第67話 源《はじめ》ちゃん、本領発揮

 「そうかもしれないけど」フランソワーズはかばってくれると思ってたのにっ。

 「パパは向いてないの、私と子供いっぱい作って、片田舎でのぉ~~~んびり暮らすのがいいの。ねぇ~~~パパ」

 やっぱりそうかなぁ~~~、フランソワーズ。


 「明乃あけのちゃん仮に所長が、何だったかしら、昼間は役に立たないあかり」

 「昼行灯ひるあんどん、かしら」

 そんな事ないよ。コーヒーの品質管理は、俺にしか出来ないでしょうよ。


 「それだったとしても」フランソワーズ。ジムっ。・・・視線らすなよ。

 「・・・警官と知ったら逃げるのではないの」

 「はじめちゃん、αアルファは女性に強い執着しゅうちゃくがあるわ。そんな男の前に、私の次にスタイルの良いりくちゃんやまもちゃんがあらわれたら」


 「明乃あけのちゃんっ、ここの皆より私の方がスタイルは良いけど。その次にプロポーションの良いりくちゃんとまもちゃんをハニートラップにするつもり」

 「明乃あけのちゃん、それはやり過ぎではないの。黄金比おうごんひめぐまれた美しい私の次に綺麗きれいな二人をおとりにするなんて」


 なははははは、生物学的女性の特徴とくちょうを隠すでもなく、卑下ひげするでもなく、美しいものは美しいと言えるこの子達は素晴らしい。

 「Oh、マイハニー明乃あけの、マイハニー乃睦のりくとマイハニーまもを危険な状況に置くのは、僕は反対だよ」

 「俺も賛成は出来ないよ明乃あけのちゃん」


 「ジム、マッ、所長と力比ちからくらべをしてみて頂戴ちょうだい

 「マイハニー明乃あけの、今夜」「いや」「分ったよマイハニー明乃あけの


 「明乃あけのちゃん、ジムは入賞した事もあるのよ」

 「フランソワーズ、まずは見てもらえるかしら」「もぅ、パパ頑張がんばって」

 マッチョなジムと組んだら骨がくだけるでしょうよ。

 「ダディ、両手を出して。手加減するよ」「出張があるから、るなよ」


 疲れる事はしたくないけど、明乃あけのちゃんのあんは支持できない。

 明乃あけのちゃんの意図いとが良く分からないが、ジムと向かい合い両手を組み、軸足を少し後ろに下げ、ジムの押してくるパワーにそなえる。

 ジムも同じ体制を取る。


 「ダディ、押してくれ」そいじゃ、やってみますか。

 んーーー。「なっ」ジムが押し返して来た。さらに押す。

 ジムの前腕ぜんわん上腕じょうわん、三角筋、僧帽筋そうぼうきんふくらみ変化するのが見える。


 ジムの表情は意表いひょうだったのか必至ひっしだ。

 こんなはずは無いんだが、俺自身もこれはおどろいている。

 しかもジムを押し返せそうに思てる。ミシッ。


 「ダディッ、終わりだっ、床板が割れるっ」力をはなれる。

 「ダディ、その筋肉量の何処どこからそんなパワーが出るんだい」

 「パパすごぉーーーい、ジムを押し返すなんて、素敵」


 「ダディいけるよ。マイハニー乃睦のりくとマイハニーまもを守れるよ。今のダディならなぐり殺せる」

 おいおいおい、物騒ぶっそうな事いうなよ。


 「やっぱりっ、順応じゅんのうして、密度も高いのでは、貴重きちょうなサンプル、そうだわ臓器の組織サンプルを、所長っ」

 「はいっ、はじめちゃん」「解剖かいぼうして組織サンプルを取りたいの」


 「はっ」「首のところからぁ~~~、一直線に開いて、中が見たいのぉ~~~」

 よだれが流れ出そうなほど、無防備に開いた口。

 高揚こうようしているのが一目でわかる、紅色べにいろほほ

 きりっとしていた目じりが下がり、うるんだひとみで、熱く俺を見つめ、解剖かいぼうゆるしを待つ。


 き、聞いた事がある、さくたんやまもちゃん、他の女の子達からも。

 時折ときおりはじめちゃんがさくたん、ミス・テリー、かぴたん達の夕飯を作る事があるらしいが、必ず大きな魚を持参するとか。

 人数が多いのもあるのだろうが、3階のリビング兼ダイニングで待っていても出来上がって来ない。

 開口から見えるはじめちゃんは、隣のキッチンで熱心に何かをしている。


 あまりにも遅いので行って見ると、包丁ほうちょうではなく、オペ用のマイメスなどを並べて、魚の腹を真一文字まいちもんじに開き、おさまっていたであろう臓物ぞうもつを、丁寧ていねい丁寧ていねいに切り分け、時に切り開き、恋人と愛をかたっているかの様に、それはそれ嬉しそうにぶつぶつと何かをつぶやいているとか。

 これ、本気でしょうよ。


 「はじめちゃんっ、パパが死ぬでしょっ」

 「フランソワーズ、私、医師免許もあるから大丈夫よ。可能な限り局部麻酔でお話しをしながら進めるから。まぁ~まれに途中で麻酔がきれる人がいるけど、終わるまでちゃんとしばり付けて、貴重きちょうなサンプルを死なせる様な事はしないわ」

 地獄でしょうよ。


 「そう、あとちゃんとパパに戻してよはじめちゃん」

 「ええ、精子も保存するから、必要な時は言いなさいな。特別に提供してあげる」


 「本当っ、そうよ、先にジュニアを作って、責任を取ってもらえばいいじゃない」

 「マイハニーはじめちゃんっ、僕もダディの子供が欲しいっ」

 ジムッ、違う方向に取られる様な言い方するなっ。


 「ジム、私のお腹から出て来た子供は、誰にも渡さないから」

 「Oh、僕がたのめるのはフランソワーズだけなんだよ」

 明乃あけのちゃん、はじめちゃんをめて、本当にお腹を開かれるでしょうよ。

 「私も、コーヒーを飲みながら、一日中働かない人の頭の中にどんなお花が咲いているのか、丁度ちょうど見たいと思っていたところなの」


 「明乃あけのちゃんっ」「何かしら、マッ、所長」

 「解剖かいぼうしないでっ」


 「きりきりと働いて下さいな。所長が陸自の二人を指名したのだから守ってあげて。この案件も完全解決させて欲しいのだけど」

 「努力するでしょうよ」「それは皆何時いつももしているの、所長」


 あっ、はじめちゃんが戻ってる。良かったぁ~~~。

 「私はこの案件が、今後の活動を大きく変えるものになると思っているわ」

 「パパ、今明乃あけのちゃん達が欲しいのは、何の役にも立たない言葉、精神論よ」

 「ダディ、ガッツを見せて欲しいのさ」


 「αアルファは二人に近づけさせない。俺達しか知らないβベータ1殺害現場から、必ず生体情報を持ち帰る。αアルファΔデルタにはさばきを受けてもらう。解剖かいぼう回避できた?」


 「私は良いのだけれど」「解剖かいぼうしたいのぉーーー」

 「はじめちゃん、又の機会きかいにして頂戴ちょうだい。今はこの人が必要なのよ」

 延期えんきされただけだ。


 「仕方ないわね。可能な限りサポートをするわ」

 「と言う事なら、予算の事は気にせず事を進めて、あのおじいさん達が何を言おうと、必要なお金は必ずむしり取って来ます」

 頼もしい。


 「マイハニー明乃あけの、マイハニーまもとマイハニー乃睦のりくにトラップの事は話さないのかい」

 「ジム、話さない方がいいと思うけど、まもちゃん直ぐに表情に出るから」

 「フランソワーズの言う事に一理あるわ明乃あけのちゃん」

 「そう、ね。えさには自然に振舞ふるまってもらった方が、食いついてもらえそうね。守ると言い切った人もいるし、大丈夫でしょう。方針が決まったので、早速、牧草の買取かいとりと土地の借地契約しゃくちけいやく、トレーラーハウスホテルを61日間契約けいやくします。マッ、所長、何時いつから現場に向かうのかしら」


 「10日後ぐらいかな、αアルファΔデルタのDNA取得しゅとくに必要な、鑑定処分許可状かんていしょぶんきょかじょう身体検査令状しんたけんされいじょうの申請書も、逮捕状の請求も書けてないし、念のため拘束こうそく前に家宅捜索かたくそうさくが出来る様に捜索差押許可状そうさくさしおさえきょかじょうも書いときたいし」


 「人員の手配はどうするのかしら」

 「当該とうがい県警以外から各1名。内訳は鑑識を25名、理想に燃える若手刑事君を15名、計40名欲しいでしょうよ」


 「分かりました。国家公安委員会に打診だしんしておきます。他にはないかしら」

 「うん、人員はきっちりでなくてもいいけど、当該とうがい県警の鑑識ラボを最優先でりたいんだけど」

 「それも伝えておきますが、譲歩じょうほは出来るのかしら」「ラボはできないよ明乃あけのちゃん」

 「そう手配します。ではマッ、所長」


 がらんがらんがらん。だだだだだ。「おっちゃんっ」「待って、さくたん」

 どん、ひし。「おっぢゃん、怖かったよぉ~~~~~~」「ど、どったさくたん」

 さくたんが泣きながらけ込んで来た。

 「空自のくぅ~ちゃん、私の妹を泣かしたのは誰なのっ」

 「空自のくぅ~ちゃん、どう言う事かしら、取り巻きを排除はいじょしたのではなかったの」


 「どうしたのさくたん」「Oh、マイハニー早紅耶さくや

 「空自のくぅ~ちゃん違いますっ。それが、べそをかいてる姿があまりにも可愛らしいので、ボウフラの様に次から次にいて来て写真をるので、画像回収の為に警官と公安でその人達を取り囲みまして、もめにもめて脱出するのに今までかかったんです」


 「さくたんが愛らしいから当然ね。それで全て回収できたのかしら」「おそらく」

 「そう、桜花おうか」「お呼びですか、明乃あけの様」

 「えっ、あっ、ええ国内のネットを48時間のぞいて。さくたんの画像を見つけたら、削除さくじょせずにネット上で出回っている適当な画像と置き換えて欲しいの。できるかしら」

 「かしこまりました。生成AIのものと置き換えます」


 「所長、私の妹と上がりたいの」「そうして、さくたんうえがるでしょうよ」

 びぃーーー。「私も」びぃーーー。「もーぉ」びっ。

 「はい、明石あかしです。あっ、まもちゃん、卵は回収できたのかしら」

 「あっ、たまごぉ~~~、うえ~~~」

 「・・・」「えっ、ミス・テリーとかぴたん、クラスの全員と交渉中?」

 「・・・」「アイス?」「・・・」「皆に」「ぴえーーー」

 「・・・」「わかりました。要求をんで頂戴ちょうだい

 「きゃっきゃっ」「卵は」「無事回収」「ふぇ~~~」

 「・・・」「えっ」「・・・」「ええ、立て替えて、どれでも好きなものを」

 「・・・」「あっ、領収書、もらって来てね、経費で処理しますから」ぴっ。

 「さくたん、安心して、卵、回収に成功したわ」「ぴぇーーー」「さっ、上がりましょう」


 「空自のくぅ~ちゃんも一緒に上がって。さくたんを頼むでしょうよ」

「空自のくぅ~ちゃん違いますぅ~~~。でも良いんですか、片付いてない様ですけど」


 「ジムとフランソワーズに手伝ってもらうでしょうよ。いいだろう」

 目配せをする。明乃あけのちゃんは何かを察した様だけど。


 「ジムとフランソワーズ、頼めるかしら」

 「マイハニー明乃あけのNOノー problemプロブレム

 「御馳走ごちそうになった分ぐらいパパと一緒にぃ~~~働くは」


 「そう、じゃお願いするわ。さくたん、家に上がって落ち着きましょう」

 「ぅぅん」がらんがらんがらん。ばたばたばた。

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