第124話 サンドラの綜制
昼食をとり終えるとサンドラが俺の手を引いて立ち上がった。
「お? どうした」
「アイスのお蔭で光明が見えた。綜制するからついてきて」
「手伝えってことか?」
「そう」
綜制で他人の助力がどうつながるのかは分からなかったが、走って心拍数を上げることでアナハタ・チャクラを構築した経緯もある。恐らく、必要なことなのだろう。
そう思い連れてかれた先は、何故かサンドラの部屋だった。
「じゃあやる」
そして堂々と宣言するサンドラだ。何故自室で、と思わないでもないが、自室の方が集中を高められることもあるのだろう。
そしてサンドラは寝転がった。俺はそれを眺める。
「……? ウェイド、何してるの?」
「え? 何が」
「無防備な据え膳があるのだから食べておくべき」
「ちょっと待て流れがいきなり行方不明になったぞ!?」
綜制の手伝いできたつもりだったんだが! え、何? 誘惑されてたってこと?
いきなりのサンドラの言葉に、俺は動揺しきりだ。するとサンドラが起き上がる。
「ごめん、流石に気が急いてた。一から説明する」
「頼む……! 今超びっくりした」
こほん、とサンドラは咳払いをし、ベッドの上で正座しながら説明を始めた。
「まず、あたしが抱えている問題は、綜制の集中力ではなく、チャクラの場所とありか」
「そうだな。そう言ってた」
「あたしが構築すべきチャクラの場所は、丹田。つまり下腹部にある」
「ああ」
「そして臓器的にはここには子宮がある」
おっと?
「つまり子宮がキュンキュンすることが起きればチャクラのありかを掴んで、綜制をクリアでき」「いやいや待て待て待て待て」
俺はサンドラの論法にストップを掛ける。
「待つ。何?」
「……その方法は、何と言うか、もっと自分を大事にしないか?」
「? してる。あたしは冒険者。嫌なことは決してしない」
「いや、だから」
「自分を大切にしないなら、ウェイド以外の誰かに頼む」
ぴしゃりと言われ、俺は硬直する。
「自分を大切にするから、ウェイドに頼んだ。正直この方法は割と初期から思いついてた。実行に移さなかったのはウェイドがへばってたのとアイスに悪いかなって思ってたから」
でも今日は違う。サンドラは言う。
「ウェイドは今日余裕あるし、アイスからも許可が下りた。ウェイドはあたしもハーレムに加えてくれるって言ってた。何も躊躇う理由はない」
「……」
あまりに堂々とした物言いで、俺は圧倒されてしまっていた。論理的にはその通りだし、そこまでの覚悟を示されて、男の俺がうだうだと言えるわけがない。
俺は深呼吸をして、サンドラに近寄る。ベッドに乗り上げ、ギシと音がする。
「……いいんだな?」
サンドラの肩に触れる。ビクッ、とサンドラの肩が跳ねる。
サンドラは答えた。
「……や、やっぱり、ダメ」
「……」
ダメなんかーい。
「ああまで言っといて?」
「だ、だって、こんなに緊張するとは思ってなかった。大好きなウェイドと気持ちいいことするだけだと思ってた」
答えるサンドラは、無表情が完全に崩れてあわあわと慌てていた。瞳は潤み、全身が震えている。
「あっ、だ、大好きとか言っちゃった。いや、本当のこと、だけど。言うつもりなかった。恥ずかしいし。あぅ。ダメ。思ったこと全部口に出てる」
「……ぷっ、はは。サンドラ、可愛いな」
「や、やだ。そういう照れる事言わない。ダメ。緊張でどうかしてる。こんなのあたしじゃない」
顔を真っ赤に、サンドラはギュッと目を瞑って首を横に振った。こんなに動揺しているサンドラは初めてだ。
「じゃあ、どうする? 俺もサンドラのことは好きだし、綺麗だと思ってる。けど、そんな状態のサンドラをどうこう、なんてことは正直したいとは思わない」
「……不覚」
残念そうに俯くサンドラだ。それから、また無表情と平静を取り戻して、下腹部に触れる。……子宮って聞いてからその連想しかできなくなっちゃったじゃんかチクショウ。
それから、サンドラは口を押えてずっと考えていた。無表情ながら、いまだは顔は赤い。
そして彼女は言った。
「手、貸して」
「はい」
俺は右手をサンドラに差し出す。サンドラは俺の手に触れ、じっと見下ろしている。
「あたしのより、大きい。それに、ゴツゴツしてる」
「まぁ、男だからな」
「……」
サンドラはしばらく俺の手を緊張の面持ちで見つめていたが、ゆっくりと自らの下腹部へと運んだ。服をめくり、素肌を晒す。そっと触れさせられる。
「っ。……!」
サンドラは沈黙したまま僅かに身を固くする。一方、俺の手には柔らかさが伝わってくる。
サンドラの身体は、流石冒険者なだけあって、脂肪らしい脂肪はほとんどなかった。けれど、それでも感じられる女性特有の柔らかさが、俺の手に伝わってくる。
俺は手に力を全く入れず、されるがままでサンドラを見つめていた。サンドラは呼吸激しく、緊張に顔を真っ赤にして俺を見つめ返す。
「……ウェイド……」
物欲しそうな顔だと思った。だが、緊張と恥じらいで、思うようにできない顔だとも思った。据え膳食わねば。俺は、サンドラに掴まれていない左手でそっとサンドラの背中を寄せる。
そして俺たちは、口づけを交わした。サンドラはビクッと全身を固くする。可愛いな。そう思いながら、俺はついばむような軽いキスを何度も繰り返した。
「ん、んふ、っん……」
段々と、サンドラの身体からこわばりが抜けていく。そのまま体重を俺に預けてくる。逆に、サンドラの下腹部に置かれた俺の手はグイグイとサンドラの両手で押し付けられる。
俺は僅かに下腹部の右手にも力を入れて、揉み込むようにしながらキスを深くした。サンドラの唇に舌で触れる。サンドラは目を潤ませ、泣きそうなほど弱々しい表情で口を開いた。
舌で割って入る。サンドラが恐々と、俺の舌を自らの舌で出迎える。最初は、舌先で触れ合うだけ。それだけで、サンドラは「ふあ……」と悶えるような声を上げた。
サンドラはそうしながら、目を閉じた。そして、一心不乱に俺を求め始める。
舌を絡め合い、俺の手を強く下腹部に押し当てる。熱い吐息が漏れ出る。まるで溶け合うように、サンドラは不器用に俺を欲しがった。
休憩の一時間が終わっても、サンドラが止める様子はなかった。一方で、ムティーが怒鳴り込んでくることも。俺はマズいとは思わなくて、ただサンドラの欲しがるように身を任せていた。
のめり込む。数時間が経つ。
サンドラは、全身から体液をこぼしていた。汗を流し、涙を流し、唾液をこぼした。時折ビクンと震え、「ぁ……」とかすかな吐息をこぼす。そうするたびに、下腹部の筋肉が収縮した。
快感の中に、サンドラの綜制は存在した。
サンドラは深く深くのめり込んでいく。それに俺はとことん付き合った。サンドラは求め、疲弊し、そのまま俺の中に崩れた。
「ハァっ……! は、ぁ……! ん……!」
苦しささえ感じられる喘ぎ声に、俺はサンドラを刺激しないようにただ受け止めた。サンドラの中に、丹田に、子宮に、魔力のわだかまりが出来始める。
それは、俺のように臓器通りの形ではなかった。小さな、人のようなチャクラ。まるで、赤ん坊のような。それに俺は、ああ、女性ならではだな、と思った。
サンドラは、俺の肩に頭を預けながら、僅かに薄目を開けた。汗だくで、それでもやり遂げた顔をしていた。
サンドラは、僅かに口角を上げ、言う。
「処女懐胎、しちゃった……」
「何だろうなぁこの台無し感」
サンドラは何してもサンドラだな。と思いつつ、初めてのキスや新しい面も見られて、関係が深まったような気がしたひと時だった。
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