⑥ 持続可能な対応


 されども、この国の起源ルーツであり、なおかつ古来の重要局面で女系による継承が行われていたからといって、現在にそれをそのまま無条件で適応してよいかと言えばそうでもない。中国 前漢の次に興った"新"王朝は 理想の政治を求め、いにしえの政治に回帰した結果 短命に終わっているし、英王室の血統が15世紀と現在とでは DNA的につながっていなかったとしても、その齟齬そごを真剣に解消しようとすれば大混乱を生じかねない。実際、大逆事件の時に法廷で幸徳秋水が「今の天皇は北朝の子孫じゃないか?」とのたぐいの発言をしたことが外部に漏れたことで、国会で南北朝正閏論が議論される事態にまで発展している。南北朝時代まで回帰するといった規模スケールの話ではないが、旧 皇室典範では 失踪についての取り決めがあり 失踪中に決定した身分的なことはという混乱を避ける規定も存在していた。

 学問的には 整合性を求めることや誤差を修正し 完璧に近づけることは大いに奨励されることだが、政治的には必ずしも完璧を求めることは良いこととは限らない。時に その行為は罪人を増やし、世の中を暗くする要因ともなった。

 そもそも、自分が間違っている可能性を肯定する姿勢こそが大切な研究や学問などと、状況に応じて 自分の回答を正解としていく政治や統治などとではおのずと相容れない部分があった。後者は相手があることであるから 騙し合いもあれば 綺麗事ですまない部分もある。つけ込まれないようにするために 突っぱねることもあれば、混乱を避けるために起点を設けて そこから遡及しない取り決めも定められていた。そこに、政治の行き過ぎを防ぐ意味で司法の審査チェックが入ったり、対外関係への配慮などが加わるわけだが、つまるところ、政治とは だった。そして 目下のところ、女系天皇を認めることには 保守強硬派の強い反対が予想され、安定を損なう恐れがある。安定統治のための機関で 混乱を招致することは 正直 望ましいことではなかった。

 ただ、とは言っても、皇族数の減少は業務の負担拡大に直結することでもあり、喫緊の課題ではある。昨今、"SDGs"という言葉がよく聞かれるが、皇室においても先細りする前に、持続可能な対応が求められた。

 この課題に応えるために、女性皇族に皇室に残っていただくという案が出されているわけだが、2021年に結婚された小室眞子さんのように、その決定が出される前に、若い皇族女性が次々と皇室離脱されることが懸念される。皇室の方の内心には立ち入ることはできないが、その負担は 私たち平民には計り知れないものがあることが予想された。

 こぼれ話だが、第二次世界大戦前の1936年 英国王 エドワード8世が在位期間1年足らずで退位した。その逸話は "王冠を賭けた恋"として知られているが、それによって弟であるアルバートが国王として即位(ジョージ6世)。望んでもいない,押し付けられた国王の座に就いたジョージ6世は愚痴をこぼしたと言う。

 なお、小室眞子さんの婚約者の方についてであるが、彼に限らず 古くから外戚問題は論じられていた。要は、障りのないくらいまで権限等に制限をかければ良い話だ。他者との会話を録音するなどの行為に対し、個人的な好悪の情はあるだろうが、必要以上に非難バッシングするのはいかがなものかと私などは愚慮する。


ウィンザー朝(現英王室)

ヴィクトリア

 ‖—エドワード7世—ジョージ5世①—

アルバート

  ——エドワード8世②

   ∟ジョージ6世③—エリザベス2世④

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