第213話 正体判明(しょうたいはんめい)
「
パウロ大司教が足元に転がる荒くれ者たちを見下ろす瞳は、聖職者とは思えぬほどに冷徹かつ酷薄で、そこに慈愛という気持ちは一欠片も込められていない。
普段の好好爺といった雰囲気はどこに行ったのか、そこにいる老人は歴戦の戦士の雰囲気を醸し出していた。
すると、そこに【
「いやはや、お見事ですな。これほどの者たちを一瞬で……」
「
「さすがにバレバレでしたか」
ヨルグは隠すことすらせずに、アッサリと認める。
「ウチで諜報を担当してる【ジジ】ってのがいるんですがね。アイツがやたらとビビってるんですよ。『足音が聞こえない』ってね」
「ほう」
「一応、オレたちは軍にいたんでね。なかなか怯えることなんてないんですが、貴方だけは底が知れない。何者だと思ったんですが……その大鎌を見て合点がいきましたよ」
笑みを浮かべたままのヨルグを見つめるパウロ大司教は、無言でその言葉の先を促す。
「【聖教国】の誇る精鋭【
「…………」
「確か……【
ヨルグがそこまで話すと、パウロ大司教はひとつタメ息をつく。
「『神』を冠するなど、畏れ多いことなのですがね……」
「おやおや、素直に認めなさるのか?」
「まぁ、私の方もこの辺りで素性を明らかにしておいた方が、貴方たちとは良好な関係を築けるかと思ってましたからね」
「ああ、だからこの程度のヤツらを相手にそちらの得物を使われたのか?」
「察しが良い方は嫌いじゃありませんよ。さすがは【東伯の頭脳】と称されたお方です」
「チッ、こっちの素性もバレバレかよ」
「貴方たちも、軍人としての癖が抜けてませんでしたからね。あとはちょっと周りの方々に聞けば……」
人と烏の『タヌキ』が、顔を見合わせて笑い合う。
相手は自分と同類であり、少なくとも敵ではないということを確信したふたりは、ずっと持ち続けていた警戒心を解消させる。
「まぁ、私としては、
そうパウロ大司教が伝えれば、ヨルグは少々面白くない顔をしながら反論する。
「獣人たちの義理堅さを侮らないでもらいたいな。我々獣人は、ひとたび恩を受ければ、それを生涯にわたって返そうとするお人好しどもの集まりだぞ」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
パウロ大司教の正体回でした。
次回、そのあたりを多少膨らませてこの章は終わりの予定です。
そろそろ、主人公を出さないと忘れられそうなので……。
これで、本作については今年最後の更新となります。
次の更新は正月です。
今年は本作の更新再開があり、思い出深い年となりました。
なかなか大変ではありましたが、やりたいことをやれたので良かったかと。
今後の展開としては、東部辺境伯との絡みやカイウス商会との因縁。
あとは、仮面騎士に新入りが加わることを考えています。
四字熟語のストックが切れない限りは続けて行きますので、今後も応援をお願いします。
それでは、皆さまも良いお年をお迎えください。
モチベーションにつながりますので、★あるいはレビューでの評価していただけると幸いです。
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