頼むか。

 かばんから128のSSDを出して。


 「まもちゃん、俺立つからPCにこれ繋いで、オペレーターやって欲しいでしょうよ」

 「私を飛ばしてお姉様とお話を、しないで下さいましな」


 「受付ちゃんがいるから仕方ないでしょうよ」

警部補けいぶほ、私はちょっと、りくちゃんの方が」


 「そう、じゃぁりく」見ると警務けいむちゃんと会計ちゃんに両腕をホールドされてる。

 いやいやいや、そんな顔されても、俺何もできないでしょうよ。


 おっ、警務けいむちゃんと会計ちゃんが、あごをしゃくってるでしょうよ。

 「はぁ~、わかりました。私が代わりに、いえ、サポートして差し上げます」


 「あ~いや私」「大丈夫ですまもお姉様、怖くないですし、痛くもないです、私が手取り、足取り」

 「ひぃ~」なんだ。「教えて差し上げます。それを渡して下さい」「あ、うん」

 SSDを受付ちゃんに渡して、レーザーポインターを持って立ち上がる。


 受付ちゃんはまもちゃんの椅子いすにぴったりと付けると、パソコンをまもちゃんの前に置き。

 「はい、これを持って下さい」

 SSDをまもちゃんの右の手の平に乗せ、自分の両手でそっと包み込んだ。


 「「「「「「「「「「ぁぁぁあああーーー」」」」」」」」」」

 騒がしい、高校生じゃないんだから。

 いやいやいやまもちゃん、そんな顔されても、本当に俺、何もできないでしょうよ。


 「お姉様、これを机に置きますよ」「ぁ、うん」

 「さぁ~この硬い部分をもって下さい」「こ、これ」


 「ええ、それをここへ挿入そうにゅうです。場所、間違えないで下さいね」

 「はっ、入った」


 「こんどは膨らみをお姉様の御手おてで包み込み、あっ、そこは押さないで下さい」

 まもちゃんマウス持った事ないの。あ~桜花おうか必要ないから。


 「ここにカーソルを持って行って、優しく押して下さい」「こ、こうかな」

 「あ~~~お姉様ぁ」「出来たっ」嬉しそうだねまもちゃん。


 「どのファイルを開くんですか」

 受付ちゃん、あからさまに態度が違うでしょうよ。

 「お仕事内容と言うの開いてくれる」

 「その前にプロジェクター立ち上げて下さい」

 「お~~~、そうでしょうよ」すぅいちぃ~~~おん。あっまぶしっ。


 「まもお姉様、わたしがお手伝いを」

 とまもちゃんの手の上に自分の手を重ねる受付ちゃん。

 「リストの、“お仕事内容”の上に矢印を動かして、ぽちぽちです」

 「・・・動いた」嬉しいのはわかったから、一々いちいちこっち見なくていいでしょうよ。


 「署長しょちょうΔデルタ署長しょちょうこっちを見てもらえますかね」

 椅子いすを回して刮目かつもく


 「りくちゃん達もこっち見て」「りくお姉様行きますよ」「へっ」

 ごー、「ひゃっ」ごろごろごろ、ごー。

 おー、見事な連携れんけいりくちゃんをがっしり捕まえたまま、椅子いすのキャスターを使って前に出て、りくちゃんを中心に180度回転、元の位置まで戻る。


 レーザーポインターON。

 「この地図はここK警察署から南へ37Kmほど行った地域で、名所の崖の近くでしょうよ」


 レーザーポインター便利。

 「上の黄色で引かれた線は県道44号、下から上がって来て県道44号と交差している緑の線がルートAT、俺達の仕事はこの交差点から左へ行ったトンネルとの間にあるAと書かれた地点から、その下に灰色でUの字を右に寝かせた形の村道、その上のB地点、この2点間を捜索する事でしょうよ」


 「山中じゃないか、何を捜索すると言うんだ。こんなに人を集めて、山狩りでもするのか」

 「Δデルタ署長しょちょう順次じゅんじ話すでしょうよ。次のページに」


 「出来た出来た」良かったねまもちゃん。

 りくちゃんは観察対象になってるね。

 動くたび警務けいむちゃんと会計ちゃんがきゃきゃしてるでしょうよ。


 「これは先ほどの地図に、古い地図を重ねた物です。おわかりでしょうか。薄いですが、A地点とB地点の間に灰色のくねくね曲がった一点鎖線いってんさせんがあります」

 「それは、・・・旧道だな」

 ほぉ~~~、流石さすが署長しょちょうともなると、地域の事を調べてるのか。

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