第2話

『…もう…ま、姫さまはお強いから放っておいても問題ないかな』

青服女は酒場の外で待つ事にする


酒場内では漢の駐屯兵が酒をツケで飲ませろと店主に詰め寄ってる

『ご勘弁願います。私どもの飯の種で…』

『だから後で払うって言ってるだろ❗さっさと酒を持ってこい‼️』

兵らは卓を叩いて威嚇する

姫さまは店内に入るなり窘めようとしようとすると、その前に別の卓で呑んでいた大柄の年の頃なら二十代半ばぐらいの男が兵らに言う

『あなた達のような人たちがいるから東の国の奴らは横柄だと評判立つのですよ。さっさと出ていくがいい』

男は道服を着て柄に竜の紋様を彫ってある大剣を背負ってる

『やかましい❗️道士はすっこんでワケわからん薬でも作ってりゃいいんだよ‼️』

兵らは一斉に殴りかかろうとするのを道士は体格に似合わない素早い動きで避けると、次々に右手の指で兵らの身体の箇所を突いていく。衝かれた兵士らは全く身動きできず硬直する

『へえー、見事な点穴技だね、お兄さん』

奥で食事を取っていた胡人の少年が感心したかのように囃し立てる

年齢は15,6といったところか。見事な紅色の髪で愛くるしい顔立ちをしている

『君は異国の子供なのに東国の武芸が分かるのか』

『ボクは張掖の月氏の出だから漢人の事は多少は知ってるよ。それに師父は東国人だしね』

ニッと笑う笑顔は人懐っこさがにじみ出ている

『師父とは、どなたで?』

『師父には名前を明かしてはいけないと約束でね。もっともお兄さんみたいな武術系じゃなくて、法術の方だから聞いても知らないかもね』

2人がそんなやり取りしてると姫さまが口を挟む

『私はこの国の王女です。先ほどは狼藉者を取り押さえて頂きありがとうございます』

と礼を述べた

『いえ、礼には及びません。それでは私は用がありますので』

道士は店を出ていった。しばらくして青服の女が入ってくる

『あれ、師…』

月氏の少年が言いかけて青服女は眼で制す

『ウィスタリア姫、そろそろお城に戻らないとまずいのでは』

『もうそんな時間なの。自分の領内なのに自由に出歩けないって不便よねえ』

『貴女は国王の正妃の子、庶子である御兄上とは自ずと違ってきます』

『いつから私の付き人みたいな事を言うの青娥さん。学友だったらもう少し私に味方してくれても宜しくて?』

ウィスタリア王女は溢す

『付き人みたいな事って私の役目は付き人そのものですが』

『それは名目だけで私は親友だと思ってますのに』

『公私のケジメですわ姫さま』

すました口調で青娥が答える


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