第13話 守ちゃん怒る

 常時ここを勤務先としている明乃あけのちゃん、はじめちゃん、まもちゃん、R18と聞いていた娘子隊じょうしたいの子達も喫茶NTRに駆けつけ、この前の量子探偵業務の結果を見る為に集まっていた。


 「何、・・・こいつ等、女の子を物みたいに、・・・捨てる。ふざけるなっ!」

 「まもちゃん、落ち着いて、皆も」


 「あれ、まもちゃん、ミス・テリーとかぴたんの護衛ごえいは」

 「今日は学校お休みで、家でさくたんと朝からゲームしてます」


 「大丈夫なの」

 「ええ大丈夫よ、桜花を戦闘モードに移行させてあるから、近付く者は灰も残さずレーザーで焼かれるわ」

 「なら安心ね」おいおいおい、一般人焼くなよ。


 「所長、どうします」

 「どうしますと言われても」「捕まえて下さいよっ」


 「まもちゃん、この動画は非公式非公開、証拠能力が無い事は知ってるでしょうよ。それに警官が共犯となると更に余計な抵抗が見込まれるし」

 「冷静に分析して、確固たる証拠を突き付けるしかないのよ、まもちゃん」


 「はじめちゃん、何とも思わないの」「そんな訳ないでしょっ」

 「だって、この二人今も生きて普通に暮らしてるんだよっ、素知らぬ顔でっ」


 「何時いつもの事でしょう。落ち着いて頂戴ちょうだい

 「明乃あけのちゃんさぁっ、・・・御免ごめん


 量子探偵業務で得られた動画は、裁判の証拠としての能力がない。

 まず量子探偵業務自体が非公式、理由は単純だ。

 先にも述べたが、過去をつまびらかに出来る事が他国の脅威きょういだからだ。


 加えて、裁判官は公務員、過去の判例に押し込めて処理しようとする。

 要するに、自分で責任を持たない、だから考えない。

 犯罪は似通ったものはある、だが一つとして同じ案件はないのだ。


 この3D動画は、自白じはくに追い込むインパクトはある。

 その時は広域捜査と言う事で、警官である俺の出番だ。

 だが彼らが言う、判例と言うテンプレートに当てはまる様な、考えなくてもいい、確かな客観的証拠がいるのだ。


 「この二人のDNAは、明乃あけのちゃん」

 「ミトコンドリアDNAが2パターン検出されているけど」

 「取ればいいじゃないっ」


 「どうやって、αアルファは既に不一致になっているのよ」

 「それだってすり替えたんでしょう。Δデルタが」


 「何を根拠に」「わかったっ、私が取って来るっ」

 「不正な手段で取得したものは、例え一致しても証拠として認められないわ。

それをしたら、もうDNAパターン自体が証拠能力を失いかねない」


 「じゃ、・・・無いじゃん」

 「DNAサンプルがする替えられた事を、証明しないと」

 「はじめちゃん、何か案があるの」


 「ん~~~、多分Δデルタがすり替えたんだろうけど」

 「Δデルタを自供に追い込む、あるいはαアルファを別件で捕まえて、Δデルタとの関係を自白じはくさせられれば、それを理由にΔデルタ拘束こうそくして自供に追い込めるかも、だけど」


 「そ~だ、明乃あけのちゃん得意分野でしょう。だますの」

 「得意言いうなっ、人聞きの悪い、業務上の技術です」

 なははははは、否定はしないのね。

 ん~~~、αアルファの別件、・・・ねぇ~~~。


 「そう言えばγガンマ失踪しっそう、何も確証はないし、この案件とは別に見えるけど、明乃あけのちゃんさ、αアルファの関与と連れ去りをうたがってなかった」

 「ええ、でも私の想像でしかなかったのですが、この結果を見て更に強く可能性を感じます」


 「明乃あけのちゃん、何か隠してるのかなぁ~」

 「そう言う訳では、ただこの案件を初めに聞いた時、被害女性のβベータ1よりも何も分って無かったので、それに警察が捜査そのものを放棄ほうきしている様に思えたので」

 「御免ごめんねぇ~、俺の同僚が働かなくて」「・・・別に警部補の所為せいでは」


 「明乃あけのちゃんのその何時いつに無く優しい口調からすると、何かつかんでるのね」

 「ちっ、何はじめちゃん、何か言いたい事でもあるの」

 「もうぅ~、止めて下さうよぉ~」「「はぁ~ん」」「「「「ん~」」」」


 「やぁーめてぇ、明乃あけのちゃん取り敢えず話してくれる」

 「わかりました。根拠こんきょなく安易あんいに結び付けたくなかったので、この量子探偵業務の前にうちが調べて報告をしたでしょう」


 「う~ん、毎回とても助かってるよ」

 「で、γガンマ失踪しっそうに関して、ご家族の証言が有ったんです」


 「えっ、γガンマの家族、γガンマが犯人でないと盲目的な」

 「はじめちゃんの言ってるのと、ちょっと違う。自殺の名所で遺留品が有った事から警察は、その周辺を捜索そうさくしました。しかし遺体どころか何も見つける事が出来なかった」


 「だったね。それを理由に罪を逃れる為の偽装として扱い、賞金まで掛けた。その後俺の同胞どうほう達は捜査を実質打ち切った」

 「なっ、何か可笑おかしくない警察の動き」「そうね可笑おかしいわ」


 「やっ、めて、俺をめないで、それでどんな証言が有ったの」

 「自殺の名所に残されていた遺留品に、γガンマの“財布と靴“があったと初めの報告書にあったと思いますが、γガンマがけまで運んだ親類しんるいによりますと、当時γガンマはサンダルきだったと」


 「なるほど、現場の状況と証言が食い違ってるね」「それと」「まだあるのっ」

 「はぁ~、γガンマのご家族は、捜索そうさくを続けて欲しい、履物が有ったのだから裸足はだしのはず、警察犬を出して欲しい、犬なら臭いで追えるだろうと」


 「お~、もっともだ。γガンマの犯行が確定したわけじゃない、まだただの一般の人だ。どうして出さなかったか分かったの」

 「はい、それがぁ~、

『家族としてのお気持ちはご理解できます。でもね。警察犬は数十分単位で数十万のお金がかかります。高いですよ。その費用はのちほどご家族の皆さんにお支払い頂く事になるんです。払えますか』、

と言われたそうです」


 「はっ、誰よ、そんな馬鹿ばかな事言ったの、警察犬の捜索そうさく費用を一般の人に請求する事は無いよ。そんな事してたら捜索そうさくなんて出来ないでしょうよ」

 「明乃あけのちゃん、誰が言ったか分かってるの、何か想像つくだけど」

 「はぁ~、想像の通りよはじめちゃん、ΔデルタΔデルタがご家族を丸め込んで捜索そうさくの継続をめさせたの、警察はこれ幸いと受け入れたわ」

 がっはっ、俺が言われてる感じ。


 「γガンマ失踪しっそうは、この動画の後、つまりαアルファΔデルタ共謀きょうぼうして」

 「と思う。でも目撃者、観測者がいない、もあもあとした霧の中、これも初めから量子事件なのよ、まもちゃん」


 「なるほど、今回βベータ1の量子探偵業務を行った事で、特定の事象に収束し始めたのね」

 「私はそう思うの、はじめちゃん」

 ん~~~、言われればβベータ1の犯行も、γガンマ失踪しっそうも何も確定した事項がないなぁ~。


 「じゃぁ~、γガンマ失踪しっそうと事象を確定させる事が、この女の子の犯人を確定させ、犯人逮捕に繋がる」

 「そう、だと思う、このままではαアルファΔデルタの犯行を知っているは私達だけで、法でさばく事が出来ないの」


 「わかったわ元締もとじめ、仕事ね」

 「違うわっ、いや、違って無いけどぉ、て、誰が元締もとじめよ、所長はこっち」


 「えええぇぇぇ~~~じゃぁ~言い直す、影の” 元締もとじめ”」

 そうだそうだっ、まもちゃんもっと言って。

 「ほぉ~、予算が取れないと、私のかっわいぃ~~~妹達が、人権の無い所に連れ去られて、口にするのもはばかられる様な事をされる、動物被検体ひけんたいにされても良いのまもちゃん、私は絶対に嫌っ」

 「ボス、仕事しますよね」

 変わり身早え~な。まぁ、俺もそれだけは絶対に避けたい。

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