第52話 紙の伝票

 一件落着いっけんらくちゃく、おっ、時計は正午をとっくに過ぎてる。

 「さっ、遅くなったけどお昼にしようか。二人共、いつものパンケーキ、食べるでしょうよ」


 「う~ぅ~ん、この前ちちが食べてたやつ」

 「うん、かぴたんも、あれが良い、すっごい良い匂いなんだよ」


 おやぁ~~~。「だからパンケーキ」「違う、薄かった」「うん、薄かった」

 あれれぇ~~~。「あっ、あれね、あれは上手く膨らまなかったやつでしょうよ」

 どやどやどや。まずい、皆集まって来たでしょうよ。


 「かった。じゃ、膨らまないパンケーキ」「かぴたんもぉ~~~」

 ちょっ、ミス・テリー、かぴたん、ちょっと待って。


 「ねぇ~。ミス・テリー、かぴたん、それってクレープじゃないの、生地を薄ぅ~く焼いて、折りたたんでなかった」

 おやめになってフランソワーズさん。


 「そう、それに白い甘いのかけて」「それそれ、かぴたんチョコソースが良い」

 「ダディ、あるじゃないかスペシャルメニュー」

 「パパ私達、さっきからずぅ~~~と、注文してるんですけどぁ~~~」

 ジムッ、お口にチャックしてろよ、フランソワーズ、メニューにはないでしょうよ。


 「ほっほぉ~~~ん。新メニューなのかしら、しょっ、うぅんマスター」

 「明乃あけのちゃん、ほらぁ~売上が」


 「ミス・テリー、かぴたん、それは何時いつごろの事かしら」

 はじめちゃん。ミス・テリー、かぴたん、察しておくれ。

 「3日ぐらい前」「うん、皆が忙しくてお出かけして、お店を閉めた日だよ」

 うがあ~~~、正直な良い子達だよ、まったく。


 「あ~、娘子隊じょうしたいの皆が、駐屯地に行く日が重なった日ですかねぇ~。今後重ならない様にしようって、話してたんですよ。ねぇ~まもちゃん」

 りくちゃん、それはきっと違う日じゃないかな。

 「お~、ありましたねぇ~」


 「私とはじめちゃんが、コントロールルームで、桜花おうかと色々してて、ミス・テリーとかぴたんがお店で宿題をしてた時かな」

 「だとしたら、私が報告をあげに行った日だわ。つまりお店にはマスターだけ」

 明乃あけのちゃん、パンケーキ、パンケーキ生地にふくらし入れるの忘れたのよ。


 「りくちゃん、仕入れ伝票持って来て」りくちゃん、御慈悲を~~~。

 「Aye,Aye, ma’amアイ、アイ、マアム

 こっ、このままでは露見ろけんしてしまうでしょうよ。なんとか。


 「さくたん、パンケーキ作ろ」

 「Ayeアイって、りくちゃん陸自でしょう」聞いて。

 「気にしない気にしない、はいはい、さくたん前を御免ねぇ~~~」たたたたた。

 りくちゃんがキッチンへ。いかん、いかんですよこれは。


 「私ばかり働かせるマスターは、原価を無視してルーズな仕入れをするきらいがあるから、面倒臭めんどうくさがられても仕入れ先から紙の伝票を出してもらっててよかったわ」

 態々わざわざ紙の伝票置いて行くのはそう言う事か。

 ぐそぉ~~~、デジタルなら桜花おうか懐柔かいじゅう、じゃなくて説得して書き直してもらえるのに。


 がたがたがた。「え~と確か食器棚しょっきたなの引き出しに、あった」

 もうこうなったら、たかくくるしかないでしょうよ。


 たたたたた。「ほぉ~い、所長、どいてどいてぇ~、はい、明乃あけのちゃん」

 壁掛けモニターの方へ追いやられた。

 「有難う陸自の、乃睦のりくちゃん、い、言いにくい」「もういいですよ」


 「私達の留守を見込んで、何をしていたのかしら」少しぐらい良いでしょうよ。

 「普段ふだんろくに働かないのに」ぐはっ。だ、大丈夫だ、耐えられる。


 ぱらぱら、ぱらぱら。「この辺りかしら」

 「どれどれ、おっちゃんは何を隠しているのかなぁ~」


 「これはいつもの生果せいか店ね、バナナにいちご、なっ、何この高いのっ」

 「バナナの皮も食べれる」「うんうんいちごも大きくてめちゃめちゃ甘いんだよ」


 「しょっ、マスターッ」

 「明乃あけのちゃん明乃あけのちゃん数量見て、バナナ2本でこの値段だよっ」

 「えっ、ふさじゃなくて、・・・2万越え」

 「確信犯かくしんはんですね、お店に言って商品名を書かない様にして貰ったんですよ、きっと」


 「ミス・テリー、かぴたん、こ、これを、食べれたのかしら」

 「なかなか作ってくれなかったけど食べれた。もう元の体に戻れない」

 「お砂糖なんていらないぐらい甘くておいしいだよ。かぴたんもいけない子になっちゃった」


 「そう、良かった。それなら私が額に汗して働いたかいがあったのね」

 「おっちゃんっ、私、食べてないんですけどぉ~」

 「あ~ほら、さくたんいそがしそうだったし、仕入れも多くないでしょうよ」


 「そう言えば今朝けさ、ミス・テリーとかぴたんを学校へ送って行く時、

生果せいかさん来てたよね。空自の空ちゃん」

 「違います、空自の空ちゃん違うから、そうそう随分今日は早いなぁ~と思って、何時いつ挨拶あいさつしてくれるのに、すごく急いでるのか会釈えしゃくだけでした。ねぇ~まもちゃん」

 「うん、喫茶店から出て来て、そそくさと逃げる様に、ささぁ~って行っちゃた。私は今日、メイドさん当番だから、お店の準備に入ったけど、何もなかったと思う」

 普通にって、言いたでしょうよぉ~、たっちゃぁ~ん。


 「ほっほぉ~~~ん。逃げる様に、挨拶あいさつもなく、礼儀正しい人だったと記憶しているわ。何時いつもお昼過ぎなのに今日は、朝からですか」

 ぱさ、ぱら、ぱら。「マスター、今日の伝票がここにはありませんね」

 「あっ、明乃あけのちゃん、ごっ、御用聞ごようききに来ただけで、ほら、たっちゃん、生果せいかの人、二人目が産まれたって言ってたでしょうよ。お金がかかる、頑張がんばらないとって、言ってたし」


 「パァ~パ、どうして直ぐにばれる嘘つくの」フランソワーズ、黙ってっ。

 「ジムッ、マスター押さえて」「OK、マイハニー明乃あけの

 がしっ。「おいっ、ジムっバカっ放せよぉ~」「ダディ、あきらめるんだ」

 「さくたんっ、冷蔵庫チェックっ」

 「Aye, ma’amアイ、マアム」たたたたた。


 がた、ごぉーーー。「!、何っこれ、苺、大きくて綺麗。伝票も一緒に入ってる。何この金額っ」

 「さくたん伝票持って来て、まもちゃんりくちゃん、中の物をカウンターに並べてくれない」

 「Yes, ma’amイエス、マアム」たたたたた。

 「Aye, ma’amアイ、マアム」たたたたた。


 たたたたた。「明乃あけのちゃん、冷静に、冷静に、はい。おっちゃんっ分かってる」

 がさ。「・・・ばっ、バナナ、十本、9万8千」がた。

 「Oh!マイハニー明乃あけのっ」「「「「「明乃あけのちゃんっ」」」」」

 「ちょっと明乃あけのちゃんっ」

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