第3話 暗い公園遊び

 夜の公園なんて初めてだ~!

 しかも、貸し切りだよ!

 この遊具、全部、僕が好きなように使っていいんだ!


 嬉しいな~!

 吉祥君の制服を間違えて着たおかげで、こんなに楽しい思いが出来るなんて、僕って、ラッキーだね!


「待ちなさい!」


 おばさんが、息切らしながら、追いかけて来た。

 かかとの高い靴なんか履いているから、走り難いんだね。


「待たないよ~、こっちこっち~!」


只志ただし、見てないで、手伝ってよ!」


 おばさんは、おじさんに怒った。

 おじさんの名前、ただしって言うんだ。

 あまり正しく無さそうな事しているのにね。


「おばさんも、おじさんも、僕を捕まえて!」


「おばさん......ですって!」


 おばさんと呼んだら、怒った!

 お姉さんの方が良かったのかな?

 でも、僕のお姉ちゃんと比べて年取っているし、やっぱり、おばさんだよ。

 2人で追いかけてるけど、僕、足だけは速いんだ!


 おじさんは、太っちょであまり走った事ないみたいで、足が遅いけど、おばさんには追い付かれて、腕を取られた。

 でも、僕が、おばさんの手を振り払ったら、おばさん、コケちゃった!


「痛い.....」


「おばさん、大丈夫?」


 僕のせいだったから、走るの止めて、おばさんの足の様子を見た。

 膝から血が出ていて痛そう。


「こんなに走って、足を怪我するなんて、子供の時以来だわ......」


「僕もね、よく怪我して、ママに怒られるんだよ。でもね、ちゃんと、その後、治るおまじないしてくれるの。おばさんにもしてあげるね。ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んでけ~!」


 おばさんの怪我した膝に、ママがするようにおまじないをかけてあげた。


「今でも、まだ、その言葉有るんだ......」


 おばさんが、それまで見せた事の無い、優しい顔をした。


「どう?おまじない、効いた?効いたよね!じゃあ、一緒にブランコ乗ろう!どっちが先に高く行けるか競争だよ!」


 僕は、おばさんの手を引っ張って、ブランコに誘った。


「ブランコだったら、負けないわよ!これでも、私、山猿と呼ばれてたんだから!」


 おばさんが、よく分からない自慢をしてきて、急にヤル気満々になってる!


「おばさん、スゴイ~!」


 僕よりずっと早く、一番高い所まで漕いでいた!


「でしょう?昔は、この状態で、ポンと飛んで着地してたわ」


「それは危ないよ~!」


 僕は、おばさんが飛んで、また怪我を増やしそうで止めた。


「今は、しないから!こんな足だしね」


 おばさんは、怪我した片足を上げて見せた。


「おばさん、悪い人じゃないのに、どうして、こんな誘拐みたいな事してるの?」


 僕には、おばさんは、悪い人に見えなかった。

 おじさんだって、恐そうに見えるだけかも知れない。


「真佑君と同い年の娘が癌で、新しい薬を使ったら治せるかも知れないけど、保険効かないから、今すぐ、沢山お金が必要なの」


 急に、おばさんの表情が変わった。


「お金だったら、銀行が貸してくれるんじゃないの?」


「借り過ぎているから、もう貸してくれないの。貸してくれる所も有るけど、そこで借りたら、私達が一生かかっても返せなくなってしまうから」


 僕を吉祥君と思って誘拐したわけは、子供を助ける為だったんだ。


「娘は、ずっと、入院していて外の空気も吸えないのに、他の子供は楽しそうでズルイと思ったから、同い年のお金の有る吉祥君を誘拐したの」


「僕も、おばさんの子供、助けてあげたい!」


 僕がそう言うと、おばさんが驚いた顔をした。

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