第52話

「あー、早く帰りてえなー。ほんとにこんなところに……があるのかい?」

「ああ、それは間違いねえ」

「それにしても、飯だの。解放しろだの。風呂だの。ギャーギャーうるさい人質たちの声は聞こえねえし、静かなもんだなあ」

「ああ、静かなもんだなあ」

「俺はもう寝るぜ……腹いっぱいだし、眠てえぜ」


 俺は聞き耳に更に力を入れた。

 クラスのみんなは一体どこにいるんだ?


 ゴォ――……。ゴォ――……。ゴォ―――。


 野郎どもの一人のいびきが聞こえる。だが、微かに……。


「でも、もうすぐ本船でも静かになるなあ。ありゃ食いすぎだなあ。食料もなくなってしまうからなあ」

「ああ、食いすぎだなあ。それにもう、人質もいらないからなあ」


「う?! ……ん」

 俺は座敷牢の壁に耳を押し込んで、次の言葉を待った。


「すでに潜伏してある奴が今頃……なあ。だから、本船は今は太平洋の中央の空間へ向かって……天使さまのお力を……」

「もうすぐか……なら、ここから出たら早速……」


 俺は見張りについた家来の一人の小耳に今聞いたことを話し。すぐさま座敷牢から出してもらった。


 本丸を出ると、風を呼んで太平洋に向かった。


「待ってろよーー! 今行くぜーーー!!」

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