第2話 ⑤
「おはよー!
て、えー!!なんで千咲、
わたしも混ぜて!!」
だだだだ、と教室を走ってきた黒のおかっぱ頭の女の子。
たしか名前は、今井
「あ、日和おはよー。
遅いー。もうチャイム鳴るよ」
「だって寝癖が今日すごくて……。
て、それはどうでもよくて、なんでー!?
なんでわたしがいない間に水神さんと仲良くなってるの?」
「ふ、ふ、ふ。
いいでしょ。
話しかけちゃったー」
「えーずるい!!
水神さん!!」
ずいと今井さんがわたしとの距離を詰める。
ふたりの会話のテンポのよさについていけてなかったわたしは、思わずビクっと肩をすくませた。
「は、はい……」
「わたし今井 日和!
わたしとも友達になって!!」
が、と手を握られて、思わずコクコクとうなずく。
すると頬杖をついてやりとりを見ていた千咲が苦笑する。
「日和。
雨留、日和の勢いにビビッてるから」
「あ!え??ごめん!!」
ぱっと手が離れる。
「う、ううん」
「てか、わたしも雨留って呼んでいい??
雨留もわたしのこと日和って呼んで」
「うん。日和ちゃん。
よろしくね」
「っ、尊い……」
噛み締めるように日和ちゃんがぐ、と手を握り締め、目を閉じる。
「あ、気にしなくていいよ。
このこ、綺麗なものに目がないから」
呆れたように日和ちゃんを見ながら千咲ちゃんが言う。
「きれい?」
「あ、やっぱ自覚ないんだ。
雨留、かなり綺麗だから。
肌も白いし、ワンレンのさらさらな髪で大人っぽいし。
みんなが話しかけにくい理由、それもあるかも」
「そう、なんだ……。
考えたこともなかった」
大人っぽいのは100歳近いから、とは言えず、でも見た目を変えることはできるかも……。
「前髪切ったら印象かなり変わりそう……」
ぽつりと日和ちゃんが呟く。
「あ、確かに。
目とかはくるってしてかわいい系だから、ぱっつんとかにしたらかわいいかも」
千咲ちゃんがわたしのおでこのあたりに人差し指を当てる。
「あのね、もし雨留がよかったらなんだけど、わたしに切らせてくれないかな……」
「日和の夢は美容師なんだよ。
わたしも何回か切ってもらったことあるし、実力は保証済み。
雨留がもしやってみたかったらしてもらったら?」
「やってほしい!!」
千咲ちゃんの言葉にかぶせ気味にわたしは言う。
「ほんと?やった!
じゃあ明日、はさみとか持ってくるね!
放課後、ここで切ろ!!」
「ありがとう!日和ちゃん」
そのときキーンコーンカーンと始業のチャイムが鳴る。
でもわたしたちは先生が来るギリギリまで、ずっと話していた。
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