第4話 霊退治三銃士結成!?

 アスカさんはフィッシュバーガーのポテトセットが入ったトレイを3つ持ってやってくると、俺達が座っているテーブルに置いた。バイトの経験があるので、こういうのは得意なんです、と言って、3人分の注文をわざわざ運んできてくれたのだ。俺達は遠慮したが、彼女の勢いに押された。この光景がフェミニストに見られたら大変だが、今は生きている人間より、懸念すべきことがある。彼女は俺達に事情を説明するために、近所のファーストフードに俺と田中さんを呼びつけたのだ。


 欲を言えば、ウーロン茶を美味しそうに飲む彼女をもっと眺めていたかったが、距離が近すぎてやりづらい。今日のファッションは縦縞模様のニットと、四角い眼鏡を装着しているためか、知的な印象が増している。伊達なのか、除霊用の器具の一種なのか、両方なのか、判然としない。

 そそくさと食事を終え、口を拭き、水色のマスクを付けると、彼女は口を開いた。

「昨日も言いましたが、これはあなた方が想定しているより、相当にやばい状況です」

「平安レベルと言ってましたね」田中さんが言った。取り憑かれて食事が細くなっているので、今、俺が彼のポテトフライを食べている。

「そうです。やばいです」彼女は頷いた。

「名前を出して大丈夫な人でしょうか?」

「それは心配要りません。教科書やネットに載るほど有名な人物ではないです。そうだったら、むしろ、先人達が鎮魂の為にかなり活躍してくださっているので、まだ希望は多かったでしょう」

俺はナプキンで口についた油を拭ってから、マスクをつけ、質問した。

「匿名だけど、霊力がかなり強く、場合によっては東アジア全体の危機になる・・・という認識で間違いないですか?」

「そのとーり!」アホっぽいけど可愛いなあ、と思っている俺は、現実から逃避したいのだろう。

「どうするんですか?」

 アスカさんは田中さんと俺に目線を送り、口角を大きく吊り上げた。

「その計画をこれから伝えます。事前に断っておくと、二人の安全は保証できませんし、体力精神両方の意味で辛い思いをすることになります。でも、うまくいけば、私達は困難を乗り切り、健康生活をこれからも送れるでしょう」

 正直なのはありがたい。どっちみち専門家に任せると決めた以上、別の選択肢など思いつかない。

「やります」

 俺は言った。職場の上司が相手なら必ずこの約束が履行されるとは限らないが、今ならやる。命が懸かっているから。

 田中さんはどうだろうか?彼のほうを向くと、うつむいて、考え込んでいる様子だった。しばらくして顔を上げた。

「私も乗りましょう。体調不良を早く治して、職場に復帰したいですし」

「では、一人はみんなのために。みんなは一人のために」

 アスカさんはグーを差し出した。俺達二人もそれに合わせた。


 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る