第4話 ②


夏、それは恋の季節?



 「う、これ、本当に大丈夫……?」


 わたしは今、生まれて初めてプールに来ていた。

試験も終わり、今は夏休み真っ只中。

 千咲ちゃんに誘われて、日和ちゃんと千咲ちゃんの彼氏、そしてなぜか慈炎と鹿目も一緒にプールに行くことになった、のだけど……

 恐る恐る着た水着は、お腹も肩も手足も丸出しで、どうにも落ちつかない。

千咲ちゃんと日和ちゃんが一緒に選んでくれた水色の水着は、フリルがたくさんついていて、首と背中をリボンで止めるかなり甘いデザインのもので……。


は、恥ずかしい……!!!

人間の女の子はこんな格好で外に出るの??


一応一緒に買った長めのパーカーを上に着てカーテンをひくと、すでに着替え終わった千咲ちゃんと日和ちゃんが待っていた。


「あ、雨留来た!

髪、邪魔にならないように結んだげるよ!

お団子でい?」


「ありがとう!」


美容師志望の日和ちゃんが、ぱぱっと器用にお団子頭にしてくれる。


「よしよし!行こー!」


「楽しみー!!」


水着姿の二人を眩しく思いながら、わたしたちは慈炎たちが待つ外へと向かった。




「あ、千咲こっちこっちー!!」


 先に着替えを済ませ、浮き輪やビーチボールを膨らませてくれていた千咲ちゃんの彼が、わたしたちを見つけて手を振っている。

彼はわたしたちより一つ上の学年で、千咲ちゃんとは塾が一緒らしい。

4月に千咲ちゃんが通い出したとき、彼の方が一目惚れして猛アタックを受け、6月ごろから付き合っている。


「ごめんしゅうちゃん!お待たせ!」


「あれ?慈炎くんと鹿目くんは?」


「あー、場所取り行ってくれた。

もう帰ってくると思うぜ。

てかアイツ何なの?鹿目ってやつ。

体……」


彼氏さんが何か言おうとしたとき、


「お待たせしました」


「いやー、わりーわりー遅くなった。

でも、日陰のイイ場所取れたぜ!」


 鹿目の水着姿にみんなが呆然となる。

涼しい顔には似合わない、しっかり筋肉が付いたがっしりした肩や腕、見事に割れた腹筋。

これを世の人は細マッチョと言うのだろう。


「っっ、なんでそんなマッチョなの?

部活とかしてないよね??」


ビックリしているみんなに、「護身のために鍛えているので」と涼しい顔で鹿目が答える。


 鹿目は元々武に秀でた家系らしく、それだけでなく慈炎を守るために、並々ならぬ努力をしてきた。

その結果なのだろう。

日和ちゃんをチラリと盗み見ると、目がなんだかハートになっている。

千咲ちゃんは千咲ちゃんで、彼の横で浮き輪を持つのを手伝いながら、今までにない可愛い顔で笑っているし……。

恋って、なんだか眩しいな。

そんなことを思いながら、わたしたちは慈炎らが取ってくれた場所へゾロゾロと移動した。

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