第45話 α《アルファ》との紐《ひも》づけ

 「どう言う事かしら、登録があれば、αアルファの髪からDNAが出た時、直ぐに照合しょうごうが出来るでしょう」

 「はじめちゃん思い出して、βベータ1のちつ液混合斑痕はんこんからは、2パターンのミトコンドリアDNAが検出されている。当時の捜査そうさ班は、一人はγガンマ、もう一人はαアルファうたがっていたの、γガンマは逃亡した事に成ったけど、αアルファは逃げなかった」


 「サンプルを取ったんですか」「そうみたいなのまもちゃん」

 「そんなの可笑おかしいよおっちゃん、骨髄こつずい移植いしょくでもしてない限り絶対合うよミトコンドリアDNA、ねはじめちゃん」


 「明乃あけのちゃん、αアルファの病歴は」

 「どれだけ頑強がんきょうなのよこの男、おおやけには何もない」

 「相当そうとう優秀ゆうしゅうやみ医師がいるんじゃない」「そうかも知れないフランソワーズ」


 「そんなんで、αアルファは容疑者リストから外れ、もう一人の存在も知っているだろうγガンマまと絞りしぼられた」

 「しかしその男は今、石の下にいるんだろうダディ」

 「その通りだジム、そして未解決の事件として月日が過ぎたんだ」


 「だめじゃんおっちゃん」

 「いやいやさくたん、登録されていたら正直しょうじき終わってた」


 「今の方が終わってるじゃん」

 「さくたん、警察のデータベースはどう言うもの」「犯罪歴のある人の個人情報」


 「そう“犯罪歴”のない人、容疑が晴れた人の情報は登録しない事になってる」

 「一致しなかったから登録されなかった」

 「さいわいにもね」「えっ、したら可笑おかしいじゃん」


 「そうっ、さくたんの言う通り、普段の警察なら、容疑が晴れても無関係でも、一度手にした個人情報、指紋しもん、遺伝子情報、全てを無許可で登録して事件の解決に使っているんだ」

 「怖っ、それ何処どこの国」


 「そしてさらなる恐怖が訪れる、一度登録されてしまったら」

 「し、・・・しまったら」


 「それがその人の情報となり再取得が不可能に、ぎゃぁーーー」

 「「「「「「きゃぁーーー」」」」」」ジムはいいよ、しなくて。


 「それじゃ、登録されていたら、絶対に一致しないって事じゃん、怖ぁ~~~い」

 「そう言う考えのやつ、どこにでもいるのねパパ」「そうだなフランソワーズ」


 「でもおっちゃんどうするの、サンプル取れるの」

 ここは男の俺でも、胸を張って言う所だよっ。

 さいきん~、シャツのボタンがぁ~きつくなったのぉ~。

 重労働の所為せいだな。


 「そうだよさくたんっ、γガンマの遺体からDNAはきっと出る」

 「私もそう思います、まぁ~残ってる骨の量にもよりますが」


 「はじめちゃんのお墨付すみつき、これが第一条件。第二条件が、身元がγガンマと判明する事、第三条件が他殺を証明する物的証拠、凶器が出る事、そして4番目が」

 「髪の毛っ」


 「うんさくたん、あのにぎりしめられた髪からDNAが検出される事。当時γガンマとトラブルに成っていたのはαアルファ、真っ先に容疑が掛かり、登録が無かった以上、再取得の申請が出来る、Δデルタに邪魔させない」

 「「「「ぉぉぉおおおーーー」」」」


 「だから書類に囲まれながら申請書類を書いてましたの事よ、さくたん」

 がた。「おっちゃん偉いっ、ちゅうして上げようか」

 がたがたがた。「「「うがっ」」」

 「いやさくたん座って、皆にらんでるから」がたっ。「ちぇっ」


 「問題はここからだよ皆」

 「βベータ1をひどい目にあわわせて殺したαアルファΔデルタを逮捕ですねっ、ちち警部補っ」


 「いやぁ~それがねぇ~まもちゃん、そう簡単には行かないのよ」

 「だってこれもうγガンマ殺しでαアルファ逮捕じゃないですかぁ~、後ははり山みたいのに座らせて、ひざの上に石を置いて行くだけしょう」


 まもちゃん、江戸時代じゃないんだから。

 「そんな非人道的な尋問じんもんは出来ないの」

 「雑巾ぞうきんみたいにめ上げれば自白しますよ」


 「そんな事したら、今まで俺達がして来た事が無意味になるでしょうよ。αアルファのDNAサンプルが取れて、γガンマからβベータ1の容疑が晴れ、ミトコンドリアDNAの型が一致したαアルファが容疑者になる。そしてここで俺が書いてる家宅捜索かたくそうさくの申請書が生きる訳でしょうよ」


 「「「「「「ぉぉぉおおおーーー」」」」」」ぱふ、ぱふ、ぱふ。しゃんしゃんしゃん。

 ジムッ、お前はいいよしなくて、可愛くないから。

 それに今はカラオケじゃないんだから、何時いつ出したよのよそれ。


 「それでそれでおっちゃんっ、今度は何を探すのっ」「分かんない」

 「私の賛辞さんじ応援おうえんを返してっ」「だからこうして皆に相談してるんでしょうよ」

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