罪跡《ざいせき》編

第72話 宿泊地へ

 ぶろろろろ。ピィーーー。「はいおらい」ピィーーー。「はいおらい、ストップ」

 だだだだだ。「おいっ、お前らっ、何にしてる。ここは牧草地だ、らすなっ」


 「どちらさん」「俺はここいら一帯いったいの牧草地を管理している。そこの家に住んでる」

 「なら聞いてるでしょう、ここの地主から。トレーラーハウスホテルを置くんですよ。どのあたりに置くかもこまかく指定されてて」

 「ちょっと待てっ、今確認する」「俺等も仕事なんで、手短にお願いしますよ」


 「くそっ、聞いてねっ」ぽっちっとな。ツルルルルル、ツルルルルル、「はい」

 「がけ地区の土地と牧草地を管理してるαアルファだ。朝からうるさい奴らが来てる、牧草地にトレーラーハウスホテルを置くとか言いてるぞ。俺は聞いてないぞっ」

 「・・・」「何っ、買い取りっ、牧草をか?」「・・・」「おっ、借地契約」

 「・・・」「出張っ、何で態々わざわざ何にも無いここにまる」

 「・・・」「何っ、もう契約して金も振り込まれた」

 「・・・」「一週間後っ」「・・・」「分かった。トラブルは起こさね」

 「・・・」「あ~、分った」ぴっ。「確認が取れた。進めてくれ」


 「それじゃ、電気水道通すんで、あ~、下水処理は取りえずお宅んちの合併浄化槽につなぎますから、直ぐに取り掛かるんで2時間ほどトイレやら何やら我慢してもらえますかね。ホテルの数を増やす時は、大きいやつを別途埋めるんで、そん時もちょっと五月蠅うるさいですけどご容赦ようしゃ下さい。プロパンは部屋を置いた後に持って来るんで」

 「俺は出かけるっ、好きにしろっ」

 「そらぁ~かまいませんがね。俺等も仕事なんで、17時には終わりますんで、帰って来て判子はんこいて下さいよ」

 「あ~ぁ、わかったっ」だっ、だっ、だっ、だっ、だっ。

 ぴっぴっ。かた。ばんっ。しゅぅぃ~~~。じゃりじゃりじゃり。

 しゅぅぃ~~~。「ほんとぉーーーに帰って来て下さいよぉーーー。俺等も仕事なんでっ」



 いい天気、それが分かるのは、空一面がブルーだから。

 この時期のお日様は、それはそれは元気にまばゆく、朝早くからお出ましになる。

 気の向くまま、風まかせに空を行く雲ですら、避けているのではと思うほど青一色いっしょく

 朝ご飯を探すすずめですら、木陰こかげを探す。

 干物ひものになりそうなぐらい良い天気、ブルーだ。


 宿泊先のトレーラーハウスホテルまで、8時間近くをまもちゃんとりくちゃんは二人で、俺は一人で運転するでしょうよ。

 途中、ところどころで休憩きゅうけいを2時間ぐらい見込んでいる。

 つまり約10時間、到着予定時刻は15時。

 一番心配なのが、買い集めたバドワイザー。

 クーラーボックスに詰め込んだ分は良いが、箱の分がこの炎天下、車中で爆発しないか、ブルーだ。


 肉とソーセージとチーズは別のクーラーボックスに。

 バケットは3本、・・・もう一本買っとくべきだったでしょうよ。

 虫よけネット、積んだ。ポール積んだ。バーベキューコンロ積んだ。

 リクライニングチェア3脚積んだ。炭、積んだ。ランプ積んだ。

 あっ、虫よけネットのひもめる、ペグとハンマーのセット、・・・うん積んだっ。


 良しっ、俺はやれるでしょうよっ。

 いや、まだ何か足りない。

 ・・・野菜、野菜忘れたぁーーー。いや、休憩きゅうけいした時に買えるでしょうよ。

 晩ご飯は、バーベキューーーだぁーーー。

 これぐらいの楽しみが無いと、出張なんて出来ないでしょうよ。しゅっぱぁ~つ。



 照り付ける日差し、正面に広がる青い空、蒼蒼あおあおとした小山、そのそでをゆるゆると上がって行く入口の道。

 インターチェンジをくだった交差点を右へ。

 密集していない家々いえいえの合い間を通る。

 小高い山に囲まれている。どこへ向いて進んでも、山に向かう。

 標識は、十字路の目の前を横切っている道がルートATとある、これを左へ。

 上り坂を進めば、直ぐに両側が木々でしげる。

 熱い光がさえぎられたのもつか、日光が視界をうばおうとする。

 熱射にえる事ない緑の中を、只管ひたすら進む。

 山間やまあいにくねくねと造られた細い道をただ進む。

 谷を渡りしばらく行くと視界が開け、木々に囲まれた牧草地が見えた。

 先に家が2けんあり、十字路の角に建っている。

 ここを右に曲がる。

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