第62話 さくたん大ピンチ

 俺はこのじょうじてキッチンへ入る。

 片付け大変だ。良く見えるな。 


 空自のくぅ~ちゃんが入口前に立ち、海自のかいちゃんワンがレジカウンターの入り口辺りに、海自のかいちゃんツーが窓辺まどべの辺りに立って、三方からの包囲を試みる様だ。


 窓辺まどべから目測で1mほどの位置にミス・テリーとかぴたんが。

 その後方、目測で1m弱の位置にりくちゃん、まもちゃん、さくたんと続く。

 ゆっくりと距離を詰めている。

 ソファーから立って出て来た明乃あけのちゃんとはじめちゃんが横に並んでいる。


 さてと、小声で話しますか。「桜花おうか、聞こえるかい」

 「はい、マスター」「今は普通に話して大丈夫でしょうよ。但し小声で」


 「わかった。で何、秘境ひきょう、さくたん部屋べやのけっけコレクションを大事に持って」

 っかかるなぁ~。「シミュレートを試して欲しいのよ」「何の」

 「量子探偵業務で得た、βベータ1の犯行現場のデータ、残ってるでしょうよ」

 「うん、ちゃんと保存してるよ」


 「このコレクションを見て思ったのよ、αアルファはあの部屋でかなりの時間、βベータ1をもてあそんだと思える」

 「私達みたいに愛がないっ」「ははははは」


 「それなら1本や2本、陰毛が落ちてるんじゃないかと思ったでしょうよ」

 「だから14年間、どこかに残ってないか、シミュレートしたい」「そう」


 「部屋全体や建具たてぐや畳の標準データを探して、摩擦や劣化の度合いはある程度再現できるけど、それでもけっけの具体的なデータは」

 ぽんぽん「これよこれ」「えっ、皆の使うのっ」


 「未来の嫁さんの為にも、この案件は必ず解決事案にしたいでしょうよ」

 「ん~~~、仕方ないなぁ~~~、何か、弱みをにぎられた様な気がするぅ~~~」


 「気の所為せい気の所為せい

 「わかった。私が指示するから、端末のカメラを近付けて、出来るだけ細かいデータ欲しいの」


 ぱさ。ぱさ。端末を手で持って、距離を調節する「こうかな」「もうちょっと近く」

 コントロールルームに入れば、桜花おうかの目となっている、規格外の高解像度カメラがあるのだが、フランソワーズとジムがいるから入る訳には行かないでしょうよ。

 「そう、手振れすごっ、ストップッ」



 「左10時の方向に海自のかいちゃんワン、右2時の方向に海自のかいちゃんツー、正面に空自のくぅ~ちゃん、どうしますかミス・テリー」

 「かぴたんはもうわかっているのだろう」


 「正面突破とっぱ、ですね。空自のくぅ~ちゃんは両脇りょうわきが凄く弱い、二人で両脇りょうわきを同時期に攻め、空自のくぅ~ちゃんが崩れ落ちた間隙かんげきを抜いて、その後方に出て全力離脱を行えば、包囲網ほういもうを抜けれます」

 「流石はかぴたん。初めから私の考えを読んでいた」



 「はい、終わり」「でもシミュレートしなくても、お掃除してたら残らないと思うけど」

 「そう、正にそこを試して欲しいのよ。量子探偵業務のデータから、犯行現場の人物を可能な限り消した3Dモデルは作れるかな」

 「それならさくたんとはじめちゃんが検証用に作ったのがあるよ」

 「今出せる」「うん、これだよ」


 おっ。ぉぉぉおおお~~~、拡大も縮小も視点も好きに変えれる。

 畳か。「ミス・テリーとかぴたんの話しだと、机の下とか。家具類無かった」

 「ないよ。押入れが並んで二つと、その隣には仏間で何も置いてないよ」


 「押入れか壁際かべぎわか、ん~~~」

 押入れなんかに入り込むだろうか。無いでしょうよ。いや決めつけはご法度はっと


 寝るだけなのか、殺風景さっぷうけいな部屋でしょうよ。これじゃ残らないかぁ~~~。

 しかし古そうな畳でしょうよ。あ~扉側の壁と畳の間に隙間があるでしょうよ。

 結構永く使ってるのか、これでしょうよっ。

 畳の入れ替えや、畳表の張替えは滅多にしないでしょうよ。



 「桜花おうかっ」おっと。

 「桜花おうか、この辺りの壁と畳の隙間に入り込んだけっけがの残るか。過去14年間に国内で発売された全掃除機のスペックで、吸い出されないで残る事があるか。コレクションのけっけを素にシミュレートして欲しいでしょうよ」


 「了解っ、一つは押し入れや畳の隙間にけっけが入り込む可能性。もう一つは、入り込んだ場合、14年間掃除機で吸い出されず、今も残留している可能性」

 「そうそれっ。どのくらいで出来る」


 「けっけはモデリング完了してるから、物理パラメータを与えれば直ぐに実行可能で数分で終わるよ」

 「もう一つはどうかな」

 「少し待って、今ネット上からデータ収集してるから。その後で掃除機の仮想モデルを作るから10分頂戴ちょうだい

 「早いでしょうよ」

 「当然、さくたんが造ってくれた、非公開だけど世界最速の電脳だよ、おっちゃん」

 「おうっ、頼もしい」


 おや、二人が追い詰められてるでしょうよ。「「にゃぁーーー」」

 あっ、突撃とつげきした。どうやら正面突破の様だ。

 ちょっと見ずらい、トイレ側に寄るか。冷蔵庫前なら見える。


 どうやら又、二正面にしょうめんで空自のくぅ~ちゃんの側面に回り、二人の両側面と背後はいごは置いといて、各個撃破戦法に出た様だ。


 つんつんつんつんつん。「「にゃっにゃっにゃっにゃっにゃっ」」

 「いやぁーーー、やっ、・・・くっ、くくっるし、・・・やめ、て、やめて」

 ぷっす。「「にゃぁーーーっ」」だだだ。

 どた。ばたばた。「ふぎゃぁーーー、ぎゃはははは、もうだめもうだめぇ~~~」


がらんがらんがらん。「遊んで来るっ」「遊んで来るぅ~~~」

 「やぁーーー、ミス・テリー、かぴたんっ、卵返してぇーーー」


 「娘子隊じょうしたいっ、くぅーちゃん置いて、早く追ってっ、二人だけで行かせないでっ」

 「「「「Yes, ma’amイエス、マアム!」」」」

 がらんがらんがらん。だだだだ。


 「ミス・テリー、かぴたんっ、卵返してぇ~~~」

 がらんがらんがらん。たたたた。「さくたんっ、待ってっ、行ってわダメっ」


 確かに護衛対象が増えるのは良くないでしょうよ。手数が減る。

 「そんなヒラヒラの可愛らしいメイド服でお外に出たら、虫が寄って来るじゃないっ」

 そっちかいっ。


 「私が追いますっ」空自のくぅ~ちゃん復活。がらんがらんがらん。たたたた。

 ジムが席を立つが、俺がかぶりを振る。まだ大丈夫だ。

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