楼蘭王女の憂うつ

@kuro100bot

第1話

砂漠の中に突如現れた大湖

塩沢と呼ばれる広大だが水深は浅い湖である

その傍らにあるオアシス都市が楼蘭である

紀元前もあと20年ばかりで終わろうとしている今の時期は漢の勢力下にあり、城内には漢の屯田兵らが駐屯している

交易路は乾燥化が進みつつあるとはいえ、この時代はまだ町までは及んでなく天山山脈の南麓を通るコースと崑崙山脈の北を横断する通商路の合流する商業都市として繁栄している

住民はこの時代はインドヨーロッパ語族でタクラマカン周辺住民の大半はトカラ人だが、語学的にインドペルシアよりもヨーロッパ系に近いそうである

町の中では大通りで東で絹を仕入れた胡人の商人らが西に向かう準備したり、西で売りさばいて嗜好品を買って東で高額に売ろうと思惑する商人らで賑やかなものである

『で、その関税で優雅な生活されてるという訳ね、姫さま』

全身青い民族衣裳の長身の細身の女が傍らの娘に言う。西域辺りでは見かけない服で漢族の衣裳でもない。顔は何故か面らしき物を装着して素顔は不明。声は鳥のさえずりに似て心地よい響きからすると相当若いようだ。彼女は流暢に楼蘭語で話す

『人聞きの悪い事を仰られないでね。西域三十六国はそれぞれ交易路を整備しているからこそ、商売が成り立っているのです』

こちらは金髪で輝くような蒼い瞳で中肉中背の美少女。漢の絹をまとってる所を見ると本当に姫らしい。腰には西洋風の剣をつけている

『ふぅん、よく分かってらっしゃること。見直したわ』

『だから商人たちはそのお礼といくらかの硬貨を置いていくのですよ』

(…せっかく感心したのにコレだから…自発的に関税置いていくお人好しばかりと思っているのかしら…)

青服の女は仮面の下で薄ら笑い

と、前方の酒場で怒鳴り声が聞こえてくる

『酔っぱらいかしら?』

『この町の富で車師から極上の葡萄酒購入してくるから、ああいう羽目外す痴れ者も出てくるのね、イヤな事この上ない』

『誰であれ町の治安を乱す者は許しません』

『アレな癖に変に堅物なのよね姫さまは。飲み屋の酔客なんか放っておきなさいよ…』

青服女が言い終わらないうちに姫さまは現場に走っている

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