第2話 真佑君ごっこ
あれっ、気付かれてない?
マスクしているからかな?
帽子もしてるから、目だけしか出て無いし、違う髪型も隠せているからだね。
「
えっ、そんな事したら、真佑君じゃない事がバレる!
何とか言い訳しないと。
「ううん、僕、今日は幼稚園のままでいたい!」
真佑君だったら、家でも幼稚園とあまり変わっていなさそうで、真佑君の言いそうな感じで言ってみた。
どうかな?
「そ~なの?そんな時も有るわね」
真佑君のお母さん、すごく緩い!
ちゃんと僕の言い分を通してくれるんだ。
真佑君は、いいな~。
こんな優しいお母様で。
「ありがとう、お母様」
「お母様......?どこでそんな言葉を覚えたの?」
つい僕の家みたいな気持ちで言っちゃった!
バレて無いかな?
「あっ、うんとね、学校で、そう言っている子がいたんだ~」
「そうなの?でもママの柄じゃないわね~!びっくりしちゃったわ!」
豪快に笑う真佑君の母親。
何だか、優しいし、暖かい人だな~。
思っていた通りだ!
真佑君って、僕と違って、いつも楽しそうな顔しているから、きっとお家でも楽しい事いっぱい有るんだろうなって思っていた。
だから、真佑君がどんな生活しているのか知りたかったんだ。
でも、まさか、僕の思い付きが、こんなに成功するなんて思わなかった!
幼稚園の帰りのバスとかお迎えの時点で、先生に気付かれてしまうと思っていたのに。
僕と真佑君は似ている......
って気付いているのは、僕だけ?
だから、入れ替わっても、マスクと帽子で目しか見えてないから気付かれないような気がしていた!
そういうの思い付いたら、実行したくなるのが、僕の性格。
体操服に着替える時、わざとゆっくりやって、クラスのお友達が皆、外に出ちゃったタイミングで、僕と真佑君の制服を入れ替えたの。
もしかしたら、戻って来て着替える時に、名札を見た真佑君に気付かれるかも知れないと思ったけど、真佑君は僕よりずっとおっとりさんだから、気付かれなかった。
いつ気付かれるかとドキドキだったけど、誰も気付かないまま、バスに乗って、真佑君のお母さんに迎えられた。
初めて乗る幼稚園バスは、興奮だったな~!
僕の隣には、あの可愛い
少しだけ話したんだ、真佑君としてだけどね。
菜音ちゃんには、バレなかったよ。
でも、菜音ちゃんが先に降りるまで、ドキドキだった!
いいな~、真佑君!
行きも帰りも幼稚園バスで、菜音ちゃんと一緒なんて!
幼稚園バスの中は賑やかで楽しいし。
途中でバスから降りて行く子と、迎えに来てくれているお母さんとお友達の様子を見ているのも楽しい。
幼稚園バスに乗っている子達って、こんな風に毎日通っていたんだ。
僕なんて、いつも、お母様だけで、運転に集中して話すと怖いし、つまんなかった。
僕も幼稚園バスに乗って通いたいな~。
これからも、真佑君と交代して、こうして通わせてもらえないかな?
真佑君が、もしも、僕の家をわりと気に入ってくれたら、そういう事も出来るかも!
でも、僕の家族を気に入ってくれるかな、真佑君。
その可能性はあまり無いかも......
真佑君のお母さんと違って、僕のお母さん、厳しいし、幼稚園から戻ったら、すぐ、お勉強させられるから。
お勉強......
そうだ、僕は、今日は真佑君ごっこしてるから、お勉強しなくていいんだ!
やった~!
「真佑、ゲームやろ~!」
先に戻っていた、小学生のお姉さんのような女の子が声かけて来た。
「
台所から、お母さんの声。
「宿題、今日無いからいいの!」
芙弓という名前のお姉さんが、自分と同じのを僕にくれた。
これが、ゲーム機......
どうやってやるんだろう?
真佑君と違って、僕はゲーム出来ないから、このお姉さんにバレてしまいそう。
どうしたらいい?
「ピンポーン」
誰か来た。
「あっ、
僕から、ゲーム機を取った、お姉さん。
「お邪魔します!あっ、真佑君、こんにちは!」
満智ちゃんと呼ばれた女の子が入って来た。
「こんにちは!」
真佑君は、挨拶する時、頭をあまり下げずに、笑って相手をよく見るんだ。
僕がそれをすると、お友達にバレる可能性有るかな?
でも、真佑君のお姉さんにもバレてないくらいだから大丈夫そう。
お友達が、僕をチラッと見てから、すぐ、お姉さんとゲームし出した。
助かった~!
お友達も僕を真佑君と思ってくれてるし、ゲームもしなくて済んだ!
真佑君は、こういう時、どうしているんだろう?
取り敢えず、今度、お姉さんとゲームする機会が有ったら困るから、どうやって遊ぶものなのか、今のうちに観察しておこう。
「真佑君、今日は静かだね?いつもなら、やりたがってウザイのに」
そうか、真佑君はそういう態度を取るんだ。
そういうの、上手く真似出来るかな?
下手に真佑君と違う言い方するとバレそうだし......
「やっぱり、満智ちゃんも思った?なんか、真佑、いつもと違うよね」
真佑君のお母さんは気付かなかったけど、お姉さんとお友達には気付かれた?
その時、真佑君のお母さんが僕達に近付いて来た。
「おかしいと思っていたのは、私だけじゃなかったのね!ちょっと失礼!」
いきなり、僕の帽子が取られた!
「あっ!」
「えーと、確か、向田さんの......吉祥君ね!真佑はどこ?」
バレてしまった......
「真佑君は僕に間違われて、僕の家です」
「どうして、入れ替わったの?」
ゲームを中断して、お姉さんが尋ねて来た。
「真佑君が楽しそうだから、制服交換しておいて、真佑君の家に行ってみたかったんです、ごめんなさい」
「そんな事しなくても、いつでも遊びに来ていいのよ」
真佑君のお母さんが僕の頭を撫でてくれた。
「さてと、向田さんも心配してそうだから、吉祥君、行こうか?」
「吉祥君、今度ゲーム一緒にしよーね!」
お姉さんが、手を振って来た。
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