第5話 予算がねぇ~

 「そう、ミス・テリーとかぴたんが眠くなる前にするから、進めといて」

 「はいっ」いい返事、カウンターに向かって親指立ててるよ。


 「「「やったぁーーー」」」きゃぁきゃぁきゃぁ。

 「「yeah~」」ぱん。「「yeah~」」ぱん。

 カウンターの中でハイタッチ、まぁ~いいけどねぇ~。


 かたん。「え~おほん。皆聞いて、大事な業務連絡があります」

 ぁ~~~、仕事早いなぁ~、すっくと立ちあがり、恰好かっこう良いぃ~。

 「かぴたんからの要請で、本日の量子探偵業務は」

 あれ、何かあったけ、あっ、改修後の。


 「アニソン縛りです」がたん。「はっ」何、それ、アニソン縛りっ。

 「やったぁ~~~」「「ぉぉぉおおお~~~」」

 「ちょっ、明乃あけのちゃんっ、アニソン縛り、ぇ~、公費なんですけど」


 「量子探偵事務所NTR所長、ちち須利亜すりあ警部補、あなたの安全を確保する為であり、3人がご両親に会えない、その寂しい想いを少しでも和らげて上げる。悲しい思い出にならない様にするのがここにつどっている大人達の義務だと思うんですよっ」

 「ぐっ」それを言われると。


 宇宙空間を移動する天の川銀河、その中を移動している我等の太陽系、その中で太陽の周りを公転する地球、更に24時間かけて自転する。


 桜花1、2を使い、これらを考慮して目的の座標を正確に計算し、重力波を用いて、過去の地球上のあらゆる出来事を観測する事が出来る。

 量子探偵業務は、他国にとって脅威きょういだ。


 政治、経済、軍事全てが筒抜けになる可能性を秘めている。

 3人の能力は脳をいじり、ロボトミー手術をほどこす事が出来ない。

 ゆえに心優しこの子達は、両親が拉致らちされ脅迫きょうはくを受ければ従ってしまうだろう。


 だが我国は軍事的に先手を取る事が出来ない、外交的切り札も持たない。

 事が起きてからでは遅い、そこで軍事的行動が取れるおこめ国とおうロッパの同盟国に、身柄の安全を確保してもらっている。


 と言うのは表向きで、実質的には人質だ。

 同盟国は全てのデータを共有する事、協力要請に応じる事で協力を得ている。

 人権のない国に連れて行かれるよりはましだ。

 会えるのは盆暮れ正月ぐらい。


 だけど一人ぐらいはヒール役がいないとな。

 「いやぁ~、でもね明乃あけのちゃん、公費、皆の税金だからさぁ~」

 「ふっふぅ~まさか、最終兵器さくたんを導入する事になろうとは、やりますね」

 明乃あけのちゃんは手招きをして、さくたんを呼んでるね。


 お~俺の前に来て、なっ何、俺の胸にそっと両の手のひらを置いて、俺を見上げる。

 「おっちゃん」どっ、どうした、目が、目がぁ~、うるうるしてるぞっ。

 「だめ、・・・なの」やっ、止めてっ、そんな目で見ないで、ねっ、お願いっ。

 「あっ、・・・ぅっ、・・・すっ、好きにしなさい」


 ぱんぱんぱんぱんぱん。あまりたたかないで、胸痛いから。

 「おっちゃん、ちょろぉ~い」

 「なっ」手練手管てれんてくだを教えてるのかっ。


 「ひゅ~ひゅ~」目を逸らすなっ、吹けもしない口笛で誤魔化ごまかすなっ。

 「明乃あけのちゃんっ」

 「おっちゃんっ、有難う。ミス・テリーもかぴたんも喜ぶよ」「おっ、お~」

 「皆、承認出たよぉ~、各部署に通達」「「らじゃぁ~」」


 かつかつかつ。すたすたすた。「ねっ、簡単でしょう」「ちょろぉ~い」

 ふんがっ。「次は引っかからないぞっ」




 「さてとっ、さくたん。ちっ、一応はじめちゃんとまもちゃん、具体的な手順はどうする」

 「明乃あけのちゃんさぁ~、もういちいち舌打ちするのめてくれる。うざいから」


 「はっ、何それ、さくたんは私の妹なの、他の人は触っちゃだめ」

 「はぁ~、さくたんは、わ、た、し、の妹なの」

 「ちょう、二人共止めて下さいよぉ~、3人は皆の妹ですよ」「「は~ん」」


 カウンターの中で打ち合わせを始めたのぉ~、そんな狭いところでしなくても、隣のメインコントロールロームの方が広いのに。

 何のかんの言っても、熱心なんだから。

 「皆っ、3人の為にも、一丸となって実績と報告書をあげよう」

 ん~、俺っていい上司。


 「「「「べぇ~~~~~~」」」」何でだよっ、さくたんまで。

 あ~~~もういいよ。

 この後、過酷かこくな重労働が待ってるからな、体を休めとこぉ~。

 ごと。ぎしっ。ふぅ~~~、この椅子に座ってられてる時だけが安らぎだよ。


 「私は誰の妹でもないからっ、それにミス・テリーとかぴたんはぁ~、私のいもぅ~とぉ、だからぁ~、きゃはぁ~~~」

 「「「うっ、・・・うぅ~~~」」」


 「なっ、・・・泣く事ないでしょう」

 「うっ、ぞれで、・・・う~~~」「ひぐっ、どう、・・・ぅわぁ~~~」

 「わたぁ~、わた、・・・しは、う~~~ぁ~~~」ずずずず。


 「わっ、わかったから、妹で良いです、妹にして下さーーーい」

 「ほんと」「やっぱなしぃ~、とか言わない」ずずずず。「う~~~」


 「うん」

 「私が思うに、山の中とは言っても林道だし、道沿いにはまばらだけど民家もある事を考えると、それこそ真っ暗な夜中だと思の」

 「一理いちりあるはね、明乃あけのちゃん。でも桜花を動かすには、もう少し具体的な時間的範囲が欲しいの」

 「遺棄の現場は山の中ですよね。訓練とかで入ると23時には真っ暗ですよ」


 「まもちゃん陸自だもんね。じゃぁ~はじめちゃん、6月30日23時から翌7月1日の3時まで、4時間の範囲を低解像度で、遺棄現場を予備観測できない」

 「ぁ~なるほど、車なら低解像度でも形が分かると思うわ」

 「えっと、あの」


 「そうですね。それでもう状態を確定させて、時間帯を確かめる」

 「ぁ~まもちゃん」


 「そう、その時間帯を中心に最高解像度で再観測すればいけるんじゃない」

 「あの、明乃あけのちゃん」


 「じゃぁ~、中心となる時間帯の前後30分、計1時間」

 「はじめちゃんっ、はじめちゃんてばぁ~、置いてかないでよぉ~」


 「お~ごめん、お姉ちゃんの胸においでぇ~」「嫌っ、それはいい」

 「分かったわ、今晩ね」「「なっ」」「来るなっ」「「ほっ」」


 「でも死体のあった川床かわどこから、遺棄現場の橋は、高さ2mぐらいあるんでしょう」

 「そこなのさくたん、だから遺棄現場の橋と川床かわどこ

 「その途中、申し訳ないですけど、遺棄され、川床かわどこまでの軌跡きせきも観測したいですね」

 「あ~そうね。まもちゃん、明乃あけのちゃんはどう」


 「3回かぁ~、予算がねぇ~」「もう出したの」

 「まだ、ぎりぎりまで粘る方だから」

 「機密費からでしょう。何とかならないんですか」


 「最近厳しくてねぇ~、これまで出来るだけ国防に関係する事に、さくたん達を巻き込まない様にして来たんだけど、おこめ国やおうロッパの重力波望遠鏡を使わせてもらってる手前、断り切れなく成ってきてるの」

 「私は大丈夫、ミス・テリーとかぴたんもきっと大丈夫、それに今の私達の居場所、ここしかないし」


 「さくたん、御免なさい。頼り無い大人で」「「・・・」」

 「OK~、予備費から引っ張る様に交渉する。もともとざるなんだから、じいさん達の遊興費ゆうきょうひなんかにさせないっ。国として国民の生命を守る最低限の事ぐらいさせて見せるわっ」

 聞こえてるよ明乃あけのちゃん、お客、いなくて良かった、熱くならないでね。

 しかし耳がたいわぁ~、まぁ~、俺で取れる責任は取るよ。

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