第59話 歴史と天使と教科書と

「政宗さまー! 昼餉の準備はとっくにできていますぞーーー!!」


 重臣の声で、俺は布団から慌てて飛び起きた。

 速攻で部屋を出ると飯が食える広間まで突っ走っる。

 途端に柱に激突。

 そういや、俺は今は……片目が見えなかったんだなあ。


「痛ってええええええ!!」

「アハハハハ!」

「痛そうー……」

「お前大丈夫か?」


 廊下にはクラスメイトが数人。倒れた俺の顔を覗いていた。


「楠田先生から全部聞いたよ。風ノ助。この世界では伊達政宗になっていて片目が見えないってね。不思議だけど……お礼を言わせてくれよ!」


「いや……俺は……ただ……」

「ありがとうね」

「ありがとう」

「ほんとありがと」


 俺は照れくさくて、すっくと立ち上がった。

 

 ただ……。


「うおおおおおおー! 飯ーーーーー!! みんな後でなーーーーー!! 昼餉の匂いはどこだーーーー!!」


 飯が食える広間の場所が、未だによくわからなかった。

 ……勝手に俺の分まで食べてしまう煤野沢のせいだった。

  

 だから、飯の場所はいつも城中探し回っているんだ。

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