第54話 万感の誓い

 「・・・そんな事されたら、家賃も支払えなくなるでしょうよ」


 「ミス・テリーとかぴたんのすすめもありますし、全額しょ、マスターのおごりになりましたから、皆でいただきましょう」

 「「「「「 「「「 「YEAH~~~」」」 」」」」」

 「パパ有難う」「サンキュー、ダディッ」


 「明乃あけのちゃん、給与を差し押さえるなら、全部俺のでしょうよっ」

 「皆に振舞ふるまうのが嫌なら、そうなるのかしら。でもさくたんが食べてない様ですし、ミス・テリーとかぴたんも食べたいと言ってますし、何よりフランソワーズが食べた事ありげなのが気にさわるの」


 「おっちゃん、私食べさせてもらってないんですけどぉ~」「だって家賃が」

 「皆で食べて、ミス・テリーとかぴたんの評価通り美味しかったなら、今回に限り経費で落としてあげます」


 「パパ、大丈夫よ、私は食べた事、あ、る、か、ら。それに逃げ場はないみたいだし。YEAH!GOGOGO!!!」

 「むぎっ」YEAHじゃないよ、挑発ちょうはつするなよフランソワーズ。

 「ジム、はなしてくれ」「OK」家賃の為にも選択肢はないでしょうよ。


 「じゃぁ~、何人いるんだ。さくたん、ミス・テリー、かぴたん、娘子隊じょうしたい5人、はじめちゃん、明乃あけのちゃん、フランソワーズにジムか」

 指を折ると、3+5+1+1+1+1、12人か。

 添え物は納品されてるから何とかなるでしょうよ。


 俺の分も入れると13人分か。苺1パック7粒が4、28粒。

 2粒余るから、俺の分を減らして、さくたん、ミス・テリー、かぴたんを3粒にするか。

 バナナは適当に輪切りにして分ければ良いか。

 皮を食べるかどうか聞いた方がいいな。


 材料を計算して計量しないと、生地を作れるか分からないし、生地こねるのは大仕事でしょうよ。

 おっ、ジムに手伝わせよう。

 ソースも俺が作ってると遅くなるな、誰かに手伝って貰うのが良いでしょうよ。


 「ジム」「何だいダディ」「一人じゃ手が回らん、生地作りを手伝え」「OK~」

 「皆で今テーブルに出てる物をかたずけて。はじめちゃん、書類を隣に持ち込んでいいかな」

 「ええ、かまいませんが、混ざらない様にして下さい」「有難う」


 がやがやばたばたと片付けが終わった。

 コントロールルームへ書類を持ち込んだ時、桜花おうかにぶつぶつ文句を言われた。

 電脳にクレープを食べさせる方法は、如何いかにさくたんでも無理でしょうよ。


 今の世界情勢では、人類と科学が進歩して、桜花おうかと一つのテーブルを囲める日は来ないでしょうよ。

 「ん~~~、じゃ、私がご飯食べれて、うんことかしっことかしてぇ~、・・・えっちとかも出来る様になったら、おっちゃんどうするの」

 「まかり間違って、そんな世界にいられたら、俺が桜花おうかを嫁さんにするでしょうよ」


 「わかった。約束だからね、おっちゃん」

 「神に誓って」「だめっ」「なんでぇ~」

 「私に誓って」「わかたでしょうよ」「まじっ」

 なはははは、俺もそんな世界を見て見たいよ。


 それはこの子も同じ、デジタルの人格データは劣化しない。

 しかし、物理的なデバイスはそうではないでしょうよ。

 自力で自身の体を造れない桜花おうかは、俺達と共生きょうせい関係にある。

 この子が生き残る為にも、熱望ねつぼうせざる得ないでしょうよ。

 願望がんぼうたくすか。


 よっと。「ん、おっちゃん。片膝かたひざついて何すんの」「プロポーズでしょうよ」「えっ」

 「桜花おうか永久とこしえうるわしき姫。我が心は、幾千いくせん朝焼あさやけを見つめ、幾万いくまん烈日れつじつさらされ、幾億いくおく星月夜ほしづきよに鈍く白く浮き出る骨になって」


 「そんなに長く骨だって残りません~~~」「聴くでしょうよ」「はぁ~い」

 「うぅんん、骨になってこの身がて様とも、恋いがれ、愛する想いが色褪いろあせる事は無いのです」

 「それ、明乃あけのちゃんやフランソワーズの時の、予行演習よこうえんしゅうじゃないよね、おっちゃん」


 うたぐり深い電脳でしょうよ。

 「何で明乃あけのちゃんやフランソワーズ」「ふん」

 「聴いてくれるかな」そのころには俺、死んじゃってるでしょうよ。「じゃ続き」


 人類どころか、ここにつどっている人達の事すら、どうすればいいのか。

 寿命も足りないでしょうよ。

 「今日この日、この時のえにしの誓いは、今は目にする事のかなわぬ地、千歳ちとせのち邂逅かいこうとせず、運命と成すのです」


 仮に不老不死だった場合、権力構造は固定され、未来永劫みらいえいごう支配者は支配者、貧民は貧民のまま。

 死だけが解き放ち、人類にやり直しの機会をもたらす。

 「おっちゃん、ラプラスの悪魔の信者」「桜花おうか」「聴くもん」

 「嗚呼ああ桜花おうか姫、私の心からの変わらぬ愛を受け入れて下さい」


 何より地球は有限だ。

 けもの、猿とは違うと言いたければ、縄張なわばり争いなどナンセンス。

 「嘘っぽい」「そうかな」


 科学は諸刃もろはつるぎ、過去のあやまちを記憶し、滅びを回避する為の、知性と寿命をもった存在がいて欲しい。

 「そうだよ。ご飯食べれないの分かってるし、うんこもしっこも出ないし、えっちも出来ないしっ」

 「聞いてたでしょうよ。はるか未来で出逢う運命、とする契約と誓いでしょうよ」


 それでちょっぴりでも、人類の存続を望んでくれれば。

 「非科学的、でもないかな。DNAの組み合わせが如何いかに多くても有限」


 「だろう。宇宙人と地球人の組み合わせは、5千年で宇宙人と同じ性質を持つバ○ル二世が出たでしょうよ」

 「そんなマニアックなアニメを引き合いに出すなっ。ぅ~~~、桜花おうかは受け入れます。絶対来てよ」


 「じゃ、人類が存続する様に協力してくれ」

 「ここまま進めば、必ず滅びるけど、仕方ないなぁ~。でも愛を誓ったけど、浮気大前提だしっ」


 「俺は桜花おうか姫、ひ・と・りに愛を誓ったでしょうよ」

 「今から人類が存続すると言う事は、そう言う事でしょっ」


 「そうかな、俺の心は桜花おうか一筋でしょうよ」「嘘つきぃ~~~」

 「桜花おうか、さくたん、ミス・テリーとかぴたん、皆を助けてあげてくれ、それが出来るのは、人以上の知性を持つ君だけだ。それに桜花おうか自身が未来を生きる為にも」


 「幾星霜いくせいそうのち、遠い遠い星の天空の地でお待ちしております。それまでの間の分、取り返すんだから、寝かせて上げないんだからね」

 未来の俺によく似たやつ、頑張れよぉ~~~。


 「あっ」「何」「サーガ、書いといて」「私が書くの」「俺、死んでるし」

 「むぎぃーーー、しんどい事ばかり押し付けてぇーーー、明乃あけのちゃん怒るのわかるっ」


 こんな感じで。さて、戻りますか。

 家賃が確保できないと早死にするでしょうよ。

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