第78話 K警察署

 「所長、着きましたよ」「まもちゃん」「あっ、ごめん」

 「警部補けいぶほ、着いたよ、起きて」「ぅあ~~~、1分だけ」

 「だめ、先頭に立ってくれないと私達、入れないでしょう」

 αアルファ、本当に毎日これする気なのか。

 行くか。人事異動の紙、かばん、これを忘れちゃいけないでしょうよ。

 暑そうだな。ばたん、ばたん、ばたん。


 「綺麗きれいですね」「うん、最近立て替えられたでしょうよ。古い庁舎がこれ」

 スマホに入れて置いた写真を見せる。両側から寄ったら暑いでしょうよ。

 「2階建て、しかも小さい、僕的には田舎いなかの警察って感じだよ」


 「そうなのよ。建て替わって無かったら、広域捜査本部を別のところに設置する事になって、かなり不便だったでしょうよ」

 4階建て白亜はくあの新庁舎は、向かって右の端が、オレンジ、赤茶色、白の縦棒で幾何学きかがく模様もようほどこされ、部屋一つ分ぐらいの幅が4階まであり、まるで塔の様でしょうよ。


 いよいよ入り口をくぐる。

 涼しいぃ~~~。「警部補けいぶほ、運転免許センターて書いてますよ」

 間違えた。警察署の入り口、何処どこって書いてたっけかなぁ~~~。


 「受付で聞いてみるでしょうよ」「もう~~~、僕達違う組織に来てるんだから」

 「わかってるでしょうよ」どたどたどた。


 「あのぉ~~~」「あっ、はいっ」

 若い婦警ふけいさんだ。両脇のまもちゃんとりくちゃんにちょっと引いてるでしょうよ。

 自衛官の人、余り見ないし、俺要人ようじんみたいでしょうよ。


 「あ、あの、免許の更新は1番窓口に」

 「いえいえ、入り口間違えた様で、ちち警部補けいぶほです」

 ズボンのポケットから警察手帳を出し、開いて見せる。


 「はぁ~~~、ご用向きは」「広域捜査本部が、今日から設置されてると思うんだけど」

 「はい、今日知らされて、天手古舞てんてこまいです。通常業務に支障が出ない様に大慌おおあわてで、4階の道場に40人体勢の帳場ちょうばを立ち上げてます。着任ですか」


 「ええ、まぁ」「そ、それで、お姉様方もですか」

 かつっ。「「本日よりお世話になりますっ」」ぴっしと敬礼けいれい、絵になるな。

 「はっ、こちらこそっ」つられて敬礼けいれいしてるでしょうよ。

 「ご案内いたしますっ。本官ほんかんに付いて、こちらにおまわり下さい」


 3人の声が響き渡ってるし。「どうぞこちらへ」と奥へうながされる。

 「まもちゃんお姉様」「違うと思う。りくちゃんお姉様」

 「僕達と変わらないと思うけどな」「どう見ても初々ういういしい、いだだだ」

 両脇からつねるとか、反則でしょうよ。


 「こちらです」とスイングドアを開けてくれる。

 先に書類を見せるでしょうよ。前を行く婦警ふけいさんに声を掛ける。

 「え~と署長しょちょうは来てる」

 「はい、執務室しつむしつで副署長しょちょうと広域捜査本部の件で話し合っておられるかと」


 それは丁度ちょうどいい。

 「見せないといけない書類があってね。署長しょちょう室に連れていってもらえるかな。帳場ちょうばには署長しょちょう達と上がるでしょうよ」

 「あっ、はぁ~~~、この先の突き当りを右へ行くと、とびらがあります。左側がエレベータで、署長しょちょう室は2階にあります」

 と親子扉を通され、婦警ふけいさんが俺の後ろへ回った。

 勝手かってに行けと言う事かな。


 「ぁ~の~、ぉ姉様達は昼食をどの様になさいますの」言葉遣ことばづかいが可笑おかしいでしょうよ。

 「今日のお昼は、ちょっと用事が、ねっ」「うっ、うん僕達は用事があって出るんだ」

 「がはっ、僕っ」どん。振り向くとつまずいてるでしょうよ。

 「だ、大丈夫」「立てる」まもちゃんとりくちゃんが両側から支える。

 「はい、いいえ、お姉様達の支えが無いと、力が入りませんわ」

 「そ、そう」「仕方ないね」


 で、エレベーターを2階でり、「右ですわ」と二人が支え続けている。

 目がうるんで、泣きそうでしょうよ。体調が悪いのか。

 そのまま右に連続3回曲がった、少し入り込んだここが署長しょちょう室のとびららしい。


 「お姉様方、有難う御座います。もう大丈夫ですわ」「良かった」「本当だね」

 「ぁのっ、今度ご用事の無い時に、昼食をご一緒していただけたりしませんか」

 「かまわないけど」「僕もいいよ」「きゃはぁ~~~」こつこつ。


 飛び跳ねて喜ぶような事かね。「うぅん、失礼します」俺を押しのけて前に出た。

 こんこん。「誰だっ、今忙しいっ、あとにしてくれ」


 「署長しょちょう、広域捜査本部設置に関わる方がお見えです」

 「何っ、通してくれ」いつも通り、相当あたふたしているでしょうよ。


 「どうぞ」婦警ふけいさんは振り返る。「有難ぉ~・・・」

 俺の横をしれっと通り過ぎ、まもちゃんとりくちゃんの前で立ち止まり、どうやら胸の前で手を組んでるでしょうよ。

 「お姉様方、お約束ですよ。必ずご一緒して下さいましね」

 「う、うん」「わ、分ったよ」「うふふふふふ」たたたたたた。

 走り去って行ったでしょうよ。何なの。

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