第77話 初めての制服姿

 「所長、起きて下さい」「所長、6時半過ぎてるよ」

 「えええぇぇぇ~~~、もうちょっと」

 「朝ごはん作って下さいよ」「そうだよ。僕達女の子は身支度みじたくに時間がかかるんだよ」

 「女の子?」「そいやっ」「ぐぅえ」「疑問符つけるなっ」「自分で作るでしょうよ」


 「あっ、僕達の知らないびん」「さっきからあまぁ~い香りが、チーズかな」

 すんすん。「まもちゃんっ、これワインのびん、良い香り」

 「どれどれ」「あ~、それαアルファがラッパ飲みしてたよ」

 「「ひえーーー」」ぅ~~~騒がしくて眠れない。

  あ~、朝日がまぶしいぃ~~~。


 「俺が部屋から追い出されて、ここで寝ようとしてたら、予告通りαアルファが二人を襲いに来たでしょうよ」

 「僕達追い出してないよ。車に寝袋があるって言ったよ。ねぇまもちゃん」

 「うんうん」ベットから追い出してるでしょうよ。


 「で、今も昔も番犬を手懐てなずけるには、えさあたえれば、すぐに尻尾を振る。食い終われば寝る。そのすきに襲うてっ言うから、ずっと飲んでたでしょうよ」

 「それで所長」「僕達には」


 「ないっ、ふっふぅ~~~滅茶苦茶めちゃくちゃ美味しかったでしょうよ」

 「私達に残しておいても良いでしょう」「そうだそうだ」


 「あのね、俺がここですすめられるままに、極上のワインと絶品のチーズを食べながら、寝ないで命の重さについて議論してたから二人とも襲われずに済んだでしょうよ。しかしお腹がえらくすっきりしてるね、二人共」

 寝間着ねまきではなく、Tシャツと短パンだ。「話をそらさないで下さい」


 「朝一番にお水をごくごく、そのあとすっきりさ、ねぇ~まもちゃん」ぽんぽこ。

 ぺちっ。「痛いよぉ~~~、出さないと美味しくたべれないよ」


 「そうだけど」「販売してるところ教えてくれたでしょうよ」「「本当っ」」

 「ただ自分の為とか、極める為とかで作ってるらしくて、数が無いらしい」

 「「ぇぇぇえええ~~~」」


 「紹介されたと言えば、αアルファが予約してる分から分けてくれと言ってたでしょうよ」

 「やったぁーーー」「「YEAHーーー」」ぱちん。「いいの、αアルファだよ」

 「僕はOKだよ」「うん、美味しい物に罪はない」


 「確かに、じゃ朝食を用意するから、車乗せて欲しいでしょうよ、眠気ねむけで事故ると困る」

 「僕はいいけど」「あさらないで下さいよ。装備品とか色々んでるので」


 「コーヒー、紅茶」「コーヒー」「紅茶」「・・・紅茶」「・・・コーヒー」

 「両方れるよ」「「YEAHーーー」」


 「10分ぐらいしたら俺の部屋に来るでしょうよ。りくちゃん空き缶、片付けるでしょうよ」

 「え~へへへ、あい」

 「今日帰ったら、バーベキューコンロとかも片付ける」「「えええぇぇぇ~~~」」

 「するの」「「はぁ~い」」



 ささっと朝食を用意する羽目はめになり、時間が無いので片付け物がシンクに増えて行き、俺は食べたあと歯磨はみがきをして、暑いけどシャツを着て、背広着て、もうだめ、腕まくりに上着は持つ。

 おっとかばんとびらを開けて革靴かわぐつく。

 隣からもりくちゃん、その隣からまもちゃんも御出座おでまし。


 お~陸自の制服姿を初めて見たでしょうよ。

 半袖はんそでのカッターシャツ、首のえりのボタンは外し、両胸に手帳が入りそうなポケット、白っぽいけどグレー、少し赤味もあるでしょうよ。


 両肩に3等陸曹の階級章、かくしょうは外している。

 二人共膝上ひざうえのスカートで、黒だけど光の加減かげんで少し青く見える。


 御御足おみあしはストッキングのベールに包まれ、くつかかとの低い黒のパンプス。


 昨日きのうのぽんぽこりんのお腹は見事におさまり、モデルさんかと見紛みまごう立ち姿。

 まもちゃんがりくちゃんと並び、是見これみよがしにポージング。


 「なははは、二人共恰好かっこう良い、素敵でしょうよ」

 「僕達を見てそれだけなの」「所長、他に言う事あるでしょう」


 「あっ、二人共お化粧はしないのね」

 「んーーー、僕達、任務遂行中はすぐぐにぐずれちゃうから」

 「はぁ~~~、リップぐらいかな」

 そう言われれば、娘子隊じょうしたいの海自の子も空自の子もだし、明乃あけのちゃんやはじめちゃんもお化粧はしてないでしょうよ。


 「それとまもちゃんりくちゃん、所長は厳禁げんきんでしょうよ」

 かつっ。「「はっ、ちち警部補けいぶほ拝命はいめいしました」」

 かかと鳴らして、背筋がすぅーーーと伸びて、敬礼けいれい

 本当に恰好かっこう良いでしょうよ。


 「戸締とじまりはしたかな」「窓にも」「とびらにも」

 「「トラップ仕掛けたから侵入者の有無はわかります」」


 「じゃ、行こうか」「「はぁ~い」」「着いたら起こして」「「ロックだYEAH」」

 ばたん、ばたん、ばたん。しゅぅぃ~~~。ぱさぱさぱさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る