第60話 秘境《ひきょう》のお宝

 「二人共これをどこで」

 「・・・さくたんの部屋」「えへへへ、こっそり入って探すの」


 ほぉ~~~、興味深い。「これは何のコレクション、ん?」顔を寄せて。

 「「秘境ひきょう、さくたん部屋べやのけっけコレクション」」

 「さくたんの部屋を隈無くまなく探すと出る」「違うのが毎回出るんだよ、パパさん」


 ぱら。ぱら。毛の下に名前が書いてあるね。

 明乃あけのちゃんはじめちゃん、まもちゃんりくちゃんはもとより、娘子隊じょうしたいの皆だけでなく、女子寮を訪れたであろう女性の名前がずらり、フランソワーズもある。

 いくらフランソワーズでも、他国の諜報員をまねきいれちゃダメでしょうよ。


 侵入者を力ずくで退しりぞける事も考慮こうりょして、理想に満ちた若手警官を要請。

 エントランスの警察詰め所に配置してもらったのが、裏目に出たか。

 フランソワーズの色香いろかまどわされたな。


 婦警ふけいに代わってもらうと、・・・ジムの餌食えじきになる。

 だめじゃん。桜花おうか何故なぜ、侵入を許したのか。

 ん~~~、後で聞いてみるか。これはどうしても二人に相談して、説得しないと。


 「ミス・テリー、かぴたん、どうやって誰のか特定したのかな」

 「簡単」「うん、一緒にお風呂入ってるから、しっかりと見てるよ」

 なははは、なるほど、子供の観察眼かんさつがん邪念じゃねんが無く鋭い。

 「ほぉ~~~凄い観察力だ」「えへん」「ふんっ」


 !!!、ちょっと待てよ。これは今、頭を悩ませている問題解決の糸口になるでしょうよ。

 もしそうならαアルファΔデルタが、βベータ1の事件に関与したと言える様になる。

 少なくともかなり強力な状況証拠になるでしょうよ。


 「ミス・テリー、かぴたん、このコレクションは」

 「「秘境ひきょう、さくたん部屋べやのけっけコレクション」」こだわるねぇ~。


 「この秘境ひきょう、さくたん部屋べやのけっけコレクションの中の秘宝ひほうをどうやって探したか、こっそり教えてくれないかな」

 「どうするミス・テリー」「ん~~~、今回だけ」「有難う。それでどやったの」


 「さくたんがいない時に、虫眼鏡と小さいコロコロを持って行くの」

 「そう、ベットの下が有望ゆうぼう」「後ね、机の下とか、壁際かべぎわとかだよ」

 「お掃除はしてるでしょうよ」「してる」「でもクローゼットの奥とか割とあるよ」

 つまり、掃除をしていても、家具の下や壁際かべぎわ、手が届きにくい場所に陰毛いんもうなどの生態情報が残留している可能性がある。



 「作った本人、マスターに代替品があるか聞いてみてわ」

 「海自のかいちゃんツー、それね」「海自のかいちゃんツー、違います」


 あ~、呼ばれそうな予感。「おっちゃん、こっち来て」

 来たぁ~~~、食べてるでしょうよ。


 がた。「ぁ~ちち」「パパさん持てい行っちゃだめ」

 「はい、何でしょうさくたん。ミス・テリー、かぴたん、ちょっと開けて」

 どたどた。「「あああぁぁぁ~~~」」「かぴたん、お小遣こづかいは」「ばっちしある」



 「でぇ~、何」皆して俺を見る、何故なぜ

 「マスター、このままでは、やはり給与を差し押さえる事になるわ」

 「はじめちゃん、美味しくない、良い素材を集めたのになぁ~」


 「いえ、大変美味しいのだけれど、商品化するには、原価がかかり過ぎなの。お砂糖はまぁ良いとしても、特に蜂蜜が高価で、しょ、マスターが作った量の半分にしても、思惑おもわくのワンコインどころか、1000を超えてしまうの。これでは15時から17時台の学生さんに提供するには高すぎるわ」


 何故なぜか3人が隣に移って、真ん中の席でにこにこしながら、まもちゃんとりくちゃんがクレープを頬張ほおばっている。

 何時いつの間にれたのか紅茶が、娘子隊じょうしたいの3人が座る入口側の席も、真ん中の席にも、カウンター寄りの明乃あけのちゃん達が座る席にもある。


 ついでに俺のもれて欲しかったでしょうよ。

 桜花おうかの端末を探して見渡すと、まもちゃんの横に置かれているでしょうよ。


 「まもちゃん、計算結果残ってる」「うぅうぅうぅ」紅茶紅茶。

 「はい」「はいおっちゃん」さくたん経由けいゆ

 立ってないで、まもちゃんに詰めて貰って、座れば良いでしょうよ。


 「さくたん、このノートをちょっとあずかって」「「ぁ~」」

 「何おっちゃんこれ」「見ないでね」


 あ~、俺がこれから上げるであろう功績こうせきに対するご褒美ほうびだから、一番高そうなのにしたでしょうよ。

 経費で落とそうと思ってたし。

 ん~~~、ネックは和三盆わさんぼん百花蜜ひゃっかみつか。


 「どうかしら、質を落とさずに甘味かんみ代替品だいたいひんは無いのかしら」

 「さくたん、返して」「さくたんのはないから」「私の」「しっ」「あっ、ごめん」

 ちょっと、ミス・テリー、かぴたん、狭いから。俺とジムを押しのけて何。


 「と言われても、取り寄せて試さないと、お砂糖はともかく百花蜜ひゃっかみつは、そこの土地にある花々から集める物だから味や香りが変わるでしょうよ」

 「では、差し押さえの方向で」

 「ちょーと待って明乃あけのちゃん、今考えるでしょうよ」


 「ほっほぉ~~~ん、なぁ~にっかなぁ~」ぱらり。「みっ、かっ」ぷるぷる。

 「ミス・テリー、あっち行ってあっち」「わかってる」

 そぉ~~~。ん、又どっか行くの二人共。


 「明乃あけのちゃん、利益率は度ぐらい」

 「学生さんをターゲットにして、原価と消費税がもらえれば」

 「売上だけでいいの」「そうです」「ん~~~、何で明乃あけのちゃん」


 「他国の諜報員が四六時中しろくじちゅう入り浸ってる状況を、変えたのっ」

 「良いじゃない。私とパパの仲だし。それに、私達がいればお隣の工作員は簡単近付けない」

 「わかっているわ。でもねフランソワーズ、ここは何の変哲へんてつもない喫茶店じゃないとだめなの。さくたんもミス・テリーもかぴたんも、特別な力なんてない、ごく普通の子供達でないといけなの。一般のお客がいないのは困るの」

 「ジムも私もわかているわ。だけど、あちらにそんな理屈りくつは通じない」

 あ~、まぁ~そうな。しかし、ソースをこれだけ絞ると。



 「まもちゃんっ、これ見てっ」かちゃ。「うぅう、ぶっ」

 「うぎゃっ、まもちゃん汚い、食べ終わっててよかった。何吹いてるの」

 「うぅぅ」「はい、まもちゃん僕のハンカチ」

 りくちゃん自分のハンカチ持ってったの。

 だから見ないでて言ったでしょうよ。

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