第64話 捏造《ねつぞう》対策

 がちゃがちゃと丸テーブルも含めた客席にあった食器類をキッチンに下げた。

 ティーポット一つはさっとゆすいで、新しい茶葉にして入れ直し、もう一つのポットも熱いお湯に入れ直した。


 テーブルをL字に置いている事から、俺とジムは入口に最も近いソファー、L字の横の位置に座る。

 女性陣は隣、中央のソファー、L字の縦の位置に座った。

 ジム、本当にでかいな。3人掛けのソファーが、ぎゅうぎゅうでしょうよ。

 食器類を下げながら、二人にあらましは話した。


 かちゃ。「でパパは私のアンダーヘアーではなくぅ~、私の知らない女の子のものを血眼ちまなこで探すのね」

 「フランソワーズ、血眼ちまなこって」

 「寄りにもよって、これに着眼して探し出そうなんて」

 「いやはじめちゃん」

 「本当に、よくも思いつくものだわ、いやらしい」

 「だって明乃あけのちゃん」


 「流石だよダディ。こんな所に生体情報が残留している可能性に気付くとは、でもダディ、どこでシミュレートしたんだい。ミス・テリーとかぴたんがこのノートを持って来たはついさっきじゃないか」


 「あっ、ん~~~、うちにはこう言うの得意な子がいるのよ」

 「パパこれ、捏造ねつぞうだって言われるかも」


 「僕もそう思うよ。アンダーヘアー1本や2本、用意できると思うし。相手の弁護士が、根拠の有無に関係なく捏造ねつぞうを主張する事が考えられるんじゃないかな」


 「だとしたら、どうしたものかしら。司法制度の違いがあっても、証拠その物を疑われると」

 「では明乃あけのちゃん、証拠集めの一部始終を記録して、それがどの位置にあったものなのか残すしかないわ」


 「αアルファの家に、家宅捜査へ入るまで絶対に捜査関係者が中に入らない様にしないといけないと言う事ねはじめちゃん」

 「それだけでは不十分よ明乃あけのちゃん、中に入ってからも捜査関係者が持ち込んでいない。捜査関係者が落した物でないと、明確にする必要があるわ」


 「マイハニーはじめ、そんな事が出来るのかい」

 「作業中の様子を記録する為のカメラも設置出来ないじゃない」

 確かに、フランソワーズの言う通りでしょうよ。

 カメラを設置する為に、αアルファの家へ入った時点で、持ち込んだ疑惑が発生する。


 「マッ、所長、今回も解決は難しいのではないか」「防護服」「えっ」

 「密閉型の防護服を着てから中へ入るの」


 「マイハニーはじめ、宇宙服みたいなやつかい」「ええ、ジム」

 「はじめちゃん、家宅捜査に宇宙服を着て入るの」

 「wow、はじめちゃん大胆」「他にこのプランを実現可能にする方法がないわ」


 「それ、警察の捜査予算から出るのかしら、マッ、所長」

 「100%出ないでしょうよ」「じゃ、又こっちで用意しないといけないのかしら」

 ふぅ~~~。「ちょっ、明乃あけのちゃん大丈夫っ」「明乃あけのちゃん」


 明乃あけのちゃんがフランソワーズの肩に倒れた。

 「え、ええ、大丈夫よフランソワーズ、有難う」「どうしたの」

 「その、宇宙服」「密閉型の防護服よ明乃あけのちゃん」


 「そう、それを買う為に日がな一日、営業に回るのかと思うと、気がめいって」

 「明乃あけのちゃん、私も知り合いに当るわ。桜花おうかの為にも頑張りましょう」


 「有難うはじめちゃん」

 「桜花おうか、このマンションどこか悪いの」「ええまぁ~、色々あるのよ」


 「マイハニー明乃あけの僕」

 「それでその密閉型の防護服は、如何程かほどなのかしら」「Oh」


 「所長、端末を」俺の前のテーブルに置いていた、桜花おうかの端末を取り、前に差し出す。

 「フランソワーズ、はじめちゃんに回して」


 「これメーカー名入ってないのね」「うふふふ、まぁ~ね」

 今更仕方無いでしょうよ。次回分から国内メーカーのロゴを貸してもらうでしょうよ。

 「はい、明乃あけのちゃん」「有難う、はじめちゃん」「ええ」


 端末を受け取ったはじめちゃん、まさかとは思うけど桜花おうかに話しかけたりしないでよ。

 「おっ」ぷるぷる。「俺ちょっとトイレに行って来るでしょうよ」気付いてれくた。


 「うぅん、はじめです。密閉型の防護服を探して欲しいの」

 「こんにちははじめ様、具体的な条件をどうぞ」

 淡々とした口調で、桜花おうかが話す。グッジョブッ、桜花おうか


 がらんがらん。どたどた。ふぅ~~~。わざわざ、隣の警察詰め所のトイレに行くとは。

 しかし、ジムを立ち入らせる訳にもいかないし、ここのトイレ使うしかないでしょうよ。

 「パパ、どこ行ってたの」「警察詰め所」「どうして」「ここは使わせてもらえないの」


 「明乃あけのちゃんっ」

 「わかったからフランソワーズ、大きな声は出さないで。解禁します。汚したらお掃除してから出て下さいな」


 「わかったぁ~~~。それで、どうかな」

 「僕に合うサイズは無さそうだよダディ」

 「ジム、お前が今着てる服だって、こっちじゃ無いでしょうよ。お前が着る訳じゃないんだし」


 「今のダディのボディじゃ、小さいかもしれないよ」

 どたどたど。「そうなのはじめちゃん」どさ。

 はじめちゃん達のソファーは埋まっているので、カウンター寄りのソファーに座り、はじめちゃんの横へ。


 「パパどうしてそっちに行くの」

 「フランソワーズ、この話が終わるまで待って欲しいでしょうよ」「もぉ~~~」

 「こ、これです所長」本当に宇宙服みたいだ。


 全体的に、空気で膨らませたビニールの人形にんぎょうの様で、頭部は丸く透明。

 ボディは乳白色、後ろの写真を見ると、頭の左右にファンの様な物がある。

 左側の肩の辺りから腰まで、やはり3つのファンの様な物が縦に並んでいて、中央にジッパーが下まで伸びているでしょうよ。


 説明を読むと、背中にファンがあり、抗菌シートを内蔵しているらしい、加えて空気排出口にもフィルターがあるでしょうよ。

 サイズは大きいのが180~195か、Mサイズは165~180、重さ1.8kg。


 まもちゃんとりくちゃんも考慮こうりょに入れると、Mはゆったりと言うのがある.

 ぉぉぉおおお~~~、胸囲きょういのサイズが20cmアップ。

 ゆったりサイズなら、俺でもなんとかなるでしょうよ。

 でも手はの様だし、足はビニール袋の様な物を付けてるでしょうよ。


 「はじめちゃん手と足は」

 「別途ゴム製かビニール製の手袋と、むれ防止用のインナー手袋、シューズカバーが必要です」


 「そ、そそ、それは、如何程かほどなのかしら」

 「明乃あけのちゃん、これはそんなに高価じゃないわ、20枚入り、税込み1298ぐらいよ」

 「ほっ、3品1万以下なのね」「ええ、問題は防護服よ」


 「おっ、おいくらなのかしら」

 「しょ、所長とまもちゃんとりくちゃんが着れるサイズを考えると、Mのゆったりサイズ、1着税込み154000」


 「さ、3人なのよね」「えっ、ええサクッと50万、ぐらいね。あと」

 「まだ何か、あるの、はじめちゃん」


 「外から持ち込んでないと言う為に、新品の紙パック式のお掃除機も人数分」

 「お掃除機、新品3台。きゅぅ~~~」


 「「明乃あけのちゃんっ」」「Oh!マイハニー明乃あけのっ」

 「はじめちゃんっ、頭を俺の腕にの乗せてっ。悪いけど一旦席を立って、トイレの方へ抜けて」

 「はいっ」


 「フランソワーズ、左腕に足を乗せて」「パパ」「隣のソファーに寝かせるよ」

 俺が座っていたソファーの肘掛ひじかけに両足を置き、頭を低くする形で寝かせた。


 「はじめちゃん、これで良いかな。貧血だと思うんだけど」

 「適切だと思います。少しこの場から離れます。外務省分室からひざ掛けを持って来ます」

 「お願いするでしょうよ」たたた。

 ジムとフランソワーズにとっては基本情報だろうからいいか。

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