第63話

「ほら、君が10歳の時にこの時代に来たとき、厠で用を足していると、蛇がでたのを覚えているかい? その時、私が助けたんだけど、君は確か大泣きしていたよね……」


 嫌な事が起きたわけじゃないし……。

 いつも楽しいのに……。

 何故かこの時代に来てしまう。


 そう、小さな頃から……。

 何度もだ……。


 楠田先生とはじめて出会ったのは、多分10歳の頃だ。

 この時代の仙台城で……伊達政宗だった俺と出会っていた……。


「なんで、俺は伊達政宗になっていたんだろう……?」

「さあ、何か強い縁があるんじゃないかな?」


 俺は何故か涙を流した。

 外廊下の風になびく松の枝葉もなにやら優しそうに静かになった。


「それは……風ノ助。あなたは現代では伊達政宗の唯一の子孫なのです……例えあなたがこの時代に遥々来なかったとしても海賊たちは来ていたでしょう。そう、これはもはや日本の歴史の危機なのです」


「へえ、歴史の危機か。やっぱり私のせいなのかな……。どうりで……」


 楠田先生が何故か懐かしそうだった。

 俺の肩に煤野沢が手を置いていた。

 不思議と熱いものが俺の心に芽生えた。


「さあ、私たちと歴史の教科書を守るため天使たちと戦いましょう。そう、時の平定者と……」


 天使が俺を慰めるかのように言った。

 俺は涙と混乱を振り切って立ち上がった。


「そういうことならー、伊達政宗の全戦力をぶち込んでやるーー!!」



                                 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る