第75話 空間と可視光

 「誰もいないでしょうよ。取りえずベットにでも座って」

 この部屋にはシングルのベットと小さいテーブルと椅子が一脚、俺はそれに座った。

 「で、どうしたの」「窓をたたくんですよ」ほぉーっ。

 「僕達怖いから、電気をけたままベットにもぐり込んでたんだよ」「それで」


 「静かになったから、そぉ~と窓を見ると、窓に引っ付いてお腹をもぞもぞ動かして、・・・突然とつぜんばたばたばたてっ窓をたたいて、私怖くて」


 「いきなりまもちゃんが、ばぁーーーて飛び出して行って、取り残されて、僕に向かって窓をたたいて、僕を見てお腹をもぞもぞ動かすんだ。もう怖くて」


 αアルファが、窓をたたいて、お腹をもぞもぞ、突然とつぜんばたばた。

 誰もいなかったし、何しに来たのよ。

 「αアルファを見た」ぷるぷるぷる。「」「おっきな二匹」

 席を立って、とびらかげから隣のりくちゃんの部屋を見る。

 あ~窓に、こぶしだいサイズが二匹と、他の虫も寄って来てるね。


 とびらを閉めて席に戻る。

 「電気をけてるからでしょうよ。消して寝れば、どっかに行くでしょうよ。ほら帰った帰った」


 ぷるぷるぷる。「僕、電気いてないと安心出来ないんだ」

 ぷるぷるぷる。「最低でもナツメ球がいてないと私もだめです」


 「・・・よくサバイバル訓練に耐えられるね、虫いっぱい出るでしょうよ」

 「あ~」「お~」「「あれはお金なので」」なるほど。少なくと今日は、旅行な訳ね。


 「でもここはシングルでしょうよ」「あっ、所長、僕達の車に寝袋が」

 何でよっ、俺もベットで寝たいよ。


 「ここで寝ても電気けたら、又寄って来るでしょうよ」

 「所長がいるから安心です」俺は人畜無害じんちくむがい安牌あんぱいなのね。

 まだ11時か、仕方ない。「二人共部屋に鍵は」「してないです」「僕も」


 「何処どこに置いてる」「テーブルの上に」「僕も」

 「じゃ、足洗ってスリッパ履いて、適当に寝るでしょうよ。部屋を閉めて来るから、もうタオルは勝手に出して」

 「「はぁ~い」」


 で、酒臭い。りくちゃんの部屋の床には酒盛りのあと

 どうやらテーブルではなく、床で飲んでいたらしい。


 ベットのシーツにしわがある。ばふんと倒れ込んでいたのでしょうよ。

 あわてて飛び出したらしく、空き缶がが散乱さんらんしている。


 ひろい集めテーブルに置いてもあまるので、残りは椅子に置く。

 鍵を閉めて、隣のまもちゃんの部屋へ。

 こっちは綺麗きれいなままだ。施錠せじょうをして俺の部屋に戻ると。


 さむいでしょうよ。

 エアコンで冷やして、二人で掛け布団をかぶって寝てるでしょうよ。

 やりたい放題、・・・ずぅ~と緊張きんちょうしてたって事か。


 二人の部屋の鍵をテーブルに置いて、クーラーボックスのバドワイザーと氷を確認して、朝の分のベーコンを残して、着火用の器具と共に抱えて外へ出る。


 部屋に鍵をかけ、足元を一歩づつ確認しながら、虫よけネットをくぐる。

 LEDランプを付け、火消つぼから消し炭を探し、バーベキューコンロへ。

 炭を幾つか足して消し炭に火をける。きやすいな。

 クーラーボックスをバーベキューコンロの前に置いて、ベーコンを1枚乗せる。

 洗ってないけど、大丈夫でしょうよ。

 残りのベーコンを、バーベキューコンロの横に付属の台に置いておく。

 リクライニングチェアをめいっぱい伸ばし、ビールを1本取りクーラーボックスを閉じて、上にランプを最小にして置く。


 かぽ。美味い。追い出される事を想定して、簡易ベットになる物にしといて良かったでしょよ。

 200mほどの標高がある所為せいか、風が涼しい。



 周りは闇、前も右も左も、まるで自分の周囲だけが世界の全てで、ただひとり。

 ランプのあかりが消え、虫のが消え、なぎが訪れ温度も消えたなら、存在も消えるのではと。

 そうではなくても、これまでの事がはかない何かなのではと。

 重力を感じ、仰向あおむけになれば、嗚呼ああ、何と美しい、嗚呼ああ、何と言う世界の広さか。

 黒黒くろぐろおおかぶさっていたものを、天辺てっぺんからやぶり取った様にギザギザの木々のシルエット。

 その向こうに青白い点描てんびょうおび

 強く弱く、赤く青く、きらめきかざる星々。

 わずかでもかすかでも光が無ければ、見失ってしまう。

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