第19話 緊急会議

 「と言う訳です。観測点が多数あるけどぉ~、ミス・テリーとかぴたんが疲れるから沢山出来ない、予算も減っていくし、どうしよぉ~かなぁ~と」

 店を閉めて、さくたん、はじめちゃん、明乃あけのちゃん、俺で緊急会議を行う事になった。

 まもちゃんと娘子隊じょうしたいは、ミス・テリーとかぴたんの護衛ごえいに出ている。


 「さくたん、予備観測って、座標と時間を複数設定出来ないの」

 「う~~~ん、はじめちゃんどう、それこそワンショットなら」

 「でもそれじゃ、目的の移動方向分からない。連続で取るからわかる訳だし」


 「桜花、例えば6枚/秒にしたら、光子対の転写位置を変えられる」

 「予備観測でも本観測でも光子対の重力子への転写は凄く精密な制御だから、どうかなぁ~、車がさぁ~時速30kmで曲がるとした場合、1時間、3600秒の間に30000m進むでしょう。1秒間に約8m、車の長さが仮に4mとすると、次の1秒にはもういない事になるじゃない」


 「動画の枚数を減らすと、車の速度によってはとらえる事が出来ない。特定の座標を観測し続けるからとらえる事が出来てた訳ね」

 「そうだよ明乃あけのちゃん、空間の広さを考えて、1枚毎に時間と座標を変えようとすると、光子対の重力子への転写制御が間に合わない。それに対象物体が正確にそこに来る事が分からないと、そもそも無理、重力子も足りないし」


 「じゃぁ~やっぱりおっちゃんのクローンを造って、ぷちっと行くまでGをあげる」

 「俺それは嫌だ、さくたん。だいたい今からじゃ間に合わないでしょう。と言うかさ、重力波発生源って、質量のある移動物体なら何でもいいんでしょうよ」


 「おっ、おっちゃん勉強してる、そうだよ」「じゃぁ~何で俺ぇ~」

 「ん~~~良く分かんない。ミス・テリーとかぴたんがね、おっちゃんじゃないと上手く出来ないんだって」

 おおおぉぉぉ~~~、なるほど、人知じんちそとかぁ~。1回の予備観測点数を広げるのはむずかしそうだなぁ~。


 「そぉ~ん~~~じゃぁ、今回はこれまで通りにするしかないねぇ~。さくたんとはじめちゃんと明乃あけのちゃんでさぁ~、今後の為に打開策を検討して見てくれない」

 「おっちゃん具体的には」「そうねぇ~」「それはいいけど」


 「だから俺が死なない程度に予備観測の範囲を広げられないか。それが無理でも効率化をして、1回の費用を下げて観測回数を増やすとか。後ミス・テリーとかぴたんの苦痛にならない様に、出来れば費用も下げて楽しませる、ん~~~何か」

 「分かったおっちゃん、相談してみる」

 「わかったわ」「そうね、継続する為には必要ね」


 「明乃あけのちゃん、予算は頼むよ」「はぁ~、努力は惜しみません」

 「お楽しみの方はさ、ミス・テリーとかぴたん、まもちゃんと娘子隊じょうしたいの子達も混ぜて話した方がさ、今学校で流行ってる事とか分かるでしょうよ」

 「そうします。それでこの案件はどう進めます」


 「あ~さくたんとはじめちゃんも、意見が欲しいなぁ~」

 「まっかせなさい、おっちゃん」「良いですけど」

 明乃あけのちゃんがタブレットを丸テーブルの中央に、ぺったと寝かせる。

 パパさんアースを立ち上げ、ちょっと拡大して目印を付けていたがけをタップする。

 そこから続く一本道を辿たどり、αアルファの車が右折したT字路にたどり着く。

 「αアルファは右折してルートATに入りました」


 「明乃あけのちゃん、もうちょっと引いて、この道、どんなところを走ってるのか見たいんだけど」

 「ですね」

 標高が高く成った事を現す数値が大きく成り、山や谷をつらぬくルートAT、それに接続する道の幾筋いくすじかが見て取れる。


 「道なりに行くと、その先の山間やまあいの農家さんをつなぐ村道の様ですね」

 そう、ルートATをそのまま進むと、接続している村道に入る。

 この村道はUの字状に成っていて、開いている所がルートATにつながり、文字部分は脇道が、全て農家さんの家につながってる。


 「おっちゃん、わざわざ農家の所には行かなくない」

 「さすがはさくたん」「はじめちゃん、普通に皆分かるよ」

 「とすると、まず一点目はここのT字路、直進して何故なぜか農家さんの所に向かうか、右折してルートATを走り続けるか、ここですね」


 「だねぇ~明乃あけのちゃん、このT字路を右折してルートATを走り続け、谷を渡った先はどんな感じ」

 手の平のカーソルをぐぅ~にして引っ張ると、山の中に入って行く脇道が見えた。


 「明乃あけのちゃん、この脇道拡大してくれない」

 「待って下さい」

 標高の数字が小さく成ると、道とその先にある広場が見える。

 そこには何か資材の様な物が積まれていたり、トラクターの様な乗り物らし物体がうつっている。


 「おっちゃん、ここもないんじゃない、移動してるの朝じゃん、誰か作業してるよきっと」

 「ぉぉぉおおお~~~、さすが私の妹ぉ~」

 「はじめちゃんっ、頭でないで、・・・髪がくしゃくしゃになるぅ~」

 「じゃっ、この先ですねっ」

 明乃あけのちゃん、ミス・テリーとかぴたんの前では爪、まないでね。

 お行儀ぎょうぎ悪いから。


 明乃あけのちゃんは更に、ルートATを追って表示を動かす。

 今度は十字路に出た。

 「二点目はここですね」「明乃あけのちゃん、広く見える様にしてくれない」

 「はいはい」標高の数値が大きくり、山が見える様になった。


 「悪いけど、もっと道の先が見える所までお願いできるかな」「はいはい」

 道が線の様に細くなるまで標高を上げると、道の先にある物が見えた。

 十字路を渡ってルートATを直進した先には家並みがうつっている。

 ルートATを横切る。・・・これ何の道だろう。


 「明乃あけのちゃん、このルートATを横切ってる道は何」

 「もう~待って下さい」

 明乃あけのちゃんがもう一度標高を下げ、くだんの十字路の手前の道をタップすると、ストリート何とかに成って、視界を上に上げると標識がうつっていた。


 お~県道44号線。「県道44号線となっていますね」

 「ルートATから左折して、県道44号線に進入すると、山の中に向かってる様だけど、反対は何処どこへ行くの」


 「はいはい、又上げますね」便利だなぁ~、標高を上げると直ぐに分かった。

 「海沿いの町だね。ん~~~俺小心者しょうしんものだから人気ひとけのない山の方へ行きたいなぁ~、後ろめたい人間が町中を目指めざすとは考え難い」

 「私もそう思うなぁ~」「一緒ぉ~」

 「もうはじめちゃん引っ付かないで」「ちっ、私もそう思います」


 「あっ、ちょっとかしてぇ~」「はい、さくたん」「有難う」

 明乃あけのちゃんっ、はじめちゃんに向かって、にぃ~ってするのめてっ。

 ん、さくたんが十字路の中心から、点線を伸ばしたり、縮めたりしてる。

 何か距離を測ってるのかな。


 「桜花、この先のT字路さ、十字路を左折した直線の延長線上にない」

 「あ~、ちょっとずれるけど、許容範囲内だよ」

 「じゃぁ~、1回の予備観測で行けそう」「明乃あけのちゃん、多分大丈夫」

 「そうなぁ~、2点目はこの十字路を直進するか。あるいは左折するか、その先のT字路で曲がるか見ようか」


 「それだとその先のトンネルの手前が3点目でいいんじゃない。その先は小さな集落まで脇道無さそうだし」

 「それは十字路を左折した時だけよはじめちゃん、2点目の行き先を見ないと分からないでしょう」

 「さくたんの言うのももっともねぇ~、取り敢えずこの2点の予備観測結果を見てから、次を考えるしかないわね」


 「ショート2回かぁ~」

 「さくたん時間足りない。1時間ぐらいだからね。歌の順番回らないかなぁ~」

 「え~と、ミス・テリーとかぴたんが学校のお友達を呼びたいって、言ってて」

 「そうなの」「え~まぁ~」

 「はじめちゃんも知ってた」「はぁ~一応」

 「まもちゃんと娘子隊じょうしたいの子達も」

 「皆知ってるよ。おっちゃん以外」

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