第70話
これでクラス全員を取り戻した。
後はこの時代から元の世界へ戻るだけだな。
「風ノ助くん! 大変だ!! すぐに来てくれ!!」
後ろの方から楠田先生の血相変えた声が聞こえた。
それからドタドタと大勢の足音が聞こえる。
「おおーーっ! 風ノ助くん! ありがとうなーー!!」
「ありがとう!!」
「ふっ、君に救われたよ」
振り向くと、楠田先生がもみくちゃにされていた。クラス全員に……。
風の絨毯でみんなを運んで。さあ、出発だ!
道中。
天使の空間の中で、楠田先生が不吉な事を言いだした。
「歴史の教科書が盗まれたんだ! それをモールス信号で知ったんだ! モールス信号は天使の空間でもちゃんと繋がるんだね。それにしてもどうしてだろう? 実は歴史の教科書はぼくがある城の中の信用できる人物に隠してもらっていたんだよ」
「先生。歴史の教科書って、タイムスリップ以外でも、なんかできるんッスか?」
煤野沢はいつも通りにヘラヘラとしている。
楠田先生は初めて動揺を隠しきれないといった顔だった。
「ああ……。時間が止められるんだよ……」
「えっ、ええええええーーー!!」
「マジか!?」
俺と煤野沢は同時に驚いた。
時間が止められる能力があるのなら、かなりマズイ……。
どんなに攻撃しても防がれたり避けられる。
でも、誰が盗んだんだろう。
歴史の教科書を隠した楠田先生が信用できる人って?
「とにかく、危険だが一旦仙台城へ戻ろう」
楠田先生の一言で、俺たちは全員を乗せた風の絨毯で仙台城へ向かった。
少し移動速度を速めると、松島湾から仙台城の外観が見えてきた。
おや? 何か変だ……。
煙が至る所から上がってる!?
仙台城はぶすぶすと黒煙を上げて、殺気だって抜刀している御家人たちが走り回っていた。
「一体!? どうしたんだ!?」
楠田先生が近くの御家人に聞くと。
「ハッ! 秋華 立夏さまと内山 豊子さまが攫われました!!」
「な! なんだってーーーー!!」
俺は仰天し辺りを見回した。
「マジ? 誰が攫ったんだよ!?」
煤野沢が珍しく本気で吠えた。
「はあ、お二人共目前にいたのですが。一寸も目を離していないというのに、いつの間にか忽然と消えてしまいました!!」
…………
大広間に集まった俺たちと家来たちは、事の次第が思ったより深刻なのに驚いた。
「これはきっと、歴史の教科書で起こした時間停止だよ! 風ノ助くん! すぐに家来たちを全員避難させてくれ!」
「うん?」
「なんでなんスか? 先生?」
「ここからは、大変危険なんだ。相手は時間を止められるから、犠牲者がたくさんでてもおかしくないんだよ」
外廊下の松の木が風で揺れ動いた。
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