第51話 先の未来を生きる子供達

 なははは、ジムが回り始めたぞ。「「きゃっきゃっきゃっ」」

 学校でこれしたら、人気出るはずだ。

 俺もこう言う遊びは、嫌いじゃないが、一歩間違えれば大怪我けがになる。

 だが緊急時に二人をかばう為にしては、配置がソファーにかたより過ぎでしょうよ。


 「「きゃっきゃっきゃっ」」足をばたつかせて、ご機嫌きげんだなぁ~~~。

 どんっ。「「「「「「「「「きゃっ」」」」」」」」」


 なっ、入り口側の壁に、猛烈もうれつな勢いで何かが飛んで行ったぞっ。

 びゅーん、どんっ。俺の横をする抜けて、トイレの扉を直撃したっ、何だっ。


 「「きゃっきゃっきゃっ」」!靴っ。

 足をばたつかせているのはこの為、無差別爆撃ばくげきっ。


 「おっ、ジムっ、めっ」ばしん。「痛っ」顔面直撃、目に当っていたら。

 めさせないと、学校で怪我けが人が出たら大変だ。

 ここぞとばかりに工作員保護者が騒ぎ立てる。


 それはまずい。ここの施設は、そう簡単に移設出来る物では無い。

 仮にそれが出来たとしても、桜花おうか自我じがにどんな影響を与えるか予想できないでしょうよ。

 何より、二人の罪悪感を利用して、心理攻撃を仕掛けて来るでしょうよ。


 さくたん、ミス・テリー、かぴたん、3人、いや他の皆にもこれ以上ストレスが増すとこの組織が崩壊ほうかいしかねない。

 量子探偵事務所NTRと言う組織は、現在3人に対して、皆が善良ぜんりょうである事を大前提に活動しているのだから、亀裂きれつは絶対に避けねば。


 「ミス・テリーッ、かぴたんっ、めなさいっジームっ、やっ」

 「「きゃっきゃっきゃっ」」ばしん。「いたっ」何で俺だけ。

 いや、女性陣に当ってたら洒落しゃれにならん。


 「ジーーームっ、めろっ、まれっ」

 「「きゃっきゃっきゃっ」」「Oh!、ミス・テリー、かぴたん、終わりだよ」



 青い瞳の巨漢きょかん

 いにしえの人は、鬼と言うに違いない。

 右に左に少女達を小脇こわきに抱えるさまは、人さらい。

 旋風せんぷを巻き起こすかの様に、ぐるぐる、ぐるぐる。

 少女達は朗笑ろうしょう明朗めいろう、にこにこ、大はしゃぎ。

 無垢むくで、純粋じゅんすいで、躊躇ためらわない。

 いたわりも、真理しんりも、行動も。


 けがれて、にごって、いつわる俺がさとさねば。

 こぉ~、そこはかとなく矛盾むじゅんを感じるが。


 「ミス・テリーっ、かぴたんっ」だだだだだっ。あっ、逃げた。

 ばふん。「二人共」

 「ぅ~~~明乃あけのちゃん、ちちが」

 「明乃あけのちゃん、パパさんが」


 りにって、明乃あけのちゃんにしがみ付くとは。

 「所長」「明乃あけのちゃん、してはいけない事は、ちゃんと言わないと」

 「後で私が」「俺が言うから、こっちに」「ダディ、す」「ジム、後で話そう」

 「ミス・テリー、かぴたん、こっちに来て、俺の話を聞いてくれないか」

 「さっ、二人共行きましょう。大丈夫よ」「「ぅ~~~」」すたすたすた。


 明乃あけのちゃんにまとわり付きながら、ずとやって来た。

 そんなにこわいかな。取りえずしゃがんで目線を合わせよう。


 「ミス・テリー、かぴたん、二発直撃だ。一つはもう少し下だったら目に当ってる、最悪見えなくなっていたかも知れない」

 「「御免ごめんなさい」」


 「俺もこんな遊びは好きな方だけど、スリルがあってスピードがある遊びは、まぁ~だいたい大きな怪我けがをするでしょうよ。飛行機、だったかな、学校でもしてるのかい」

 「ジャングルジムが来るとだいたい」

 「ジャングルジムさん不審者だけど人気あるから」


 不審者の認識があるのに、子供達に接触させているのか。

 学校の対応にも問題があるでしょうよ。現状、こちらとしては有り難いが。

 「二人には、さくたんも含めて想像力のある人になって欲しいでしょうよ」

 「エッチな事は明乃あけのちゃん達から」「うん、いっぱい教わってるよ」

 「ちょっ、ミス・テリー、かぴたん」

 あたふたする明乃あけのちゃんの手が、まとわり付く二人を更に引き寄せる。


 まっ、男の俺に出来ない事があるのは、差別ではなく事実だ、ここはさらっと。

 「あっ、あのね二人共、正しい知識を知っておくのは、必要な事なのよ」

 ぬふふふふ、見上げると又明乃あけのちゃんの目が泳いでる。おもろいな。


 「それも含めてかなしいけど、人がずっと生きられない事はわかるでしょうよ」

 「エゲレスのおばちゃんが死んだから」

 「かぴたんもおじいちゃんが、動かなくなって、お人形にんぎょうみたいになった」


 「そう、だからさくたんやミス・テリー、かぴたん、俺達より先の未来を生きる子供達には、俺達が失敗した事や大怪我けがをする様な大事な事を教えて、同じ失敗を繰り返さない様にして欲しいけど、想像が出来なかったり、出来ても自分は安全な所にいて、他の人に危険な事をさせて自分だけが得をしようとする、残念だけど世界にはそう言う人がいっぱいいる」

 「もうしない」「かぴたんも」


 「それも一つだけど、本当にめるのかい、飛行機面白おもしろいでしょうよ」

 「でも、学校の友達が怪我けがする」「かぴたん、お目目はあげれないし」


 「幸い、まだ学校で怪我けがをした子、いないんでしょうよ。ジムが子供達に怪我けがさせる様な事はしないだろうし」

 「of courseオフ コース、僕は」「ジム、後にしてくれ」

 「何故なぜだよ皆もダディも」「ジム、後でフランソワーズも一緒に話しをしたい」

 「ダディ、後でだね」「あ~旧友が不審者扱いされていては、俺が困るでしょうよ」

 明乃あけのちゃんの後ろにいても、ジムとは会話が出来る。

 やはりイケメンの大男だ。


 「でだ、ミス・テリー、かぴたん、今日失敗したでしょうよ。これを忘れないで、次に何かする前に想像して友達が怪我けがをしない様にすればいいと俺は思うのよ」

 「どうすればいい」「かぴたん良く分からないよ」


 「ん~~~、学校の友達と話し合いは出来る」「「うん」」

 「じゃぁ~、皆で出した事、無理に一つにしぼる必要はないから、さくたんや皆に相談すれば、出来ない事はできない、出来る事はきっと手伝ってくれる」


 「所長」「予算よろしく頼むよ明乃あけのちゃん」

 「又私ばっかりぃーーー、分りました。二人共、まずはお友達とお話しをして来て頂戴ちょうだい

 「かった」「やふぅ~~~飛行機ぃ~~~」


 「はい、二人共靴をいて」「thanksサンクス」「さくたん有難ありがとう」

 俺は立ち上がり、さくたんに場所をゆずる。

 あ~どきどきしたぁ~。

 二人が泣き出したら、どうしたら良いか分からないところだった。

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