第13話 

 海賊の頭のサーベルが後方へと吹っ飛んでいた。

 煤野沢だ。

 たった一振りでサーベルをふっ飛ばしてしまうなんて。

 奴は刀を振り回して笑ってやがる。


「マジモンの剣術っても簡単だなー」

「ガキー! 俺のサーベルを返しやがれー!」

 

 今となっては後ろの地面に突き刺さったサーベル。

 煤野沢はニコニコと刀の切っ先を海賊の頭の目の前に向けた。


「チャンバラごっこはおしまいだよ」


 薄く笑っている煤野沢は、仲間? でもある俺でも怖かった。


「……ふっふっふ。小僧。覚えていろよ」


 海賊の頭が震える声を発し、海に浮かぶ海賊船の方へと脱皮のごとくに走って行った。


「風ノ助。楠田先生がダチを助けるミーティングの続きをするって。俺、欠席な。天守閣ってところで寝ているから」


…………


「はぁー」

 かなり疲れたな。

 俺は呼吸を整えた。

 思えばここへ来てから走りっぱなしだったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る