第80話 広域捜査本部

 「・・・こんな馬鹿ばかな事が、警察庁長官に統合幕僚長とうごうばくりょうちょう、有りん」

 「Δデルタ君、しかし使われている紙も書式も」

 「いいえ、この3人はかたりだ」

 俺も何も知らされていなければ、同じ反応をするでしょうよ。

 警察も自衛隊もたて組織、ましてやその組織が協力して事に当る、これまでなら絶対に起こりない事でしょうよ。


 「恐らく皆さん同じ感想を持つでしょうよ」「だろう」

 Δデルタの言葉をさえぎる。


 「直通と書いてあるでしょうよ」「それが何だっ」

 「警察庁長官とお話した事は、署長しょちょう」「ないっ」

 「統合幕僚長とうごうばくりょうちょうはどうですか、Δデルタ署長しょちょう

 「ある訳ないだろうっ、別組織だっ」

 「であるならいい機会きかいでしょうよ。その番号は特務が完了するまで有効ですよ」


 「それは詐欺さぎ集団がやってる手口だろうっ」

 「そうでしょうよ。ただ違うのは、異論や異議をもうしたてても、評価や今後の昇進には影響しない、ましてや降格などない。と聞いてますよ」


 「だから確かめようがないだろうっ」

 「何か理不尽りふじんな事が起こる方がおこのみですか」「貴様きさまっ」

 「上で待ってる人達にも説明をしないとだめでしょうよ」

 「Δデルタ君、やめろ。それとも電話してみるかね、わしにはそんな度胸どきょうはない。娘はまだ大学があるんだ」


 「署長しょちょうΔデルタ署長しょちょう、連れて行って欲しいでしょうよ」

 「勝手に行けっ。わし達もあとから行くっ」


 「俺達はこの建物初めてなので、勝手が分らないでしょうよ」

 「わかった。わし達も加わる」


 「指揮の全権は俺にありますから、オブザーバーで良ければ、書類はこちらに」

 「上がるぞっ、Δデルタ君」「いいんですか」「どうにもならんっ」



 「まもちゃんりくちゃん出て出て」「「はっ」」かつっ。

 俺達に続いてΔデルタ署長しょちょうと部屋を出た。

 「ついて来い」と署長しょちょう先陣せんじんを切り歩き出し、あとを追ってΔデルタ、俺達はそのうしろに続く。



 考えて見れば、何の事はない。

 エレベーターに乗って、4階に行けばいいでしょうよ。

 4階で降り右へ、左手に大会議室とある。

 ここはK警察署の通常業務で使う為、更にあゆみを進め突き当りを左へ。


 その先にはとびらがあり、上には緑の背景に人が出て行くピクトグラムが描かれている、所謂いわゆる非常口でしょうよ。


 前まで行くと左手に、開け放たれたとびらがありくぐると、机と椅子がずらり並び、いまだ人が右往左往うおうさおうしているでしょうよ。

 ここが受付の婦警さんが言っていた、道場を片付けた帳場ちょうばらしい。



 がたがた。ざっ。

 ぐに右に折れ、左側に準備を進めるK警察署の婦警さん達、各県警から招集しょうしゅうされた者達が適当に座ったり、窓際まどぎわで手持ち無沙汰ぶさたにしている者達を横目よこめに奥へ進む。


 婦警さん達は手を止め、他の者達も視線で追って来る。

 ん~~~、注目を集めているのは俺のうしろ、まもちゃんとりくちゃんでしょうよ。

 自衛官の夏服を着ているだけでも目立つだろうけど、二人が歩く姿は颯爽さっそうとしていて、女性特有の線も実に美しい。


 一番奥の机に指揮者が座る。

 俺達のいる壁側から、長机が3きゃく隙間すきまなく置かれ、50cmほどを空け同じ机が2きゃく置かれている。


 3きゃくの方に椅子いすが3きゃく、2きゃく方に2きゃく


 椅子いすきゃくうしろにホワイトボードが2台、椅子いすきゃくうしろに1台。


 ホワイトボード2台と1台の間にはもう1台置ける程度ていどがあり、丁度ちょうど壁の中央あたりで、スクリーンががっている。


 スクリーンの前を辿たどると、長机3きゃくの中の1きゃくがあり、上にはプロジェクタが置かれている。


 署長しょちょうΔデルタが窓のある2きゃくの方へ進み、

俺達は3きゃくの方で止まった。


 見渡すと俺達の机の前には机が4列、入って来たとびらの方に向かって5きゃく

 机1きゃく椅子いすきゃく、40人が事に当る。


 ぼす、キィーーーン。おっ、びっくりした。

 署長しょちょうがマイクのスイッチを入れたでしょうよ。

 もとが道場で広く、130畳はある為か、かなり高そうなスピーカーが4カ所に置かれている。


 2つは俺達が並んで立っている延長線上に、右側に1つ、左側に一つ。

 今いる場所から後ろの壁、その向こうは大会議室。

 とびらが2カ所あり、それぞれその横に2つのスピーカーが置かれているでしょうよ。


 「準備をしている者達は、一度手を止めて後ろの壁まで下がってくれ」

 がやがや。「各県の警察署から招集しょうしゅうされ、この広域捜査本部に着任した者は、まずは何処どこでもいい、席についてくれ」

 がやがや。「わしからは以上だ」ざわざわざわ。


 では表向きの説明をするでしょうよ。

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