第81話 お姉様と僕っ娘《こ》

 まずは地位と指揮関連を紹介してから座ろうか。

 ミキシングは出来てるかな。前にあるマイクを台から抜いて、ぽちっとな。

 びぃーーーーーー、キィーーーン。・・・何とハウリングしてるのかな、かな。

 反射的に腕を伸ばす、恐る恐る俺の方へ近付ける。大丈夫みたいだ。



 「俺が概要がいようを話すでしょうよ。まず今みんなに座る様に言ってくれたのがここ、K警察署の署長しょちょうさん、その隣がΔデルタ署長しょちょう、あっ、どうぞ座って下さい。お二人はオブザーバーとして参加するでしょうよ」


 座った二人が、机をひっくり返しそうな、形相ぎょうそうでしょうよ。

 OFF「まもちゃんはい、回して」小声で話すでしょうよ。

 「私ですか、しょっ、警部補けいぶほから話せばいいのに、置いて下さい」


 分ったでしょうよ。マイクを置くでしょうよ。

 かつっ、ばさっ。休めの体勢から敬礼けいれい

 「「「「「「「「「「お~」」」」」」」」」」ざわざわざわ。再び休めの姿勢でマイクを取る。


 ぽちっとな。「統合幕僚長とうごうばくりょうちょうより、特務を命ぜられ本日、広域捜査本部に着任した、防人さきもり3等陸曹であります。配属は統合幕僚長とうごうばくりょうちょうと等価の地位にある警察庁長官、その代理者の直属であります」


 OFF「りくちゃんはい」とりくちゃんの方にマイクを置く。

 かつっ、ばさっ。敬礼けいれい恰好かっこう良い。

 「「「「「「「「「「お~」」」」」」」」」」ざわざわざわ。マイクを取る。


 ぽちっとな。「統合幕僚長とうごうばくりょうちょうより、特務を命ぜられ本日、広域捜査本部に着任した、北海道ほっかいみち3等陸曹であります。配属は統合幕僚長とうごうばくりょうちょうと等価の地位にある警察庁長官、その代理者の直属であります」


 OFF「まもちゃんはい、回して」「うん、はい警部補けいぶほ

 「有難う」ぽちっとな。びぃーーーーーー、キィーーーン。・・・何でじゃ。


 「え~俺は、ちち警部補けいぶほです。警察庁長官に特務、広域捜査本部に出向させられました。今日から仕事をします。内容はここの全指揮権をまかせられました。俺が警察庁長官代理です。特務人事異動と特務発令の紙をホワイトボードに貼っときますから、見るでしょうよ。はい君」

 一番前の机に座り、まもちゃんの前にかぶりついている刑事君らしき若い衆が手を上げた。


 「警察ですから警察庁長官はまだしも、統合幕僚長とうごうばくりょうちょうと言うのがうそくさいんですが」

 「そう言う君の様な人の為に、用意されている物があるでしょうよ。今貼ってもらってる紙の一番下に、直通の電話番号が書かれてるでしょうよ」


 「それが何か」

 「この特務が完了するまで、警察庁長官や統合幕僚長とうごうばくりょうちょうと直接お話ができるでしょうよ」


 「署長しょちょうは確認したんですか」「わしは定年が近いっ」


 「はぁ~なるほど、副署長しょちょうは」「是非ぜひ君が確認してくれ」

 「なるほど、納得です」


 「警察や自衛隊のトップとじかに話せる機会は、そうそうないでしょうよ。勇気のある人はかけてみるでしょうよ。異議異論いぎいろんとなえても、評価やそのの昇進、人事に影響はないと聞いてるでしょうよ」

 「いや、それもおどしじゃないですか」「たて組織だからね」


 OFF「まもちゃんとりくちゃん、座って」「「はぁ~い」」

 がたがたがた。あ~座れた。どっかで寝ないとしんどいでしょうよ。


 まもちゃんとりくちゃんの前の若者達は、前に乗り出して何してるでしょうよ。

 「君等、何してんの」「見えないもんすね」がたがた、だん、どん。すちゃ。


 ちょっ、まもちゃんとりくちゃんが机を飛び越えて出て行った。

  早っ、前に乗り出してた二人の後頭部に、銃口が突き付けられた。


 「「特務の障害となるので排除はいじょします」」

 いきぴったり。きゃぁーーー。て、受けてるでしょうよ。


 「全員その場を動くなっ」「止めろっ、何をしてるっ」「銃を下ろせっ」

 「そちらの方々は署長しょちょうと副署長しょちょうだったね」

 「特務発令を読んだでしょう。私達は警察庁長官代理の命令にしか従いません」


 「ちち警部補けいぶほめさせろっ」

 「Δデルタ署長しょちょう、この場の最高位は俺です、あなたの命令には従えない。俺は自衛官の判断を支持しますよ」


 ON「え~、知らない人もいるかもなので言いますが、法の建付け上警察庁長官が県警を直接指揮をする場合は限られます、テロ相当です。少し時間を取りますので、この場にいる人、うしろの人も順番にホワイトボードに貼られた、特務人事異動と特務発令を読むでしょうよ。俺と二人の自衛官には、銃火器の使用が許可されている。お仕事の内容はそのあとで話しますが、我々には厳しい守秘義務しゅひぎむされていて、退職したのちも同様とするという法律上の規定がある事を、今一度思い出して欲しいでしょうよ。その観点かんてんから招集しょうしゅうされた者は、特務の内容を知らされていないでしょうよ。この二人の様に異議異論いぎいろんがあるなら直接言えばいい、道は開かれてるでしょうよ。それも嫌なら不要だ、この場からただちに立ち去ってくれ。遠慮えんりょはいらない」


 仕方ないな、紙の貼られたホワイトボードを壁まで押して、机の前に出た。

 OFF「まもちゃんりくちゃん戻って」

 すちゃ、すちゃ。「まもちゃん、仕事してる」「・・・してるね」

 しまったっ。俺何時いつも通りコーヒー飲んでないと駄目だめでしょうよ。寝不足だな。


 まもちゃんとりくちゃんは何処どこに銃を隠してんだろう。

 気付かなかったでしょうよ。


 二人が戻って行ったあとも、刑事君達は動かない。

 銃を頭に突き付けられたのは、普通初めてだろうし、トラウマにならなければいいけど。


 声かけとくかな。「どった。警務けいむ課に氏名と所属を伝えといて、今日は勤務した事にしとくから」

 どやどやどや。きゃっきゃっ。うしろがえらくにぎやかでしょうよ。


 「「かっ」」「か?」「帰りません」「かいっかん」「「もぉえ~~~」」「「見て来ますっ」」

 がた、だだだ。「お。おい」だだだだ。何だこの黒山くろやまの人だかりは。

 「ちょう、君等」だだだ。押し流される。


 「どう収拾しゅうしゅする、警察庁長官代理殿」

 Δデルタの前まで流された。


 紙の貼られたホワイトボードに押し寄せたのではなく、まもちゃんとりくちゃんがたかられてるでしょうよ。

 スクリーンがろされてる壁まで追い詰められてる。


 「ちち警部補けいぶほ助けてよっ」

 「お姉様、あのえない男と何かあるんですか」


 がやがやがや。「今は僕の上司だよ」ぴた。「「「「「「「「「「ぼく」」」」」」」」」

 「僕っ」「リアル僕っだ」「ミリタリー系のリアル僕っ来たぁーーーっ」

 「「「「「「「「「「ぅぅぅうううおおおーーー」」」」」」」」」」


 「「「「「「「「「まもお姉様ぁぁぁあああーーー」」」」」」」」」

 「しょっ、ちち警部補けいぶほ助けてっ」

 何だこの熱狂ねっきょうは。とにかくこれじゃ話が進まないでしょうよ。


 どたどだどた。「はなれてはなれて」

 まもちゃんとりくちゃんの前に割って入り、両手を広げて押し返す。

 「「「「「「「「「「お~」」」」」」」」」」

 「「「「「「「「「「きゃっ」」」」」」」」」」

 おや、けっこう行けるかも。


 「はいはい、おどり子さんの衣装やお肌には触れないで」

 「「誰がおどり子さんだっ」」「いたたたっ、背中をぐりぐりしないでよ」

 署長しょちょうΔデルタ静観せいかんか。

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