第2話 ②

「あっ!!!」


「わっ!!」


慈炎の大きな声にびっくりして、考え込んでしまっていたわたしは思わず声をあげた。


「な、なに?」


「今日さ、友達にうまいおやつ教えてもらったんだ。

食って帰らねぇ??」


「おやつ??」


「そ、たこ焼きって言うらしいんだけど、雨留は知ってっか?」


「知らない……」


神は特に食べ物を必要としない。

わたしもきれいな空気と水さえあれば生きて行けた。

天界では嗜好品としてお茶や果物やお菓子を食べることはあったが、人間界のように種類は豊富ではなかった。

ここに来て一か月、初めて食べる食べ物はどれも美味しくて、食事はわたしの楽しみのひとつになっていた。

慈炎たちのいた地獄の食事は人間界とよく似ているが、そのたこ焼きという食べ物は地獄にもないらしかった。


「すっごい気になってんだよ。

食いに行こうぜ!」


「うん!」


「夕ご飯まで間があまりありませんから、食べ過ぎないでくださいね」


「はは、鹿目が日に日に母ちゃんみたいになっていく」


「誰のせいで母ちゃんみたいになっていると思ってるんですか」


「はは、オレー」


眉根を寄せた鹿目の視線から逃れるように、慈炎が走り出す。

ふー、とため息をつく鹿目を横目に見ながら、わたしは笑いをこらえられずふふっと笑った。


 鹿目はみんなの毎日のご飯だけでなく、お弁当も作ってくれている。

しかも、毎日すごくおいしいのだ。

その他にも、掃除に洗濯にアイロン。

なんでもそつなくこなしていて、本当にお母さんみたいだ。

一度なんでこんなに上手なのか聞いたことがあるのだが、『仕事ですから』と淡々と言われた。


「早く来いよ!!」


坂の下から慈炎が手を振る。

慈炎を追いかけて、わたしたちは夕日に向かって歩いた。



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