第62話

 数分後、大広間には、急に光りだした謎の女中と俺たちが集まった。


「なるほど、そうだったのか。私の考えとまったく違うんだな……」


 天使との話で楠田先生が唸った。

 煤野沢はなんのことかわからないはずなのに、ふんふんと頷いているばかりだ。

 深刻な顔を見合わせている重臣たちも、きっと何のことかさっぱりわからないだろう。


「そうです。今の食い違いだらけのまま歴史が進むと、元のあなたたちの現代には決して戻れなくなります。それどころかこの時代が壊れてしまうのです。これは楠田先生が書いた歴史の教科書のためなのです」


 大広間が騒ぎ出した。


「え?! 楠田先生が書いたーー!!」

 

 俺は混乱した。


「ああ、みんなには言っていなかったね。私はこの時代を生きていたんだ。何度もね。風ノ助くんたちの時代より少し前の世界から来たタイムトラベラーなんだ」

「……なん??」

「へ……?」


 俺と煤野沢は首を傾げた。

 一体、何のことだか……?


「私は最初はこの時代へと旅行で来たんだ。旅行気分でタイムスリップして歴史を学んでいたら、急に風ノ助くんがこの時代にやって来てしまった。それから時代が微妙に変わってきたんだよ。私は風ノ助くんを危機から守っていたんだが……。すっかり忘れているからねえ。それをもう三回は続けているかな? 風ノ助くんも知らない間に時間を行き来したんだよ。そして、今では何故か海賊までが現れてしまった」


 へ……?

 俺は記憶力は最悪だけど……?

 この時代にタイムスリップしているって……?

 全然覚えていないぞ!!

 

「君は多分、天然のタイムトラベラーなんだ……」

 

 楠田先生の言葉で、俺の記憶が津波のように蘇った……。

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