第32話 角と尻尾《しっぽ》

 ぶぅ~ん。ぎぃーーー。かた。がさがさがさ。ばん。すたすたすた。

 きゃっきゃ、きゃっきゃ、わいわいがやがや。

 えらくにぎやかだねぇ~。がらんがらぁ~ん。


 すたすたすた。きゃっきゃ、きゃっきゃ、わいわいがやがや。

 なっ、何ですか、この有様は。

 「あっ、マス、うぅん、失敬しっけい、所長、意外と早かったですね」

 「明乃あけのちゃん、皆のこの恰好かっこうは何かなぁ~」

 「可愛いでしょぉ~~~」「ん、・・・まぁ~そうなぁ~」


 まぁ~服はいい、ヒラヒラのいっぱい付いたメイド服風だの、ドレス風だの、皆俺より十ぐらいは若いし。

 わからないのは、頭に付けているのと、スカートからにょっきりと突き出ているぶんぶんと振られている物だ。


 「ミス・テリーとかぴたんが待ちきれなく、先に始めちゃいました」

 「あ~そうなの、それで頭」

 ばたばたばた。「ぱぱさんっぱぱさんっ早く早く」「ちち、こっち」

 ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ。「分かったから、引っ張らないで」

 手を引っ張るミス・テリーとかぴたんが動くと、俺の足が”ぱしぱし”としばかれる。


 「ちち、早く」「ぱぱさんっ早くっ、次だから」

 「ミス・テリー、頭のそれは何かな」「角」「4本ぐらいあるよね」「ドラゴンの角」

 龍の角ですか。じゃぁ~、スカートからにょっきり出ている、”ぱしぱし”と動くのは、尻尾しっぽ


 「かぴたん、聞いて良いかな」「ぱぱさんっ早くしようよぉ~~~」

 「お尻の方から皆が出してるのは尻尾しっぽかな」

 「そうだよぉ~~~ドラゴンの尻尾しっぽ」やっぱりかぁ~

 「それは外せないのかな、ぱしぱし痛いでしょぉ~」

 「だめっ、これは取れないのぉ~、あっ、尻尾しっぽ料理ならいいよ」

 「うん、私が作る」「ぁ~~~、ミス・テリー今はいいよ」


 さくたんが窓から顔を出してるね。何時いつに無く準備が早いねぇ~。

 「もぉ~~~、おっちゃんっ、遅いっ」「もうするの」

 いやぁ~、予定より30分は早いはずだけどなぁ~。

 「おっちゃんを待ち遠しく思う日が来るなんて思わなかったっ」

 「はいはい、分かりましたよん」


 大量のタオル、着替え、経口補水液が入った紙袋を隅っこに置き、重力波発生源となるべく、丸テーブルのそばに行き、ミス・テリーとかぴたんと共にポジションに着いた。


 「はじめっちゃてぇ~」さくたんが手を振る。

 俺とミス・テリーとかぴたんは、丸テーブルの周りを回り始める。

 「「「「「どっんどっとっと」」」」」「「「「「どっんどっとっと」」」」」

 ♪どっんどっとっと。ソファーの前のテーブルとたたいてリズムと取り始めた。


 ♪どっんどっとっと。「「「「「「「どっんどっとっと」」」」」」」

 ぱしっ、ぱしっぱしっぱしっ。痛い、痛い痛い痛い。

 「「「「「Yahoo~」」」」」「「Yeah~」」

 「「「あわわわぁ~」」」つんつんつ~ん。痛い痛い痛ぁ~い。

 ちょっと、痛いよ。前はかぴたんの尻尾しっぽうしろからはミス・テリーの角が「あわわわぁ~」と背中を突っつく。


 ♪どっんどっとっと。「「「「「「「どっんどっとっと」」」」」」」

 ぱしっ、ぱしっぱしっぱしっ。痛い、痛い痛い痛い。

 「かぴたん、足がね痛いんだけど」

 「『大丈夫だよ』の呪文があるから大丈夫だよ、ぱぱさん」「そ、そうかぁ~」

 「「「「「Yahoo~」」」」」「「Yeah~」」

 「「「あわわわぁ~」」」つんつんつ~ん。痛い痛い痛ぁ~い。

 「ミス・テリー、背中つんつん痛いんだけど」

 「ちちは大人、小さな事にこだわってはだめ、でも傷付く事に慣れてもだめ」

 「おっ、ぉ~分かった」ようわからん、しばら我慢がまんするか。


 ♪どっんどっとっと。「「「「「「「どっんどっとっと」」」」」」」

 ぱしっ、ぱしっぱしっぱしっ。痛い、痛い痛い痛い。

 「「「「「Yahoo~」」」」」「「Yeah~」」

 「「「あわわわぁ~」」」つんつんつ~ん。痛い痛い痛ぁ~い。

 体は重くなるし、痛し、苦行だぁ~~~。これは来世の分まで徳を積んだな。

 くそぉ~~~、一度人生終わらんと良く成らんのか、納得いかん。

 今を良くしてくれっ。


 ♪どっんどっとっと。「「「「「「「どっんどっとっと」」」」」」」

 ぱしっ、ぱしっぱしっぱしっ。痛い、痛い痛い痛い。

 「「「「「Yahoo~」」」」」「「Yeah~」」

 「「「あわわわぁ~」」」つんつんつ~ん。痛い痛い痛ぁ~い。

 さくたんが窓から手を振ってる。

 「ミス・テリー、かぴたんもういいよ。30分後に休憩ね」

 「ちちあとよろしく」「パパさんがんばっ」

 ミス・テリーとかぴたんが円軌道からトランスファー、お遊びモードへ移行。

 まぁ~、これも2人には、楽しいお遊びでないと困るのだが。


 「M岡さんちのちょろゴンズ、はいったよぉ~」

 「はいっはいっはいっはいっはいっ、かぴたんっ、かぴたんが歌うの」「私も歌う」

 「待ってっ、私も歌うから」

 「これは皆で歌って踊るしかないね、かぴたん」

 「うんっ、歌って踊れるかぴたんだよぉ~」「私も、私も踊る」

 「ミス・テリーはい、マイクッ」


 なっ、何事っ、皆モニターの前に来て。

♪「「sing alongシィンガロン」」♪「「パッパラッパッパー」」

♪「「back to the timeバァクッ トゥ ザ タァィム」」♪「「パッパラッパッパー」」

♪「「swing alongスウィンガロォン」」♪「「パッパラッパッパー」」

♪「「place to beプレイス トゥ ビー」」♪「「パッパラッパッパー」」


 おいおいおい狭いよ、皆踊りだしたよ。

♪「「Walk togetherウォーク トゥッギャザー」」♪「「パッパラッパッパー」」

♪「「Road of timeロード オヴ タァィム」」♪「「パッパラッパッパー」」

♪「「Touch your handタッチ ユアー ハンド」」♪「「パッパラッパッパー」」

♪「「fall in loveフォーリンラブ」」♪「「パッパラッパッパー」」


♪「チャーミングなバッグを引っ下げて登!場!」

♪「小っちゃくて笑顔が素敵 おひさま的な少!女!」

 ミス・テリーとかぴたんが交互に歌ってるけど、ラップなの。



 ぉ~~~しんどい。そろそろ終わりじゃないかなぁ~。

♪「一万年と二千年前から愛してるぅ~。八千年過ぎた頃からもっと恋しくなぁ~た」

 「さくたん、そろそろ予備観測が終わるわ。私が行ってデータを仮想サーバーに移してくる。さくたんはミス・テリーとかぴたんの力をOFFにさせて」

 「分かった」

♪「一億と二千年あとも愛してるぅ~。君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えなぁ~い」


 お~やっと30分、はじめちゃんが窓から手を振ってる。

 「良いみたいね。ミス・テリー、かぴたん休憩だよ」「「えええぇぇぇ~」」

 「はい、ゲージを見て」「うぃ~すっ」「あい」

 あ~~~Gから解放されるぅ~~~。ゲージの径が小さく成っていく。


 「は~~~い、・・・OFFにしてっ」「「にゃっ」」

 「良く出来ました。15分だけ休憩ね、気分とか悪くない」

 「かぴたんは大丈夫だよ。ミス・テリーは」

 「ふむ、NOノー problemプロブレム


 あ~~~、やっぱり重労働だわ、これ。

 「明乃あけのちゃん、先に見といて、トイレ行って来るわ」

 「ええ、分かりました」

 たったったったったっ。がらんがらぁ~ん。

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