第22話 領民を救え！
「伯爵様！！
時間はすでに深夜だというのに、屋敷の門の前で誰かが叫んでいる。私もアースもその声に飛び起き、何事かと顔を見合わせる。
「…訪れてきた人物はどうやら、この領地内の民のようだが…」
遠目に様子を見てきたらしいジンさんが、私たちにそう告げた。
「…とにかく今は、会ってみるしかないだろう。他でもない、伯爵たる私の大切な民であるならば尚更」
アースのその言葉に、ジンさんはやや否定的に返事をする。
「しかし、敵の
…正直私も、その可能性を
「…その時は、お前が私たちを助けてくれるんだろう？ジン」
「無論だとも」
アースの問いに対し、力強く返事をするジンさん。
「なら、やることは決まっているさ。助けを求めている民を助けなくて、伯爵など務まるものか」
アースの言葉に、私も力強くうなずく。私たちは急ぎ、屋敷の門前へと向かった。
「伯爵様！何卒お助けを！！！」
「っ！？」
訪ねてきた人物の姿を見て、私は
「どうなさいました？なにがあったのですか？」
アースが優しく問いかける。その女性は涙目になりながらも、
「私の母が…たった一人の家族である母が、重い病気なのでございます…知り合いの治癒師に診てもらっても、ここではどうする事もできないと…中央にさえ行けば、特効薬が手に入るとのことなのですが、私にはどうすることもできず…」
涙ながらにそう懇願する彼女は、彼女は再び頭を下げ、大きな声で叫んだ。
「伯爵様！！どうかお願いします…母を…どうか…！！」
その姿を目に焼き付けたアースが、冷静に返事をする。
「…事情は理解しました。少しばかり、時間を」
アースはそう言うと彼女の前から下がり、私とジンさんに手招きする。私たち3人が集まったところで、アースが口を開いた。
「…中央には、認められたものしか立ち入ることを許されない。彼女はきっと、考えうるすべての事を試したが、どうしてもだめで、それでここまで来たのだろう」
私とジンさんは、それに
「…私の立場を利用すれば、特効薬など難なく手に入る。しかし…」
口をつぐんだアースのその先の言葉を、代わってジンさんが続ける。
「それをしてしまうと、噂話は
「そ、そんな…」
助けられる薬が存在しているのに、それを使えない。こんなに悔しいことがあるだろうか。
「アース、助けてあげようよ！早くしないと手遅れになっちゃう…！」
「もちろん、僕もそうしたいんだけれど…」
私の訴えに警告するように、ジンさんが口を開く。
「アースは立場上、中央に信頼に足るような知り合いを作っていない。もしやるなら、自分自身でやることになる」
「…っ！」
…それぞれの思いが交錯し、なかなか答えが出ない。…こうしている間にも、彼女の母親は病魔にむしばまれているというのに…
…そんな時、不意に私の頭の中に一つの可能性が浮かんだ。私は実現の可能性も思案せず、ただ感情のままにその考えを二人に発した。
「あ、あの！こういうのはどうでしょうか…！」
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