第63話 悪しき前例

 「明乃あけのちゃん、何とかして」「わかってるははじめちゃん」

 ぴっぽっぱっ。ツルルル、ツルルル、かちゃっ。「明石あかしです」「・・・」

 「Terryテリー・N・岡と竺天鬼あつかみおにみずねが、護衛を振り切って飛び出して行きました。追えていますか」


 「・・・」「はい、工作員の追尾は、ある。娘子隊じょうしたいが後を追っています」

 「・・・」「はい、妹大好まいきよ早紅耶さくやも後を追って」

 「・・・」「はい、囲まれてるっ。撮影会?、追い払って下さいっ」

 「・・・」「データは消去を、はい、応じない者は肖像権しょうぞうけんの侵害で拘束こうそくして下さい」

 「・・・」「はい、娘子隊じょうしたいと合流を、はい、お願いします」


 「私の可愛い部下と公安で追っているわ。所属不明の者2名も追っている様だけど、何とかしのげるみたいよ」

 「明乃あけのちゃん、盲点もうてんが見えたわ」


 「そうねはじめちゃん、私もこのさい、出来る事はした方が良いと思うの」

 「ええ、是非ぜひそうして欲しいわ」


 冷蔵庫の前で様子をうかがっていた俺に視線を向けて来る。

 「マッ、所長」「はいっ、何でしょう明乃あけのちゃん、家賃を取らないで」

 「今回だけは経費で落として上げます」「ありがとぉ~」


 「それですね。さくたんが飛び出して行ってですね。囲まれてそのばで撮影会に」

 「ダメ」「はっ」「ミス・テリーとかぴたんも」「ダメ、所長命令」


 「どうしてなのかしら」「納得のいく説明を」すたすたすた。攻め込んで来た。

 「色々衣装替えをして、全職員で写真撮るつもりでしょうよ」


 「いいえ、女子職員だけですが、何か」全職員引き1。俺抜きですか。

 「その画像が流出したら、ここに関わる全職員が顔バレになって、あちらさんの出方次第、生命の危機に陥る人が出るかもでしょうよ」


 「所長、3人は普通なら事ある毎に、その時々の思い出をご家族と残しているはずです」

 くはっ、はじめちゃんのストレートが。


 「マッ、所長は、あの子達の刹那せつなの時を、二度と戻らい一瞬を、親御おやごさんに届けなくてはならないのではないかしら」

 ぐはっ、明乃あけのちゃんのボディブローが、


 俺、ノーガードなのに。はっ、次はかっ、カウンターを。

 「聞いて頂けないのでしたら」来るっ。「経費で落とせない気がするのだけれど」

 がはっ。反則でしょうよっ。


 「明乃あけのちゃん、さっき経費で落とすって言ったでしょうよ」

 「記憶に御座いません」「なっ、そんなのとおわけ」「とおります。この国では」

 くそぉ~~~、前例作りやがってぇーーー。


 「好きにするでしょうよ。絶対に流出しない様に徹底してよ」

 「ええ、記憶が戻ってきました」


 「明乃あけのちゃん、さくたんにゴスロリ着せましょう」

 「それもいいのだけれどはじめちゃん、振袖は外せないと思うの」

 「あ~、私も入りたいぃ~~~」「勿論もちろん桜花おうか、加工も頼むは」

 「Yeahーーー。あっ、おっちゃん終わったよ」


 「ぉぉぉおおお~~~、で、どうよ」

 「押入れに入り込む可能性はないよ」「そうか。畳は」

 「畳は結構入り込む。時間が経つとその上に、ほこりが乗って行くの」  

 「ほう、どの程度」「10本有ったら、3本、ぐらいかな」

 「3割か、掃除機は」

 「ほこりがある一定量を超えると、一緒に吸い出される」


 「だめかぁ~~~」

 「そうでもないよ。積もったほこりだけが吸い出される循環系があって、その条件が保持されている間、ずぅ~~~と残ってる」


 「ほぉっ、その条件が成立する可能性は」

 「隙間すきまの広さや状況にもよるけど、30%ぐらいかな」「とすると」

 「もし、もしもあの子のけっけが、何時間かで10本以上抜けていたら、今でも30%の確率で残っている。つまり懇切こんせつ丁寧ていねいに探せば、1本以上見つかる可能性がある」


 「はじめちゃん」「はい」

 「けっけが1本あったら、DNA検出できる」

 ぱんぱん。これよこれ。

 秘境ひきょう、さくたん部屋べやのけっけコレクション、素晴らしい。

 ミス・テリーとかぴたん、宝物ほうもつを提供してくれたさくたん、有難う。


 「そっ、それ返して下さいな」「はい、御蔭おかげで道が開けたでしょうよ」

 「桜花おうかこれをどうしたの」


 「画像を取り込んで、モデリングして、シミュレートしたの」

 「全部」「そう全部、サンプル多い方が良いでしょう」


 「全部消去しなさい」「嫌っ、私の体をつくる時の参考にするのぉ~~~」

 「はじめちゃん、明乃あけのちゃん、桜花おうかは嫌がったんだけど、俺が頼んだのよ。めないであげて欲しいでしょうよ」


 「そうなのかしら桜花おうか」「うん」

 「はじめちゃん、桜花おうかが言う様な事は可能なのかしら」

 「さくたんも含め今の私達の知識や技術、設備では無理ね。まず人が存続そんぞくし続けた上で、科学が進歩し続ける事が最低条件。さら桜花おうかも生き続けると言う事は、ここ量子探偵事務所NTRもり続けなければならいわ」


 「そう桜花おうかかなう様に私達も懸命けんめい頑張がんばろうと思うの、未来に持って行きなさい。はじめちゃんいいでしょう」

 「明乃あけのちゃんが良いのなら私に異存いぞんはないわ」

 「他の皆には私が確認を取るわ」「明乃あけのちゃん有難ぉ~~~」


 「それでどうかなはじめちゃん」「1本ですか」「そう」

 「大変きびしいですが、現在の技術なら不可能ではありません」「どのぐらい」


 「それもはっきりとは、状態や人によって変わります。体毛たいもうからDNAを検出する場合、中心部にある毛髄質ずいしつと言う部位から取るのですが、毛先の様に細いと毛髄質ずいしつ自体無い場合があります。願望としては毛根部分の太い所が残ってて欲しいですね」

 「可能性がゼロではない、と言う理解でいのかな」「はい、それで」


 「3人で集まって何をしているの」「ひゃぃっ」「きゃっ」

 むふふふふふ。俺にはフランソワーズとジムが、忍び足で近付いているのが見えていたけど、ポーカーフェイス。

 明乃あけのちゃんYeah~~~。


 「フランソワーズ、ジムも気配を消して近付かないでっ」

 「マイハニー明乃あけのはじめ、キュートだよ」

 「黙りなさい」「子供じゃないわ」「Oh!Coolクゥール

 二人して片手を腰にさっと置き。格好いぃーーー。


 「随分と話しがそれたけど、さっき話していた、被害者の生体情報が残っているかと言う問いかけに、道筋が出来たらしいの。これが役だったらしわ」

 「ふ~~~ん。ねぇパパ教えて」「ダディ僕も知りたいね」

 「食器類をキッチンに下げて座りましょう」「そうね明乃あけのちゃん」

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