元カノ+部長+後輩=?
生きてます。
あと、更新ペースが落ちます。
ついでに、文字数が減るかもしれません
―――――――――
誤魔化し方が明らかに不自然だったが、深く追求することはなく部屋に積まれている段ボールの開封に取り掛かる。
一切、空けられた形跡のない山の一番てっぺんから一箱下ろしてくる。
頂点にあったからか、異様に軽い。
恐らく中身はすべて衣類だろう。
そう予想しながらガムテープをはがし、開けてみると案の定だった。
くるまれた下着が綺麗に並んでいる。
俺を呼びつけておいて、何故か俺の真正面で一緒に箱を覗き込んでいた先輩が驚きの声を上げる。
「ファ!?」
「これ、どこに仕舞えばいいですか?」
「こ、これは僕がしまうよ!」
俺から箱をひったくって、バタバタと部屋に運ぶ先輩。
それを見届けることなく、次の開封作業へ移る。
食器も調理器具も用途が分かるし、キッチンの間取りなどは俺の部屋と同じなので、そこからはサクサクと進んだ。
相も変わらず、先輩は作業を手伝わずに俺を満足そうな顔で見ているだけだった。
俺を見ることの何が面白いのかは分からないが、問題があるわけでもないので放置していた。
だが、そんな先輩も働く時が来た。
「先輩。この、本とかは並べ方分からないので自分でしまってください」
「えっ? 僕、適当に本棚に並べてるから並べ方とか分からないよ?」
「………」
「並べてくれるの? ありがとう!」
黙々と作業すると、本を本棚に全て納めるのにそこまで時間はかからなかった。
最後の本を仕舞い終わって、ふうと息を吐く。
単純作業で固まった体をほぐそうと、ぐっと伸ばすと、パソコンに向かって真剣な顔で文字を打ち込んでいる先輩の姿が見えた。
俺は先輩の邪魔をしないようにそーっと部屋を出て静かに扉を閉める。
そして、何か茶菓子とお茶でも持っていこうと思い、キッチンの戸棚を覗いていると――インターホンが鳴る音がした。
運悪く、丁度戸棚の手前に置いてあったお菓子を両手に抱えているところだったので、一旦それを下ろしてからインターホンへ向かう。
すると、先輩が既に来客に対応しているところだった。
カレンダーの明日の日付に赤い丸のしるしが付けられているのが見える。
〆と書かれているので、恐らく担当編集が原稿を取りに来たと思ったのだろう。
迅速な反応を見るに、原稿が途中なのだと分かる。
その割に、インターホンの画面を覗く顔に焦燥は見られない。
普通に来客みたいだな。
「先輩! 俺が対応しますから、先輩は部屋に戻って原稿の続きを書いてください。締め切りは明日ですよね?」
「後輩君。知らないのかい? 締め切りには予備に確保している日というものがあってだね……」
「はいはい、ドヤ顔で言う事ではないですからね。早く部屋に戻りましょうね」
先輩の肩を押して部屋に押し込んでから、はーいと返事をしながら玄関に向かう。
扉を開けてから、そういえば宅配だったらハンコを取りに行かないといけないなと思い至りながら、顔を上げると……。
「すみません。本日、近くに引っ越してき――」
「あ」
扉の外で紙袋を持って待っていた人達と目が合った次の瞬間、バタンと扉を勢いよく閉め、扉に背を預けながらふぅと息を吐く。
……なんでいるんだ?
一夏達と視線が合った。
「凄い音したけど、大丈夫?」
心配そうに先輩が部屋から顔を出す。
なんでもないと手を振って部屋に戻るように言う。
「軽くぶつけただけですから、先輩は仕事に集中してください」
「ぶつけた!? 大丈夫なのかい!? どこをぶつけたんだい!?」
適当にあしらうために言ったはずが、逆に食いついてきてしまった。
ぺたぺたと心配そうに怪我の有無を確かめている。
特に頭を重点的に調べていて、背伸びした先輩の胸にぶら下がっているものが目の前を上下に揺れ動いていて、とても目に毒だ。
しかも、襟元が緩い服を着ているので、大分危ないところまで見えてしまっている。
「せ、先輩……」
「どうしたんだい? やっぱりどこか痛むの!? ……!」
俺の視線の先を追った先輩が袖口から大きく見える胸元に気付いて赤面する。
そして、バッと体を抱きかかえるように服を押さえて、胸元を隠しながら後ずさりして、部屋に戻っていった。
顔だけ扉の外に出して真っ赤な顔のまま、睨みつけてくる。
「せっかく心配したのに! もういいよ!」
へそを曲げてしまった……。
まだ脳裏に焼き付いている先輩の姿を、頭を振って必死に掻き消そうとしているとゾッと背筋が凍った。
扉の方から感じる圧が増し、いつまでもこうしてはいられないぞと暗に伝えてきているようだ。
深呼吸をし、決意を固める。
しっかりと前を向いてドアノブに手をかけ、一瞬の躊躇を断ち切るように力強く扉を開く。
―――つもりだったのだが、俺が扉を押すよりも前に誰かが扉を開けたのか、扉ごと体がぐっと前に引き寄せられてバランスを崩してしまう。
しかし、幸いにも扉の前にいた人のおかげで転倒は免れることができた。
倒れこんだところを受け止めてくれたらしい。
顔が柔らかいものに包まれている。
「ちょ、ちょっと…!」
俺は崩れた態勢を直し、胸から顔を引きはがす。
一夏は手を胸の前で握りこみ、内股でもじもじとした様子で少し恥ずかしそうに上目遣いで見上げる。
「け、怪我がなくてよかったわ…ね…」
「助かった。ありがとう、いt――」
「いつまでうちの娘に触れているつもりなのかね?」
静かな声が鳴り響いた。
声が大きいわけではない。むしろ、控えめといっていい声量だ。
よく通る声というわけでもないだろう。
しかし、その声はすっと俺達の意識に入り込み、無視することは許さないとばかりに意識の焦点を声の主へと向ける。
その声に導かれるように左手を向く。
そこにはビジネススーツをピシッと着こなした男性がいた。
出で立ちはサラリーマンといった様子なのに、俺の感覚が受け取る印象は、紳士であった。
彼は鋭い眼光で俺を睨みつけながら、再度口を開く。
「そろそろ娘を離したまえ」
「は、はい」
「あ……」
男性が醸し出す雰囲気に気圧された俺は一夏の肩においていた手をパッとどける。
一夏は一瞬名残惜しそうにしながらも、すぐさま何でもないように取り繕った。
「……お久しぶりです…お父さん」
「君にお義父さんなどと呼ばれる筋合いはない」
黙っているのは得策ではないと思い、とにかく話しかけてみようと声を発すると、バッサリと切り捨てられる。
「え…と、水谷さん。10年ぶりでしょうか……?」
「ああ。君がうちの娘を捨ててからな」
水谷さんとの間に沈黙が横たわる。
「ちょっと! パパ!」
「一夏は黙っていなさい。他の子も今は口出しをしないでもらいたい。これは彼と私達、親の話なのだから」
その台詞に、一夏達は黙らざるをえなかった。
しかし、その中で一人、その言葉を聞いても怯まない人物がいた
「あの…そもそも、ここって先輩の部屋じゃないのでは……?」
「そういえば……隣の部屋だったはずだが?」
その言葉で、水谷さんに疑念の目を向けられる。
さらに、黙り込んでいた一夏達もまさか……というような目で見つめてくる。
とはいえ、まだ確信には至っていないだろう。
大丈夫だ。まだ誤魔化せる。
先輩の家にいたなんてことが、水谷さんに知られれば彼の怒りはますます増すだろうことなんて簡単に予想がつく。
それは避けたいところ――。
「後輩君。さっきは怒鳴って悪かったね……でも君の方にも非はあるt――」
時間をかけ過ぎたのか、戻ってこない俺を心配した先輩が部屋から出てきてしまった。
先輩の格好を目にした水谷さんの表情がどんどん険しくなっていく。
……どうしよう……。
処女厨、中古はお断り ワナビ擬き @Aither
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