第48話 イメージトレーニング

 「と言う訳で、私もじかに触って確めます」

 「わかったっ、MRIと各種精密検査と運動機能のテストを手配する」

 「さくたん、協力を」「うん」


 「あああぁぁぁ~~~歩く事は勿論もちろん、立つ事も出来ないわぁ~~~」

 「わぁ~~~それは大変だぁ~~~、どうしよぉ~~~」ちらり。

 天才は唯一ゆいいつ、お芝居しばいの才能は無いのかな。

 下手へただなぁ~~~、この二人。


 はいはいわかりました、抱っこしてソファーに運べばいいんでしょうよ。

 かた。「はぁ~、行けば良いんでしょうよ」「あ~~~天井がぁ~~~」


 今しゃがむから。「はじめちゃん、つかまって」

 「さくたん、ちょっと距離を取って頂戴ちょうだい」「うん」


 「これで良いのかしら、あっ」「立ち上がるよ」皆軽いなぁ~、ちゃんと食べてる。

 はじめちゃん、こそばいから、首をむにむにしないで。「かっ、硬い」

 むにむにむに。「はじめちゃん、肩を揉むなら、もっと強く」「硬い」

 ぺちぺちぺち。「はじめちゃん、胸を叩いたら痛いでしょうよ」「良いわ」


 「もういいかなはじめちゃん、ソファーに」「広い所に出てっ」

 「えっ、・・・さくたん、道空けてくれる」「うん分かった」どたどたどた。

 店の中央、いつも丸テーブルがある場所から、一歩ほど内に向かった所まで出て来た。


 「この辺りで良いでしょうよ。どうするの」

 「んうん、けほん。少し気になる事がありますので、確め様と思います」


 早くしないと、ミス・テリーとかぴたんが帰って来ちゃうでしょうよ。

 「何をすれば」「うんと」


 はいぃ~、何それ、はじめちゃんが片手の人差し指を、下に向けて時計回りに回している。

 「回るの、ここで」「ふんふん」


 「まぁ~いいけど、さくたんもう少し離れて」「あっ、うん」

 ぐるぐるぐる。「はっ」とか言って、顔を胸にうずめて、首に両腕を巻き付け直して抱き付いてくる。


 「はじめちゃんこれ」

 えっ、目を回してないか、運動神経ほぼゼロなの忘れてた。

 「はじめちゃんっ今」えっ、又指を、反対に回れと。


 「いやっ、でもふらふらで」「まわってぇ」

 大丈夫かはじめちゃん、つやぽいよ。回るしかないでしょうよ。

 ぐるぐるぐる。「ほうっ」て、ほらぁ~やっぱり駄目でしょうよ。


 「このぐらいで良い」「はい、とても良いと思います」

 何か変だよはじめちゃん。あ~目を回してる。


 「じゃぁ~ソファーね」「はい」どたどたどた。

 「はじめちゃん大丈夫」さくたんが心配して後ろを追って来る。


 「明乃あけのちゃんまもちゃん、悪いけど詰めて」

 かた。「ええどうぞ」

 明乃あけのちゃんがソファーから立ち上がって広い空間に出て来た。


 はじめちゃんを座らせやすくなった。「はい、座って」「ええ」

 「さくたん、はじめちゃんが目を回してる」「はじめちゃん」

 ソファーの空いてるスペースに、さくたんが心配して座る。


 「んうん」ほえ、またもやシャツの袖を引っ張る座敷童ざしきわらしが。

 振り向くととてもおっきなわらしがにこにこしている。


 「順番からすると、次は私ですね」「あのね明乃あけのちゃんこれ何」

 「ぁ~~~そうですね」

 うつむ加減かげんに、腕を伸ばし両手を組み、肩を左右にらし潜考せんこうした。


 「ぁっ」顔を上げて、ぱぁ~とっにこやかに、右の人差し指を顔の横で、ぴーーーんと立てた。

 「運動能力と体力を確かめるのと」「他にもあるの」


 「メインはぁ~、イメージトレーニングです」「イメージ、何の」

 「それはあかかせません。トップシークレットですから」聞いてない。


 かた。すたすたすた。「そう言う事なら私も参加しないと」

 フランソワーズめろよぉ~、又ややっこしくなるでしょうよ。


 「フランソワーズ、これは私達のミッション、認められないの」

 「明乃あけのちゃん、このミッションに加わる資格は、十二分じゅうにぶんにあるわ、ねぇ~パァ~パ」

 猫じゃないんだから、にらみ合いするのめて。


 「じゃぁ~僕も参加するよダディ」

 ジムッ、座ってろよっ、お前をお姫様抱っこする事になるだろっ。

 「・・・少し興味があるので許可します」「あ~面白いかも」


 「明乃あけのちゃんフランソワーズ、ちょっと

 「異論いろんは認めません。時間もありませんから、早速始めましょう。私について移動して下さい」


 窓辺まどべとは反対に位置する店の奥、カウンター席の所まで連れてこられた。

 「それでは私から」と対峙たいじする様に俺の前に出て。ばざっ。「参れっ」


 「・・・明乃あけのちゃん」「はい」声ちっちゃっ。

 「柔道する訳じゃないんだから、袖口そでぐちばざっ、とかして熊みたいにかまえられても」


 「じゃっ、じゃどうすれば」

 うわっ、眼球が細かく動いてる。目が泳ぐとか言うの初めて見たよ。

 「・・・とにかく手を下ろしてくれる」「こ、こぉ~ですか」


 イントネーション可笑おかしいでしょうよ。「そのまま立ってて」「はぃ」

 明乃あけのちゃんの左側に移動して、背中に右腕を。


 「ぇっ」びっくとか、うつむいたまんまだし。「めた方が」

 「だ、だって女の子しか、学校にいなかったし、お父さんとしか手をつながないし」


 ちっちゃな声でぼそぼそ言われても分かんないでしょうよ。「はい、め」

 「続けてっ」「「「きゃっ」」」

 うごぉーーー、何故なぜに叫ぶっ、と言うか右耳聞こえない。


 皆おどろいてるでしょうよ。「何でもないから」

 「明乃あけのちゃん可愛い」「フランソワーズッ、直ぐにれるわっ、きっと」

 「マイハニーあけ」「ジム、お口にチャックして」「Oh、あんまりだよ」


 続けるなら、気がそれてる今だね。

 しゃがんで左腕で両足をすくい上げて、右手で肩をつかみ腕で落ちて来る質量を支え、一気に引き付け立ち上がる。


 「ひっ」両腕を胸の前で組んでる。

 ・・・やっぱり軽い、皆ダイエット中なの。

 そんな必要無いと思うけど、わからん。


 ぺちぺちぺち。痛い痛い痛い、何故なぜに皆たたくの。

 「もっ、もっ、もぉ~、怖いでしょう」


 なははは、明乃あけのちゃんもこんな顔するのね、一矢いっしむくいたぞ。

 「はいはい、つかまって」「ぅ~~~、・・・近い」

 首に腕を回して顔をそむけた。


 「・・・こんな風に見えるのね」「もういいかな」

 「だめです」「ぇぇぇえええ~」

 「あっ、そう、さくたんの所までゆっくりと歩いて下さい」「歩くの」「はい」


 どた、どた。「ぉ~~~」えつに入ってる。どた、どた。

 「着いたよ」「もういっか」「パパッ、早く早く」

  たん。「終りね、次はフランソワーズか、今行くよぉ~」どたどたどた。


 「ちっ、フランソワーズゥ~」

 「「「明乃あけのちゃん明乃あけのちゃん、こっち」」」こつこつ。

 「明乃あけのちゃんどうでした」

 「明乃あけのちゃん、おっちゃんの筋肉どう」

 「明乃あけのちゃんどんな感じかしら」


 「ちょっと詰めて」「きゃっ」「明乃あけのちゃんお尻が」

 「隣が空いているでしょう」

 「それでそれで明乃あけのちゃん、おっちゃんどう」

 「そ、そうねさくたん」

 「明乃あけのちゃん、あれはずるいと思うんですけど」

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