第73話 お仕事は明日から

 しゅぅぃ~~~。しゅぅぃ~~~。

 ぱさぱさぱさ。ぱさぱさぱさ。

 かた。かた。ばたん。ばたん。


 じぃ~、じぃ~。ちきちき。じぃ~、じぃ~。

 さわさわさわぁ~~~。「うわぁ~~~気持ちいいぃ~~~」

 さわさわさわぁ~~~。「まもちゃん、かすかに海の匂いがする」


 初めて見る広い広い草原くさはら

 さぁ~~~、さわさわさわぁ~~~。と草の葉が裏返り白っぽくなる。

 見えない誰かがけている様に、

 さぁ~~~、さわさわさわぁ~~~。と海風がけ抜けて行く。

 そうかけているのか。

 かさかさかさと周りの木々の葉もらし。さぁ~~~、さわさわさわぁ~~~。

 この地に降り立つまでの、何もかも焼きくそうとするかの様な日差しは同じなのに、やわらかく。

 この地に降り立つまでの、何もかも蒸し上げるかの様な湿気しっけは、過ごしやすさわやか。

 すずしげなそでなしのワンピースを着た二人が走り出し、微風そよかぜと共にけ回る。

 まぶしい。たのに笑い、おどける。

 光の加減かげんきらめく何かで、おどり出た妖精かと見紛みまごう。



 「早速さっそくらしてるのか。まぁ買い取ったんだ。好きにすればいいが、走り回ってる二人はあんたの女かい」

 牧草の美しさに見蕩みとれて気付かなかった。

 「お~わかるか。俺の管理だからな。しかしあんた、あんないい体の女が目の前で走り回ってるのに、牧草に見惚みほれてたのか。変わってるな」

 あっ、又口に出てたか、αアルファΔデルタに俺自身が情報をらさない様にしないとでしょうよ。


 いつの間にか俺の右手にαアルファが来ていた。

 「あ~ちちです。しばらくここでお世話になります」

 「ここいら一帯いったいがけ地区の土地と牧草地を管理してるαアルファだ。見せる筋肉じゃねぇ~、あ~言う生き抜く為にきたえた体はい。あの二人も紹介してくれ」

 見ただけで、鍛錬たんれんしてるのが分かるの。恐れ入ったでしょうよ。

 「ですね。ぉぉぉおおお~~~い」「「きゃっきゃっきゃっ、きゃっ」」


 3つ置かれたトレーラーハウスホテルのかげになって見えなかったでしょうよ。

 αアルファ監視かんしする為、家が良く見えるのは3つ目の一番奥の部屋。

 職務しょくむ上、俺がそこで寝泊ねとまりするのが適任てきにんだと思うのだが、まもちゃんが自分がすると言って聞かなかった。

 木が少し邪魔じゃまだけど、2つ目の中央の部屋はりくちゃんがゆずらなかった。

 さっさっさっさっさっ。ん。なして俺のうしろに隠れるの。

 「こちら、このあたりを管理してるαアルファさん」よぉ~~~く知ってるけど、一応いちおう

 「防人さきもりです」「北海道ほっかいみちです」

 「αアルファだ。すきがあったら、喰っちまうからな。だははははは」

 「「ひぇーーー」」さっさっさっさっさっ。車のかげに逃げた。

 そんなに怖いなら、監視かんしするとか無理でしょうよ。

 二人を見るαアルファは、俺と話す時とはもう違う。

 明乃あけのちゃんの策略さくりゃく通り、生餌いきえ魅了みりょうされたでしょうよ。


 「あ~一つ聞きたいでしょうよ」「何だ」

 「三日分ぐらいの食材は持っては来たんですが、買い物は何処どこですれば」

 「見ての通りだ。うんなもんねーよ。車でK市かM市まで出るんだな」

 「そうですか、仕事場がK市なので、帰りに買って帰るでしょうよ」

 「K市ならビジネスホテルやラブホぐらいあるのに、態々わざわざここへ宿やどを作ったのか」

 「いやぁ~、上司が繁華街はんかがいのある所はだめだと言うもので、こうなったでしょうよ」

 うそぴょ~んと言う訳でもない。明乃あけのちゃんが決めたの事実だし。

 「あんたもあんただが、変わった上役うわやくだな。まっ、二人を持てあます様なら呼んでくれ」

 「同僚どうりょうですから」

 「他に娯楽ごらくはねぇーぞ、だはははは。ようが有ったら呼んでくれ」たったったっ。  

 今46か。殺人犯でなければ、気の良いおっさんでしょうよ。



 αアルファは家に入って出てこないでしょうよ。

 車に積んでいた荷物を部屋に運んだ。

 水道水は電気ポットに入れ、ひと煮立ちさせた。

 持って来たミネラルウォーターと箱のビールを数本冷蔵庫へ。


 さて、虫よけネットを広げるでしょうよぉ~。

 部屋は幅50cm、長さがコンテナの奥行き250cm強、厚み5cmほどのコンクリートの台の上に、鉄骨材で高さ1m程度の枠が組まれていて、部屋の両端と中央に置かれ、その上に置かれている。


 部屋は大型のコンテナの様だ。

 高さと奥行きはよく見かけるコンテナと同じで、長さは倍ぐらいあって、10m以上はあるでしょうよ。


 部屋のとびらの前には、鉄材で作られた階段、1mぐらいのぼり切った上は奥行き1m、とびらの横にある窓の端まで伸びる3m程度の板張りの床になっているでしょうよ。


 ご丁寧ていねいに四つ角は支柱になっていて、とびらから窓の端まで屋根がある。

 おかげで部屋側に虫よけネットのひも2カ所を、ペグで地面に固定する手間がはぶけるでしょうよ。

 この支柱に結び付ける。


 虫よけネットは高さ2m、幅が2×1.8m。

 幅2mの方を部屋側に合わせ、両端にあるひもを階段の支柱の屋根辺りに結ぶ。


 ふぃ~~~。持って来たポールを虫よけネットの中に入れて、俺も入る。

 無段階調整式のポール4本をだして、草が深いから踏み倒そう。

 部屋側から虫よけネットのコーナーに、ポールの先をセットし伸ばす。

 反対側も伸ばす。


 牧草側もコーナーにポールの先をセットして伸ばして伸ばして、少し上に持ち上げて地面にす。

 調整は牧草側のひもをペグで留めてからだ。


 外へ出て、ペグとハンマーのセット。

 ペグを2本出して虫よけネットのひもを結んで。引っ張る。


 ん~~~、こんなもんでしょうよ。かんかん。かんかん。OK。

 草を踏む、ふむふむ。こんな感じで良いでしょうよ。


 牧草側をめくって、バーベキューコンロinイン、炭とランプ。

 今度は部屋側をめくって、リクライニングチェア3脚セット。

 基本装備完了。


 それぞれ自室に荷物を運び入れ、二人は早速さっそく汗を流し着替えた。

 Tシャツに短パン、サンダル履き。くつろいでるなぁ~~~。


 部屋から出て来たまもちゃんとりくちゃんが、俺の部屋で下ごしらえ中。

 二人共思いのほか部屋が気に入った様で、いきなり汚すのが嫌だとか。

 まっ、いいけど。


 それと大きなベットで、ばふん、としたいと二人が言い、明乃あけのちゃんもハニートラップにした手前てまえ承諾しょうだく

 俺の部屋のベットはシングルで、内装がシンプルな分、空いたスペースに洗濯機があり、洗濯中でもある。

 ある程度乾燥させて、自分の部屋で干すらしい。


 今日はゆっくりくつろいで、明日からお仕事だ。飲むでしょうよぉーーー。


 あっ、αアルファを逮捕する前に、普通ゴミと資源ごみの出し方を聞いとこ。

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