第214話 騒動顛末(そうどうてんまつ)
「さてと、それではこの方々は
パウロ大司教は、両断されて虫の息だったクオンたち数名を治癒魔術で癒すと、アグニスの街から連れてきたふたりの腹心に引き渡す。
「聖者様に教わってね。最近、私も詠唱短縮までは出来るようになったんですよ。さすがに、聖女様のみたいに詠唱破棄とまでは行きませんが、なかなかのものでしょ?」
ニコニコとそう話しながら、次々と死にかけの男たちを救っていく。
「こんな男たちでも、お話を聞くまでは
明らかに不本意だと態度で示すパウロ大司教。
敵対した者へ冷徹な処遇を行うその姿は、普段の慈悲溢れる老大司教のイメージとは一致しない。
そんな様子にどこかうすら寒いものを感じたヨルグは、気になったことを尋ねる。
「あ~、何となく予想はつくのだが……念のために聞くんだが……ソイツはどうするおつもりで?」
「わざわざ答える必要がありますか?貴方だって同じことをするでしょう?」
「ハハッ。いやいや、結構だ。もう、何となく分かったよ」
予想が的中したと悟ったヨルグは、乾いた笑いを上げる。
酷薄な笑みを浮かべた老大司教は、襲撃者らとしっかりとお話をするようだ。
ただし、その手法は穏やかなものとは遥かにかけ離れているのだろうが。
「なぁ、アンタのような人物が補助についているってことは、この国の枢機卿が次の教皇の地位に就くって考えてもいいのかい?」
クオンたち数名が教会内へと引きずられて行くのを見届けたヨルグは、この場におけるすべての戦いが終了したと判断する。
そこで、ふと思いついたことを目の前の大司教に尋ねてみた。
かつては、【
そして、そこから導かれるのはたったひとつのこと。
すなわち、現在の大司教の上役にあたる者が次期教皇に最も近いということだ。
「ふふふふ……。そこまで推察された方は貴方が初めてですよ」
「まぁ、アンタの正体を知らなければ、そこまでの考えには至らなかったけどな」
「いやいや、それでもですよ。さすがですねぇ。出来れば敵に回したくはありませんので、仲良くしましょうね」
ようやく好好爺といった雰囲気が戻って来た大司教は、穏やかに話を続ける。
「そうですね……、【財】の枢機卿が現時点では最も成果をあげてますから、いずれはそうなるのではないでしょうか」
「へぇ~、いいことを聞かせてもらった」
次の教皇の情報ともなれば、金には代えられないほどの価値がある。
ましてや、軍師として身を立てるヨルグにとっては、今後の方針を定める上でもとても貴重な情報であった。
「本来なら、私が【財の枢機卿】の補佐に就くはずではなかったんですけどね」
そう前置きしたパウロ大司教は、こうなった経緯をヨルグに説明することにした。
そこには、いずれ知られることならば、早めに伝えて味方に引き込んでしまおうという彼なりの算段があった。
「最初は、辺境の一司祭がおかしなことをやり始めたということで、それを調べるために私が遣わされたんです」
「おかしなこと?」
「ええ、スラムにある教会で、生卵を使ったマヨネーズを販売し始めたんです」
「ああ、『教会マヨネーズ』……アレの元祖だったのか……」
今や王国のみならず、他国にまで広まった新しい調味料。
浄化した生卵を使ったそれは、これまでにない味わいをもたらした。
あちこちでは類似品が出ているが、最初にマヨネーズを作った南部辺境伯領都フレイムの『教会マヨネーズ』と、ついに王都で最大の商会になった【餐のフォティア】の『フォティアマヨネーズ』が有名で人気もある。
食の常識をひっくり返したほどの調味料。
それを真っ先に開発したというならば、なるほど確かにそれは偉業だと納得したヨルグ。
「まぁ、それを開発したのは
「……………………………………はぁ?」
そして、続けられた言葉に理解が及ばなくなったヨルグであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
偉業だの奇跡だのと話題が上ると、必ず関わって来る
まぁ、主人公らしいっちゃらしいんですけどね。
明けましておめでとうございます。
本年も体力と気力と応援が続く限り、書きまくって行きたいと思っています。
よろしくお願いします。
モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。
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