第49話 写真

 とんとんとん。「パパッ、来て来て来てっ」

 「フランソワーズ、逃げないから落ち着け」

 ぱさっ。「パパ抱っこっ」

 両手を広げて抱き付いて来たよ、何時いつまでっても。

 むにゅ。子供じゃないはずなんだがなぁ~。


 「分かったから、腕をゆるめて」

 「ぇぇぇえええ~~~、もぉ~~~」「ほら、上げるよ」「はぁ~い」

 右腕を背中に回し、フランソワーズの右肩辺りを手でそっとつかまえて、しゃがんで左腕を両の膝裏ひざうらに当て、左手で軽く足をつかみ、立ち上がりながら引き寄せる。

 「wow、パパGOGO!、yeahーーー」こらっ、足をばたつかせるな。


 ぺちぺちぺち。フランソワーズ、お前もかぁ~。

 「フランソワーズ、痛いでしょうよ」「パパきたえた」

 「特に何もしてないよ、皆それでぺちぺちしてたの、重労働の所為せいでしょうよ」


 「ダディ、確かに以前より引きまった様だね」

 「ジムッ、マッチョなお前と並ぶと、皆ぶよぶよに見えるでしょうよっ」


 「パパ素敵すてきよ、うむぅ~~~」

 「フランソワーズお嬢ちゃん、ちゅうはしないの、皆にらんでるでしょうよ」

 「いやいやいや、このままベットまで行くのぉ~~~」足足っ。


 ばん。「あっ、靴が片方脱げて、壁まで飛んでったでしょうよ」

 「いやっ行くのっ」

 「はいはい、又今度こんど、今はソファーまでな、ジム、悪いが我儘わがままフランソワーズお嬢ちゃんの靴をひろって来てくれないか」

 「分かったよダディ」


 「いやいやいやっ、もう聞き飽きたぁーーー」どたどたどた。

 「はい、お姫様、着いたぞ」ジムが座っていた真ん中のソファーにそっと降ろす。

 「ダディ、靴だよ」「おう、ジム有難う、フランソワーズお嬢ちゃん、靴、置いとくぞ」


 「パパがかせてっ、んっ」さっと体を起こし、片足を突き出してくる。

 「ふぅ~、姫様のおおせのままに」「んーーー」

 靴はいつもの様に優しくかせたでしょうよ。何でむくれてるのよぉ~。


 「ダディ、次は僕だよ」「ジム、本気かっ」「さっ、僕達のパラダイスにっ」

 どたどたどた。「行きたくねぇーーーっ」手を離して。



 どたどた。「ダディ、ここなら大丈夫さ」「手を離さんかいっ」ていっ。

 またもやカウンターの所まで連れてこられた。


 「明乃あけのちゃん、ちょっと通して」「さくたん、どこ行くの」

 「じかに聞いてくる」



 「ダディ、フランソワーズの言う事を、もう少し真剣にいて上げたらどうだい」

 「何だよ急に、フランソワーズは出逢った頃から男にも女の子にももてるし、俺もお前もお兄ちゃん的存在だろう。毎回毎回相手の子とめるから、間に入って困ってたでしょうよ」


 たたたっ。「さくたんいらっしゃい」

 「フランソワーズ、左によって」「あ~こっちね、はいどうぞぉ~」どさっ。



 「そうさぁ~、僕も相手の子も、ものすごく困ったよ」

 「俺もでしょうよ」相手の子が、必ず俺にかかって来る。


 「フランソワーズ、聞きたいんだけど、ジムはどうしてフランソワーズにデートしようてっ言わないの」



 「ダディ、フランソワーズはずっと愛してると言ってるじゃないか」

 「あれはフランソワーズのジョーク」


 「明乃あけのちゃん、はじめちゃんをお願い」

 「ちょっ、まもちゃん」



 「ダディ、フェイクさぁ~」

 「・・・ど、どこが」


 「ぷっ、あははは、ジムに聞けばいいのに」

 「赤ちゃん出来そうで怖い」



 「彼氏も彼女も全て、ダディの気を引くためだよ」

 「だってジム毎度まいど


 たたたっ。「さくたん、フランソワーズ、左に詰めて」「うん」「もぉ~」どさっ。

 「はじめちゃんもう大丈夫でしょう、奥に詰めて頂戴ちょうだい

 「ええ、そのつもり、サンプルの情報はのがしたくないわ、・・・サンプルのね」



 「それはそうだよ。ツールにされた方は怒るに決ってるじゃないか」

 どうしてあんなに激しい剣幕けんまくで、俺に向かって来るのか全く理解できなかった。


 「そう、ジムはエージェントにしておくのはしいくらいい人よ」

 「そんな感じはするけど」



 「もう8年、ダディはあの子の心をつかんだまま、そろそろ方向を示して上げるべきじゃないかな」

 「お前は、ジム」「ダディが心を離してくれたら、さらって行くよ」


 「多分、お互いに今はこの仕事をしてるから、じゃないかな。Jamesジェイムズはね、フィアンセが出来たらこの仕事はきっぱりめるつもり」



 「・・・考えとく」「それじゃぁ~ダディ、中腰ちゅうごしになってくれないか」

 「何するんだよ」「半歩ほど壁に寄ってくれなか、照明に当るかもしれない」

 壁掛けモニターのある方へ動いて、取り敢えずひざを曲げて両のももに手を置く。


 「そうなの」「さっき牧場を買ったてっ言ってたでしょう」

 「じゃぁ、フランソワーズが婚約すれば」

 「そうなんだけど、私パパが好きだもん、さくたんも早くこっちにおいでぇ~」



 「こうか」「罰ゲームだ」「俺は悪くないでしょうよ」

 「ミス・テリーとかぴたんの学校で、気になる体操があってね」

 体操、俺の前に来て、背を向けてなんだよ、まさかっ、どこか突き出すんじゃないだろうな。


 「そうなら所長、おこめ合衆国にいた時はフランソワーズやジムと仕事、してたんでしょう、今もた様なものだし」

 「やだまもちゃん、だってパパ、全然働かないんだもん~、昔も今も変わってないんだからぁ~」



 「僕の手を取ってくれないか」手か、おどかすなよ。

 後ろ向きに手を差し出して来て、こんな体操あったか。

 「これで良いのか」取り敢えず両手をつかむ。


 「「「「ぉぉぉおおお~~~」」」」

 「おっちゃんだ」「なるほど、ずっとあんななんだ」「みょうね」

 「ええでも合点がてんがいくのは何故なぜかしら。ちょっと待ってフランソワーズ、おこめ国で私のリサーチに引っ掛からない、何かをしでかしたんでしょう」



 「なぁ~ジム、えらく不安定だぞ」

 「ダディはそのまま上体じょうたいを後ろにらして行ってくれないか」「お~こうか」


 「ふぅ~ん、明乃あけのちゃんだったんだ」「何の事かしら」

 「同業なんだから、守秘義務しゅひぎむがあるのわかるでしょう。話したら国際指名手配が掛かるじゃない」

 「さわりぐらい話しなさいよ」



 !、当たり前だが、ジムが来るっ。駄目だっ、戻せないっ。「ちょっ、ジムッ」

 「ダディ、動かないでいてくれ」!、あっ、何するんだよ。


 「ん~~~そうねぇ~、パパね、あんなだから一人じゃどうしようも無いんだけど、馬鹿ばかな事を考えてて周りを巻き込んじゃうの。私もジムも大変だったけど、結果的に凄い事になっちゃて、トップシークレットになっちゃた」



 「いたたたたたたっ」こいつ、靴も脱がずに俺のももの上に乗って来た。

 「wowわお、ダディすごきたえてるじゃないか」


 「それでそれで内容は」「話せないのよさくたん」

 「ちぇっ」「そうね、民主国家だから後40年ほどで開示請求出来るわ」

 「真っ黒の渡されても」「まもちゃん、ここみたいに全面黒塗りと言う事はないわ」



 「いてててててて」靴脱げ靴っーーー。

 「ジムっ、降りろっ、この服は経費で買ってもらった、いっちょらなんだっ」


 「まぁ、仕方ないわ、それであそこの二人は、何をしようとしているの」



 「クリーニング代は出すよ、さっ、片手を放して、僕のひざの辺りをつかみ直してくれないか」

 「無茶言うなっ、後ろに倒れる」


 「あっ、ジムっ、よれよれの背広しか着てこない所長に、経費で作ってあげたフルオーダーのタキシードを靴で踏みつけてっ」



 「ダディ、僕がバランスを取るよ」

 うがっ、右手を振り払いやがったっ。「いででででで」

 前方に倒れてバランスとるのは良いが、お前が立っているのは俺のももの上だぞっ。


 「お前っ、わざとだろっ」何とかジムの右ひざあたりをつかまえた。

 「それじゃぁ~、左だよダディ」「分かったよ、さっさと終わらせる」


 左手を離し、お互いにバランスを取る。「いたたたたた、くそぉ~」

 何とか左ひざあたりをつかまえた。


 「マイハニー達っ、見ておくれっ」ジムが両腕を水平にばっ、と広げる。

 なんだこりゃっ。・・・タイタニック、いや、あの女優さんは人の足の上には乗ってない。

 体操っ、組体操かっ。


 「ん?、パパ」「きゃっはぁーーー、おっちゃんとジム、何してんのっ」

 「写真、写真っ」「まもちゃん、ちょっと待ちなさいっ」






 ばたばたばた。どたどたどた。どたどたどた。何だ、ジムで前が見えないでしょうよ。

 かつかつかつ。「しょちょっ、マスターッ、そのタキシード、とても高価なのですが」

 明乃あけのちゃんが俺の左ななめ前、視界に入る所まで来て、俺を責め始めた。


 「わかってるよ、俺じゃないでしょうよ、ジムに降りる様に言って頂戴ちょうだいっ」

 「まぁ、ちょっとしいですが、ジム、降りな」

 「明乃あけのちゃんっ、待って、絵をって娘子隊じょうしたいの皆にも送るからっ」


 「まもちゃんめっ」「おっちゃんおっちゃん、目線こっち」

 「マイハニー達っ、どうだい、ミス・テリーとかぴたんの学校で見た体操だよ」


 小学校でまだこんな事してるのか。「さくたん、写真は」ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ。

 「ミス・テリーとかぴたんにも送ろう」さくたんめれぇーーー。


 「さくたんやミス・テリー、かぴたんが喜ぶなら、まぁ~いいかしら、私も」

 ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ。「所長っ、こっちも目線を下さいっ、ジムっ、表情作ってっ」

 ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ。「パパっ、こっちよこっち向いてっ」

 ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ。「さくたん、資料よっ、出来るだけ多くのデータを取ってっ」

 ぱしゃ、ぱしゃ、ぱしゃ。「まぁ~かせてっ」誰かめてぇーーー。


 がらぁ~ん。「早く早くっ」「ちょっと、扉から離れて」

 「あっ、陸自のりくちゃんが帰って来た」

 「ジムッ、降りろっ、早くっ」「ミス・テリーとかぴたんが帰って来たのかい」


 「見逃みのがしたらどうするんですかっ」がらぁ~ん。

 「開けれないでしょう」

 「そうだよ、皆帰って来たでしょうよっ」

 「はやっ、送って何分もってなのに」

 「Ohhhh、ダディっ、手を離してくれないか」。

 

 「開けて下さいよぉ~」「もぉ~、ほらっ」

 がらんがらんがらん。どたどたどた。「放すぞ」「OK」どすん。間に合った。

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