第24話 現行法上

 窓辺まどべを見よ。の光はあるか。

 空を見上げよ。世の全てを白日はくじつさらす、清き光は何処どこに。

 おおい隠すものはなんであるのか。

 再び窓辺まどべあふれ、部屋が明るく照らされる時は訪れるのか。

 BGMは幻想曲とフーガ、ト短調。


 今日はフレーバーティーのライチ、フルーティーな甘い香り。

 お砂糖は要らない、口にすればライチの香りで甘さを感じる。

 筈なのだが、外れだ。


 薄めた渋味しぶいみすら感じない出来損できそこないの茶葉。

 ライチの香りなど皆無かいむ、茶葉の匂いすらしない。

 この紅茶はお隣でしか作っていない。


 とても品質が悪く、本物に出くわすのは年に1回あるか無いか。

 しかし、1度出逢ってしまったら、気品ある甘い香り、上品な甘さ、とりこになる事請け合いだ。

 こうしてけをしてでも、もう一度で会いたくなるのだ。


 でもこれはお客出せる代物しろものじゃない。

 と言う事で、俺が責任を持って消費する事となった。

 明乃あけのちゃんに代金は免除してもらった。

 もう仕入れるのめよぉ~かなぁ~、ハイリスクなんだよ。



 まもちゃん以外の娘子隊じょうしたいの子達は、常勤ではない。

 上申じょうしんはしているのだが、なかなか認めて貰えない。

 まもちゃんもだが、さくたんやミス・テリー、かぴたんと年齢的に出来るだけ近い方が良いだろと言う判断が何処どこからかあったらしく、俺以外は皆二十歳はたち中ぐらいと若く、自衛官として大変貴重存在だ。

 量子探偵業務があると駆け付けてくれるが、それは彼女達の負担でしかない。

 従って意見を聞く暇なく、一旦駐屯地へ帰ってもらった。


 それに予算がない。

 明乃あけのちゃんが交渉中だが、1週間っても通らない様だ。

 俺が行くと、余計な勘繰かんぐりを受けると拒否された。

 まぁ、こう言う時、真偽しんぎに関係なく弱みをつかまれるのは良くない。


 さくたんとはじめちゃんは、あれから不具合について毎日検証している。  

 桜花も加わって行っている様だが、やはり科学的技術的には問題ない様だ。


 原因が分からないまま一週間。

 今日、娘子隊じょうしたいの子達が集まってくれる。


 つかつかつか。「所ちょ、うぅん、失敬しっけい、マスター」

 ふっ、ふ~ん。もう暴力にはしないぞぉ~、明乃あけのちゃんっ。

 「ふっ、明乃あけのちゃん」「あ~まもちゃん、そんな所で」

 えっ、何。ばこっ。

 ・・・ぅ~~~、何故なぜだぁ~~~。


 「明乃あけのちゃんっ、私をしにしないで下さいっ」

 そうだまもちゃんっ、言ってくれっ。

 「たたくのはいいですけど、私を使わないで下さいよぉ~」良くないっ。


 「あのね二人共、俺が何故なぜお盆でたたかれるのは良いのかな、かなっ」

 「だって、何時いつもの光景って感じで、ほほえましいじゃないですかぁ~」


 「そんな事ないからっ、俺が一方的に痛いだけだからっ、暴力反対っ」

 「所ちょ、マスター、そろそろミス・テリーとかぴたんをお迎えに行ってる、娘子隊じょうしたいの子達が帰って来ますよ」


 「あっ、まもちゃんは行かなかったの」

 「さくたんとはじめちゃんがメインコントロールルームにこもってるから、お店の手が足りないと思って、マスター働かないし」

 最近、メイド服じゃだめなのかなぁ~。お客いないねぇ~。

 これは近々、経営会議しないとだめかなぁ~、嫌だなぁ~、怖いなぁ~。


 あれっ、明乃あけのちゃんが帰って来てる、予算取れた。

 「明乃あけのちゃん、予算取れた」おっ、Vサイン。


 「但し、ちょっと条件付きで」「何」

 「桜花を使わせろと」「さくたとはじめちゃん、桜花は何て」

 「ええ、無条件に受け入れる事は出来ません。こちらからも条件を出しました」

 「どんな」「一つ、量子探偵業務がある時は使用できない。これは私」


 「それから、それだけじゃないよね」

 「さくたとはじめちゃんからは、平和利用目的の科学分野に限る。特に基礎研究分野で他国に比べて遅れが目立ちます。目先の目立つ研究に偏りが」


 「なるほど、よう分らんけど」

 「それとまもちゃん、娘子隊じょうしたいの子達が、桜花は、さくたん、ミス・テリーやかぴたんと同じ子供だから、軍事関係にかかわって精神汚染されない様にした方が良いと」


 「まもちゃん、保母さんみたいだねぇ~」

 「私、保育士の資格持ってますよ。皆も」えっ、そうなの。


 「明乃あけのちゃんも」「現行法上必要ですから、取得しました」

 「それじゃはじめちゃんや娘子隊じょうしたいの子達も」

 「持ってますよぉ~。ここで“働く”子はみぃ~んな」

 「そうです。取得していないのは“働かない”、所ちょ、うぅん、マスターだけです」

 ぉぉぉぉおおお~~~、超納得。


 だから『平和利用目的』と言う一文が加わるのねぇ~、これも超納得だよん。

 ・・・と言う事は俺、人ならざるものであり、自ら見て聞いて、最も公平に物事を判断できる存在の誕生に立ち会っているのかな、かな。


 まぁいいか、今は抱えている案件を片付けないとなぁ~。

 「うんわかった。現行法上俺は、働いちゃだめなんだね。うんうん」

 納得。

 「いいえ、きりきり働いて下さい。喫茶NTRでも量子探偵事務所NTRでも」


 「ん~~~善処します。でさ、さくたんとはじめちゃんにはあらかじめ受ける内容を精査してもらって、仕事増えるけど、メイドさん業減らして良いから」

 「ええ、そうします。それですねぇ~マスター、人員補充が必要ではないでしょうか」

 近い近い近い、明乃あけのちゃん近い。


 「え~、・・・おっ、わかった。この件を利用して娘子隊じょうしたいの子達も、ここに常勤出来る様に掛け合う」

 「頼みましたよ。マスター」「まぁ~かせて」

 流石さすが明乃あけのちゃん、ただじゃ起きないねぇ~。

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