第17話 妹縛り

 さて、俺も学習して進化した。

 ジャージを新調しんちょう、そして靴はこだわった。

 軽くて通気性が良く、疲れにくいフルマラソンに適したものだ。

 これで体感2Gを、4時間耐えられるだろう。

 タオルも吸水性に優れた逸品いっぴんだ。


 そして始まった過酷かこくな重労働。

 ♪どっんどっとっと。「「「「「「「どっんどっとっと」」」」」」」

 じゃらじゃら。「「「「「Yahoo~」」」」」

 じゃらじゃら。「「Yeah~」」同じ世紀末風の衣装だけど、交換したのね。

 じゃらじゃら。「「「あわわわぁ~」」」

 革ジャン、前ははだけてる。

 どうせするなら、Tシャツ無しにならない。


 「あのさぁ~、ミス・テリー、そのメイク猫っぽくない」

 「そう、女豹めひょうだから、恰好かっこう良い」

 「そ、そうかぁ~、女豹めひょうかぁ~、怖いなぁ~」

 誰だぁ~、また余計な事教えたのぉ~。


 「かぴたんは、ライオンさんだよぉ~、がぉ~~~、恰好かっこう良い」

 ははは、かぴたんはやっぱり猫だね。

 「ぉぉぉおおお~~~、恰好かっこう良いぃ~~~」「え~へへへぇ~」


 ♪どっんどっとっと。「「「「「「「どっんどっとっと」」」」」」」

 じゃらじゃら。「「「「「Yahoo~」」」」」

 じゃらじゃら。「「Yeah~」」じゃらじゃら。「「「あわわわぁ~」」」


 「ミス・テリー、かぴたん、もういいよぉ~、30分後に休憩ね」

 「はいはぁ~い、ミス・テリー、かぴたん、こっちに来てぇ~」「「は~い」」

 「ミス・テリー、入れたよぉ~」「空自のくぅ~ちゃん、有難う」「違います」


 「ひっぷうぃっちマルル~、はっじま~るよ~」

 「何これ、知らないんですけど。内閣情報センターの私が」


 ♪「まーるまるまるまるまるまるま~」

 「はいはいはい、これ私っ」「あっ、これ私も歌いたい」「かぴたんもかぴたんも」


 ♪「まーるまるまるまるまるまるまぁ~~~」

 「お~、さすがの内閣情報センターの明乃あけの女史じょしでもご存知ない」


 ♪「「「宇宙にきらめぃ~く流れ星ぃ~☆」」」

 「こここ、こりはぁ~、まもちゃん、私のサーチにかからないなんて」


 ♪「「「ま~るかじりじぇ~とで、てーきをー撃つ~」」」

 「うっふ~ん、これはですねぇ~、アニメ『俺の妹がめっちゃ可愛い』の中のアニメ、『ひっぷ☆うぃっちマルル』のぉ~オープニング、『ひっぷ☆いんぱくと』ですよっ」


 ♪「「「魔法のくにから、地球のために」」」

 「なっ、・・・なんてこと、アニメの中、がはっ、不覚ふかくぅ~」



 ♪たかたん。だんだんだんだん、ぼんぼんぼんぼん。

 「ミス・テリー、かぴたん、休憩だよ、はい、ゲージを見てぇ~」


 ♪たんたんたんたん、ちゃからんらんらん、らんらんらん。♪「ふぅーーー」

 じゃらじゃら。「「あいあい」」

 お~~~、体が軽くなるぅ~、ゲージが最小径に。


 ♪「単純な言葉、重ねてゆく、もっと心は素直で~」

 「はい、・・・OFFにしてぇ~」じゃらじゃら。「「しゃぁーーー」」


 「中指は立てない。良く出来ました。15分だけ休憩ねぇ~、気分は」

 じゃらじゃら。「しゃぁーーー、NOノー problemプロブレム


 「かぴたんは」

 じゃらじゃら。「げへへへ、お尻でか星人、生贄いけにえにしてやろうかぁ~」

 きゃっきゃ、きゃっきゃ。「二人共大丈夫そうね」


 「あ~~~、しんど」床に座らせてもらうよ。

 あ~さくたんとはじめちゃんが、メインコントロールルームから出て来たね。

 取り敢えず、予備観測は終わりだ。

 さくっと、見てからトイレに行くか。


 皆集まって来たね。

 「所長、3か所の予備観測結果です。まずがけのデッキです」

 長方形の上に、コの字に低い壁の様な物が表示されている。

 そのコの字の中に、人が座っている様なかくかくとしたものが1体。

 コの字の外、その近くに人が立っている様なものが1体。


 「これは、状況を都合よく解釈かいしゃくするとγガンマとその友人かな」

 「おそらくそうだと思います。確認するにはこの後の本観測の結果を見ないと」


 「明乃あけの女史じょし慎重しんちょうな言い回し」

 「そう仮定すると、1度立ってる方がいなくたった後、もう1度誰か来るはずだよね、明乃あけのちゃん」


 「あっ、いなくなった」「早いね、時刻は」「8時31分ぐらいですね」

 「早送りして」「あっ、来たっ」「時刻は」「8時55分です」


 「戻して下さいっ、ほらっ、座ってた人が立って、小さなものを置きましたよ」

 「まもちゃん良く見てたね。おっ、来た何者かがもう一人を引っ張る様に連れて行くね。時刻は」

 「8時58分です」


 「3分急いでるねぇ~、これは明乃あけのちゃんの想像が当たってそうだね。はじめちゃん悪いけど、駐車場の終りの方を見せて、2体が四角柱、車に乗って移動するか見たいんだわ」

 「ええ、そうだと思います。この辺りですね」


 「四角柱は一つ、近付いてるね」「おっちゃん、消えたっ。車に乗ったっ」

 「だねぇ~、さくたん」「動いたちち」「終わったよぱぱさん」

 「動き出した時刻は」「観測ぎりぎり9時5分です」


 「はじめちゃん、交差点の絵を出して」

 「わかりました。4~5分で到達すると思うのでその辺りを」


 当初は駐車場の状況を見て、交差点の観測をするつもりだったが、どのみち駐車場の後の事象となるだろうし、桜花にまとめて処理させた方が効率が良いと言う事で、休息を5分に短縮して予備観測を先行させたのだ。


 最初の観測から30分しかっていない事もあって、ミス・テリーもかぴたんも元気いっぱいだった。

 「おちゃんっ、来た来たっ」

 T字に表示された道らしき絵に、縦棒のはしから四角柱が入って来て、がけを背にして右に曲がった。


 「所長っ、ルートATを右に行きました。どこが目的でしょう」

 「明乃あけのちゃん、それは次になりそうだね。時刻は」

 「9時10分です」「じゃぁ、俺トイレに行って来るよ」


 まずは本観測を行って、ここに現われた人物を確定させないと。

 じゃらじゃら。「「行ってらぁ~」」

 「おう、ミス・テリーとかぴたんも行っとくんだよ。次は長いからね」

 「ちち、セクハラ」「ぱぱさんセクハラぁ~」

 誰たよっ、余計な事ばっかり教えるのは。



 ♪「いもぉ~とよぉ~、ふすま一枚、隔てて、今ぁ~」

 がらんがらぁ~ん。すたすたすた。おっ、こりゃまた随分ずいぶんと古い選曲を。


 ♪「小さなぁ~寝息をぉ~たててるぅ~妹よぉ~」

 ♪「お前は、夜が、夜がぁ~明けると」

 ♪「雪のぉ~ようなぁ~~~」

 「いやぁ~~~~~~」「「「「「「嫁にはやらぁーーーん」」」」」」

 何なの、この子達はぁ~。「「「「「「「うぅ~~~」」」」」」」



 さくたんが窓から手を振ってる。終ったぁ~、早く解放してぇ~。

 「かぴたんっかぴたんっ、まだおねむしちゃだめだよ」「眠いぃ~~~」


 「ミス・テリー、ミス・テリー、頑張ってっ、所長が光出してるよっ」「寝る」

 「だめっ、ほら、ミス・テリーもかぴたんもゲージを見て」「「うにゃぁ~」」

 あああぁぁぁ~~~、軽くなるぅ~~~。


 「はい、いいよぉ~、そこでおねむしてて」「「にゃっ」」

 「まもちゃん、娘子隊じょうしたいの子達とミス・テリーとかぴたんを家に連れて行ってあげて」

 「「「「「了解っ」」」」」


 「皆聞いて、明日は喫茶NTRを臨時休業にします。私も今日は上に泊まります」

 「分かったわ、私も桜花の後処理をして、さくたんと上がるわ」


 床にへたり込む俺、恰好悪い。もうぅ~だめ、さくっと食べて寝たい。

 「明乃あけのちゃん、悪いけどさ、飲み物と食べる物、適当に置いてさ、上がって、俺もぉ~、くたくたで、冷蔵庫に食べ物飲み物を入れて、片付けは明日にしてくれない」

 「そうします。嫁には出しません」「はいはい」


 「じゃぁ~、ミス・テリー行くよぉ~、お風呂入ってから寝ようねぇ~」「うぅ~」

 「かぴたんも、つかまって」「ぅ~」

 「娘子隊じょうしたい撤退てったいします」どたどたどた。がらんがらぁ~ん。


 「ここへ置きますよ」「有難う明乃あけのちゃん、適当に上がって」

 俺はパスタとサンドを酎ハイで流し込むと、持参の寝袋にさっさと潜り込んだ。

 「お疲れ様です」

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