第50話 Go Engage《エンゲージ》 !

 「ミス・テリーとかぴたん、北海道ほっかいみち乃睦のりく3等陸曹っ、帰還きかんしましたっ」

 「たっだいまぁーーー」「帰ったぁ~~~」

 「所長とジムの絡みは何処ですかっ。男と男の絡みは何処ですかっ。どこっ、どこっ、どこぉーーー」



 君が飛び込んで来た。

 君が乱暴に扉を開けて飛び込んで来た。

 髪を湿らせて、毛先を肌に張り付けて。

 息を弾ませ、瞳を輝かせ、ほほ紅色べにいろに。

 好きなものを、恋するものを、愛するものを、追い求め、探し求める。

 探究者の君を止める事は、何人なんぴとにも出来はしない。

 情熱のつばさを広げ、神速しんそくの速さでかけるのだから。


 ミス・テリーを右の小脇こわきに、かぴたんを左の小脇こわきに抱えて、大股で立ち、男と男のからみを探し求める。

 その絵面えづらはないでしょうよ、陸自のりくちゃん。


 「ジャングルジム、ちぃ~すっ」「あっ、りんごさん、Yeah~~~」

 「おっ、りんごさんちぃ~すっ」「ジャングルジムさんもYeah~~~」



 「走って来るだろうとは、思っていたわ」

 「ええ、私もよはじめちゃん、でもこの光景は想像できなかった」

 「陸自のりくちゃんすごっ、どこからそんなパワー出るの」


 「オ~~~、ミス・テリーかぴたん、僕はJamesジェイムズ、ジャン」

 「あのね、かぴたん、ミス・テリー、ファミリーネームはAppletonアップルトンだけど、りんご」

 「ジャングルジム」「ミス・テリー僕は」

 「りんごさん」「かぴたん、りんごじゃ」

 「ジャングルジムッ」「そ、そうだよ~ミス・テリー、僕はジャングルジムさ」

 「りんごさんっ」「うっ、うん、かぴたん、りんごさんだよ」



 「陸自のりくちゃん、訓練の時もそのぐらい気合入れなさいよぉ~」

 「まもちゃんっ、同じ部隊章付けてるのにっ、陸自のりくちゃん違うからっ」

 「だぁ~て、言い難いんだもぉ~ん」


 「ジャングルジム、Yeah」「りんごさん、Yeah~~~」

 「ミス・テリーYeah」「かぴたんYeah~~~」

 「りんごさんYeah」「ジャングルジムさんもYeah~~~」

 「ミス・テリ~~~Yeah」「Oh、Cuteキュート、かぴたんYeah~~~」



 ジムを俺の左に押して、前に出てジムに並ぶ。

 「所長っ、ジムっ」「はいっ、何でしょう」「マイハニー乃睦のりく何だい」

 「ジムだけしか、名前で呼ばないんだからぁ~」「今夜は僕と」

 「それはいや」「Oh」


 「それより早く早く続きを、男と男の絡みを、んずほぐれつ、あんな事やそんな事まで絡んじゃって下さいっ。ぐぅへへへへへ」

 「いやだよ、無理だよ、終わりでしょうよ」


 「ぇぇぇえええ~~~」「僕は」

 「ジム、お口にチャック」「ダディもかい、何故なぜだよっ」


 「ミス・テリー、かぴたん、終わりなんだって」

 「もっと飛んでたい」「かぴたんもびゅーーーてもっとしたいぃ~~~」

 その瞳の輝きが、らときらめく。

 「はい、ミス・テリーかぴたん降りて」

 すと。すと。「面白かったのに」「かぴたんも」


 どん、ばん。ひざからくずれ落ち、床に両手を突き項垂うなだれ、しずくが落ちる。

 うそでしょうよ、りくちゃん。


 「あ~、ちちりくちゃん泣かした」

 「パパさんがりくちゃん泣かしたぁ~」

 どた。「ミス・テリー、かぴたん、俺悪いの」

 「「りくちゃん泣かした」」どたどた。ハモらなくてもいいでしょうよ。

 だだだだだだ。ちょっ、ミス・テリー、かぴたん、どこ行くのぉーーー。


 前まで来たのはいいが。あっ、さくたんっ。あれ。

 駆けて行ったミス・テリーとかぴたんの方を見ているよ。

 助けてくれても良いでしょうよ。

 とっ、とにかく陸自のりくちゃんに立ってもらわないと。

 取りえずしゃがんで目線が合う様にしよう。


 「「ジャングルジム、ジャングルジム」」「OH!ミス・テリー、かぴたんっ」がばっ。

 「ジムゥ~、そんなに強く抱き締めたら、二人が息できないでしょう。しゃがんでも、体が大きいのよ」



 「えっと、りくちゃん」「うっ」

 女の子が涙流すとか、・・・反則でしょうよ。

 上げた顔がべちゃべちゃ。

 仕方ない、幸い今日はハンカチを使ってない。


 「「ぶっはっ」」「大丈夫かい」

 「NOノー problemプロブレム」「うんっ、大丈夫っ」



 「はい、大丈夫、洗ってるし、使って無いから」「あいがと、ぅぅぅううう~~~」

 定番で鼻かむところでしょうよ。

 「ちぃーーーーーー」やっぱり。「はい」そのまま返すの。


 「ジャングルジム立って、飛行機やって」「ここでかい」「だめよジム」

 「やってやってぇ~~~」「かぴたん狭いから」「そうよぉ~二人共、お店の中は」



 「取りえず立って」「からんで下さい」

 「いやだよ」「ぴぇぇぇええええーーーーーーーーー」ぱしっ。ハンカチ取られた。


 「「やってやってやってぇ~~~」」

 「う~~~ん、少しだけだ」「ジムっ、だめよっ」「「やふぅ~~~」」

 「僕が二人をはなす事は死んでもない。でもしっかりつかまって」



 「おっちゃん、もう一回ぐらいやってあげなよ」

 「そうですよ。それで陸自のりくちゃんの機嫌きげんあおるんだから」

 取り囲む女子群が俺を責める。

 「乃睦のりくっ、北海道ほっかいみち乃睦のりくですっ。ちぃーーー」


 「ジムっ」「フランソワーズ、怪我けがをさせたりしないよ」

 「バカじゃないのっ、はなさないと逃げれないでしょっ、二人を安全に降ろして、後は逃げる時の盾になって死になさいっ」

 「わ、わかったよフランソワーズ」



 「私は反対です」「でしょぉ~よ」「いえ、タキシードがこれ以上汚れるのは」

 「待って明乃あけのちゃん、出来れば私とさくたん的には、別のポーズでデータが欲しいわ」


 「ジャングルジム、死んじゃだめ」

 「ジャングルジムさん、いなくなっちゃだめだよ」

 「あははは、二人共大丈夫よ。ジムの筋肉は20ミリ弾だって跳ね返すわ」

 「いやフランソワーズ、20ミリとかじゃなくて」



 何っ、はじめちゃん。「さくたんも」「うんうんうん」

 「あごくいっ、あごくい希望」何言ってるのりくちゃんっ。

 「「「ぉぉぉおおお~~~」」」娘子隊じょうしたい全員かいっ。


 「じゃ筋肉で止めて」

 「・・・努力するよ。ミス・テリー、かぴたんっ、準備はいいかい」

 「「OK!」」「じゃぁ~離陸だ」「本当、めなさいジム」



 駄目に決まってるでしょうよ、ねっ明乃あけのちゃん。

 「さくたんがそう言うなら」いやだっ。


 「ダディ、壁かソファーに寄って、場所を空けてくれないか」

 「分かったっ」ぉぉぉおおお~~~、ジムっ、助かったでしょうよ。

 これ幸いと、振り向く勢いと共に立ち上がり、我ながら華麗かれいなターンを決めた。



 「ジム、ミス・テリーとかぴたんを小脇に抱えて、何するつもりだ」「えっ」

 回転の結果、ソファー側に寄った位置になった為、陸自のりくちゃん、じゃなかった乃睦のりくちゃんにお尻を向ける事にはならなかった。

 視界が開けたであろう、未だひざを着くりくちゃんが声を発した。


 「「きゃっきゃっ」」「二人のリクエストで飛行機をするのさ」「飛行機?」

 「緊急配備っ、所長っ、キッチン側に行って両手を広げて下さいっ」

 ぶわっと右側に風圧を感じると、りくちゃんが耳元でげきを飛ばす。


 「りくちゃん、耳、耳がぁ~~~」「早くっ」「はいはい」どたどた。

 「これはっ、総員配置について下さいっ」「まもちゃん何」「何事」

 「はじめちゃん、明乃あけのちゃん直ぐにわかりますっ。テーブルの前に立って両手を広げて、フランソワーズも」

 「私も」「ここの食器、高いんですよ」


 俺は、ソファーの前にいる、さくたんとフランソワーズの前をすり抜け、言われた通りキッチン前で両手を広げる。

 明乃あけのちゃん、はじめちゃん、フランソワーズ、さくたん。

 まもちゃん、りくちゃんを含めた娘子隊じょうしたい

 女性陣全員がソファー前のテーブルを隠す様に、ずらりと並び両腕を広げている。

 ミス・テリーとかぴたんはジムをき付けて、何をするのかな。


 「速度マーク7、コースオールグリーン。Ma’amマムテリー、Ma’amマムみずね、指示を」

 「さくたん、準備よろしい」「まもちゃん、いったい」

 「「Go Engageエンゲージ !」」

 「ねぇ~、りくちゃん」「来ますっ」

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