第60話

「うおおおおおおー!!!」


 と、俺は手っ取り早く厨房へと来ていた。

 目の前にホカホカとした白米の御櫃おひつがあった。まだ煤野沢が食べていない。


 御櫃の隣にある鍋には仙台味噌の味噌汁。まな板の上には千切りにされた野菜があった。そして、今使われた包丁を握っているのは、この厨房で一番怖い女中だった。


「政宗さま~」

「うん……」


 早速、鍋に顔を突っ込んだ俺は、命の危険を顧みずに食べていた。


 ふー、冷や汗ものだぜ……けど、美味いぜ!


―――――


「なあ、急に大勢来てしまってすまないな。俺のクラスメイトたちさあ。結構食べるだろ?」

「お気遣いいただきありがとうございます。それより、政宗さま。ほら、あそこの人。ここ厨房にいつの間にかいたんですよ」

「む……。ほんとだ」


 俺は厨房のことなら誰よりも詳しくなった。

 奥の方に、今まで見たことのない女が一人いた。

 みんなから少し距離を置いているが……。

 む! 俺にはわかる! その女の人は完全に気配を消しているんだ。なのに、この怖い女中さん。どうして気配を消していた女中のことがわかるのだろう?

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