ちょうだい? ――Part4.
希望は悩んでいた。
一体何があったのかというと、その日の中休み、クラスの女の子と気まずくなってしまったのだ。
お互いに自分の名前にコンプレックスがあるとはいえ、希望は自分の名前が大嫌いというわけではなかった。
なんなら、小学校の時まではこの、深い意味の込められた自分の名前が大好きだった。
だけど。
今思い出しても、悔しくなる。悲しくなる。泣きたくなる。
友達の陰口。
『希望、は、キラキラネームだよねぇ』
『それな? 読めねーっつーのー』
『ほんとほんと』
希望、という名前はかなりたくさんいると思うし、キラキラネームには程遠いと思う。
けれど、今まで信頼していた友達に裏切られるという出来事は、希望の心を容赦なく傷つけた。
それから、希望は自分の名前を他の人に言うのが怖くなっていた。
陰口を言った子たちとは今もまだ交友関係があるけど、あの子たちが自分に向ける笑みは、どうも本物じゃない気がする。
ともかく、華彩ちゃんの名前、希望は素敵だと思っていた。
華やかで、彩りゆたかな名前。
そんな素敵な名前でコンプレックス、持つこと、ないのに。
なにより、希望は華彩が、自分が陰口を言われた時みたいな気持ちになっていないかが一番心配だった。
ある雨の日、ああ、また明日も華彩ちゃんと会うのか、思うと少し気が重かった。
傘を差したまま、マンションの廊下を歩く。
希望は3階に住んでいて、同じ階には華彩だって住んでいた。
そういえば、あと半年ほどでこのクラスも終わりだ。
なんの前触れもなく思い出す。
仲良し四人組が解散してしまう。
華彩と希望は寺田東中学校。
莉和と小雪が寺田南中学校。
それまでに――
続きは、悲しくなって考えられなかった。
もうすぐ家、というとき。
前方から慌ただしい息遣いと、大きな物音が聞こえてきた。
顔をあげると、見知った姿に声が出た。
「華彩ちゃん?」
華彩ちゃんははっと顔を上げた。
ふいに、華彩ちゃんの顔が泣き出しそうに歪んだ。
耳から雑音が消えた。
雨が小降りになった瞬間、なぜか、今だ!と思った。
華彩と目が合う。
大きく息を吸う。声を出す。
「ごめん!」
◇ ◆ ◇
希望は、あのことを思い出すといつも、良かったと思う。
(華彩ちゃんが誰かと一緒じゃなくて良かった。もっと気まずくなるところだった)
それにしても、あのときなぜ、華彩は慌てていたのだろう。
質問はしないけど、やっぱり、希望は疑問だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
意味コワ、分かりましたか?
ヒントは、「タイトルはミスリード」です。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。次はエピローグです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます